「トマス・アクィナス」の思想とは?『神学大全』など著書も紹介

「トマス・アクィナス」は神学とアリストテレス哲学を統合してまとめた『神学大全』で知られています。アウグスティヌスと並んでキリスト教の思想・哲学の基礎を築いたトマス・アクィナスの思想や著書について紹介します。

「トマス・アクィナス」の思想とは?

まずはじめにトマス・アクィナスとその思想について紹介します。

トマス・アクィナスは中世最大の「キリスト教神学者」

トマス・アクィナス(1225年頃~1274年)は、中世イタリアに生まれた、西欧中世における最大のキリスト教神学者です。修道院で教育を受け、パリの修道院と大学で神学を教えました。1256年に神学者としての最高学位を受け、大学で教えながら多くの著書や論文を書き上げました。

トマスは、主著『神学大全』を完成させると、二度と筆をとりませんでした。ミサを捧げていた時に何か神秘的なことが起こり、「たいへんなものを見てしまった。私は自分の仕事をおえて、ただ終わりの日を待つばかりだ」と友人に語りましたが、何が起こったのかは不明です。

トマス・アクィナスは「スコラ哲学」の代表者

トマス・アクィナスは主著『神学大全』において、スコラ哲学を大成しました。スコラ哲学とは、中世の学校(schola:スコラ)で形成され実践された学問のスタイルのことで、さまざまな著者のテキストを参照しながらその理論の矛盾や論点を抜き出し、組み合わせながら独自の見解を考察します。

12世紀から13世紀にかけての西欧では、神学の研究が大学を中心に隆盛をきわめました。アリストテレスをはじめとする哲学者や権威ある教父たちの著作の注解が書かれ、討論会が行われました。それとともに膨大な神学哲学の著作が著され、スコラ学は無益な煩雑化ももたらしたことから、トマスはそれらの問題を整理し、神学全体を簡潔にまとめあげた『神学大全』を著したのです。

「哲学は神学の婢(はしため)」であるとした

スコラ哲学の用語として知られる「哲学は神学のはしため」という言葉は、『神学大全』において「聖なる教は他の諸学よりも高位のものであるか」の問いに対して述べられた考察に由来します。神学は理性を超越することがらを対象とするのに対し、他の諸学はただ理性に服することがらを考察するにすぎないとして、哲学は神学に奉仕するものであるという意味の言葉が書かれています。

「哲学は神学のはしため」という言葉は、中世においては、学問の高位に哲学よりも神学が置かれていたことを示しています。

アリストテレス哲学とアウグスティヌス神学を統一した

トマスはアウグスティヌスの思想を土台としたキリスト教思想と、アリストテレスの哲学を統合して統一的な体系を打ち立てました。

中世のキリスト教世界では、キリスト教が生まれる以前のアリストテレスの哲学と神学との矛盾が指摘され、整合性を図るための議論が行われていました。

トマスは独自の解釈によって、アリストテレス哲学と神学を一体化しました。その独自な解釈とは、例えば世界の永遠性という問題については、人間の理性では証明できない問題であるとして、信仰と理性とを分けて考えたのです。

つまり、アリストテレスの、生成消滅する世界の全体は永遠に存在するとする自然学の説に対して、キリスト教は世界には創造の時の始めがあるとして矛盾が生じていたのですが、トマスは、神が世界を永遠から創造したのか、あるいは時の始めを持つ形で創造したのかは神の意思であり、人間の理性では断定も証明もできないとして、世界に始めが在るということは理性を超える信仰の領域であるとしたのです。

著書『神学大全』とは?

次にトマスの主著である『神学大全』について紹介します。

「神学大全」とは「神学の集大成」のこと

『神学大全』はトマス・アクィナスの主著ですが、他の著者による『神学大全』も存在します。12世紀から13世紀にはゴシック建築による大伽藍の聖堂が西欧各地に立てられましたが、キリスト教において蓄積されてきた膨大な知識もまた、「集大成」を表す意味の「大全」として体系的に著わされました。

中でもトマスの『神学大全』はその頂点とされています。トマスは大全について、「神学全般の領域にわたる重要なことがらについての、簡潔明快なる、論証的知識の体系」としています。

「神論」「人間論」「キリスト論」からなる三部構成

『神学大全』は「神論」「人間論」「キリスト論」からなる三部構成となっています。「神論」では、万物の根源である神について論じ、「人間論」では、人間が神に向かう行為にかかる倫理的な問題を扱い、「キリスト論」では、人間を神にまで導くキリストについての考察が行われています。

聖書やアウグスティヌスからの引用を駆使した

記述の形式としては、まず問いが立てられ、異論を提起し、その次に反対のテーゼを示し、聖書やアウグスティヌスを主とする教父の著書やアリストテレスの著書からの引用を駆使しながら、自らの思索を立体的に考察・論証しています。

他にも膨大な著作を残した

『神学大全』の邦訳は全45巻に及ぶほど長大なものですが、トマスはその他にも討論集や注解書などを多数執筆しました。トマスは49歳で没していますが、その短い生涯からすると神秘的とも思える、驚異的な執筆量でした。

まとめ・おすすめの入門書紹介

トマス・アクィナスは著書『神学大全』において、アウグスティヌスを土台とする神学の思想を体系的にまとめ、そこに新しいアリストテレスの解釈を行い、信仰と哲学を統一しました。

西欧の哲学を理解するとき、キリスト教の教義の理解も不可欠ですが、『神学大全』そのものを理解することは困難であるといえます。トマス・アクィナスやアウグスティヌスの思想への理解を進めるためには、まず入門書として以下のような新書が参考になります。

■参考記事

「アウグスティヌス」の生涯と思想とは?著書『告白』や名言も

「アリストテレス」の名言や著書を紹介!思想や形而上学も解説