「人海戦術」の意味とは?語源や対義語とビジネスでの使い方も

「人海戦術」はビジネスシーンでしばしば耳にする言葉で、特に数をこなす必要がある営業においてはよく用いられます。しかし具体的にどのような手法が取られているのかについては、はっきりしません。この記事では、「人海戦術」の意味と語源や対義語に加え、ビジネスシーンでの使い方についても例を挙げて解説しています。

「人海戦術」とは?

「人海戦術」の意味は”人員数で勝負すること”

「人海戦術」の意味は、“人員数で勝負すること”です。「じんかいせんじゅつ」と読み、数多くの人員を投入して仕事や任務を完了させるという仕事のやり方を指した四字熟語です。

たくさんの人が集まっている様子を遠目に見るとまるで海のようであることから、「人海」という言葉があてられています。とにかく相手を数で圧倒しさえすれば勝てるという考え方で、「人海作戦」と呼ばれることもあります。

「人海戦術」は仕事算で組み立てられる

「人海戦術」で投入される人員は能力が不足していても問題はなく、要は頭数が多くなればよいのです。たとえば相手側の戦力が100で、こちらの戦力を200にできれば圧勝できると計算した場合、人員の能力が相手側の半分であっても400人調達すれば対応できます。

ピラニアの大群が水牛に勝てる理由も「人海戦術」にあり、少数のピラニアが水牛に挑んだなら、蹴散らされて終わりとなるでしょう。

「人海戦術」には人力頼みの勝負という意味も

「人海戦術」は機械を用いずにたくさんの人員を投入し、人力で事に当たることを指す場合もあります。大規模な事故現場や、自然災害の被災地などにおける救助や復旧作業においてよく見聞きする言葉です。

二次災害が懸念されるなど、重機や動力を使用できない状況下においては人の手作業に頼るしかなく、現場の方々の大変なご苦労が伺えます。

「人海戦術」の語源と対義語とは?

「人海戦術」の語源は戦略のひとつ

「戦術」という言葉が使われていることからも分かるように、「人海戦術」は元々戦争における作戦のひとつでした。

敵を上回る多数の兵士を投入することで勝利をもぎ取る戦略で、訓練や経験が足りない人員であっても、相手を数で圧倒すれば勝てるという考え方です。この戦術は古くから採用されており、大群を率いて出陣すると相手は戦うことなく白旗を揚げることも珍しくありませんでした。

紀元前480年に起きたテルモピュライの戦いにおいては、勇猛果敢な300のスパルタ兵が100万のペルシア軍の迎撃で善戦しましたが、結局は敗れ去っています。

「人海戦術」の対義語は”少数精鋭”

数を頼みとする「人海戦術」の対義語として、「少数精鋭」が挙げられます。「少数精鋭」は鍛え抜かれた少数の人員をよりすぐるというやり方で、質より量を重んじる「人海戦術」とは反対の意味を持っています。

さらに「人海戦術」の対局にある言葉としては、「一騎当千」や「万夫不当」があります。「一騎当千」はひとりの騎馬武者が千人分に該当するほどの強さを持っていることや、並の人が束になってもかなわないほどの能力があることを指す言葉です。

「万夫不当」は「ばんぷふとう」と読みますが、読み下すと「万夫当たらず」となる四字熟語で、大勢が立ち向かっても到底かなわないほどの豪傑のことを指しています。

「人海戦術」のビジネスシーンでの使い方とは?

「人海戦術」は苦肉の策

「人海戦術」がビジネスシーンで用いられる場面の多くは、膨大な仕事量をあまり訓練されていないスタッフで対応せざるを得ないときや、営業のような歩留まりの悪い仕事を行うときです。

「人海戦術」ではスタッフを大勢雇う必要があるため、経費がかさむというデメリットがあります。そのため、非正規で採用を行ったり報酬を成果主義にしたりといった手法で経費を抑えています。

ベンチャー企業では「少数精鋭」主義を採っているケースが多くみられますが、経営基盤がまだ弱いため経費がかさむ「人海戦術」を行いないという事情もあるのです。

ビジネスシーンにおける「人海戦術」を使った例文

具体的には以下のようなケースとなります。

  • 殺到するクレームでカスタマーセンターが対応しきれなくなったが、「人海戦術」でなんとか乗り切った。
  • 契約数が伸び悩んでいるため、「人海戦術」で人員を投入して一軒一軒営業を掛けて回ることになった。
  • 「人海戦術」のためアルバイトを雇ったが事前研修が間に合わず、お客様からお叱りを多数受けてしまった。
  • 弱小企業である我が社では、経費かかさむ「人海戦術」を採用することはできない。
  • 「人海戦術」は安易な手法だとそしられがちだが、大勢のスタッフが実地経験を積むよい機会にもなる。

まとめ

「人海戦術」の意味や語源と対義語のほか、ビジネスシーンでの使い方を紹介しました。生産性の向上には時間が掛かりますが、「人海戦術」は人件費さえ投入できれば今すぐ実施できます。

なお仕事算の計算上では、人員数を固定したままサービス残業を行うことで同じ結果が得られます。しかし、残業規制や移民受け入れなどのように社会情勢は急激に変化しており、今後の展開を見通すことはなかなか難しいものといえます。