「紅一点」の意味とは?由来と使い方や類義語・反対語も紹介

男性のなかにひとりだけいる女性のことを、「紅一点」といいます。しかし、「紅一点」は本来女性のことを指す言葉ではありません。また「黒一点」という言葉もときおり見聞きしますが、この表現は正しいのでしょうか。この記事では、「紅一点」の本来の意味を含めて、由来や使い方と類義語・反対語なども紹介しています。

「紅一点」の意味や読み方とは?

「紅一点」の意味は”異彩を放つひとつのもの”

「紅一点」の意味は、“異彩を放つひとつのもの”です。男性ばかりのなかにたった一人女性がいるようなときに使われます。そして他の用法を見かけることはほとんどないため、「紅一点」は女性のことを指す言葉のように受け取られがちです。

しかし、本来「紅一点」の「紅」は女性のことではなく、異彩を放ちひときわ目を引く存在のことを指しています。とはいえ、「紅」はやはり女性をイメージさせる文字です。

本来は似たり寄ったりの多数のなかにあって、ひとつだけ際立って目を引くようなものという意味だった「紅一点」が、男性のなかにいるたった一人の女性を指すようになったのは、無理からぬことといえます。

「紅一点」の読み方は”こういってん”

「紅一点」の読み方は、“こういってん”です。

「紅一点」の由来とは?

「紅一点」の由来は中国の詩

中国・北宋の文人である王安石(おうあんせき)が作った「詠柘榴詩(えいせきりゅうし)」という詩があり、このなかにある「万緑叢中紅一点」が「紅一点」の由来です。

「ばんりょくそうちゅうこういってん」と読み、一面の緑の草むらなかにある一輪の紅色の花が詠まれています。

一面に緑の草むらが広がっているなかに、ひときわ目立つ紅色の花が一輪咲いている情景が目に浮かび、この詩から「紅一点」が、たくさんの同じようなものの中にあってただひとつ際立って異彩を放っているもののことを指すようになりました。

麻雀役にもある「紅一点」

麻雀のローカルルールで「紅一点」という役があります。全て緑色の牌で構成される「緑一色」の一部のみを赤い文字の牌で置き換えた役です。

王安石の「詠柘榴詩」が由来となっている役で、詩の中で詠まれている一面の緑のなかに赤い色の鮮やかさが美しく、「紅一点」そのままのビジュアルです。

「紅一点」の使い方とは?

「紅一点」を男性に使うと誤解されることも

「紅一点」をは、本来女性に限って使われる言葉ではありませんでした。しかし由来となった「詠柘榴詩」のなかで「紅一点」が一輪の赤い花のことを指していることもあり、現在は女性限定で使われるケースがほとんどです。

正しい使い方であっても誤解を招くようなら控えたほうが賢明で、男性に対しては用いないほうが無難でしょう。

使い方別の「紅一点」の例文

以下に「紅一点」を使った例文を紹介します。

【目立つものという意味での例文】

  • 姿勢がよくない若者たちの中にあって、武道で鍛えた彼の美しい佇まいは紅一点だ。
  • 冷やかしで訪れたがらくた市でみつけたこの古伊万里は、遠めにも分かる紅一点だった。

【女性に限定しての例文】

  • 男子ばかりのむさくるしい柔道部で紅一点のマネージャーは、一服の清涼剤のようだ。
  • 男ばかりのわが社の紅一点だった受付嬢が、とうとう退職することになった。

「紅一点」の類義語とは?

「紅一点」の類義語は”鶏群の一鶴”

「紅一点」の類語は、“鶏群の一鶴”です。「けいぐんのいっかく」と読み、鶏の群れの中にいる一羽の鶴が際立って目立つことから、凡庸な大勢のなかにひとり優れた人物が混じっていることをたとえた言葉です。

たくさんのもののなかでひとつだけ際立っていることを表しており、本来の意味での「紅一点」の類語といえます。

同じような意味合いを持っている類語として、「掃き溜めに鶴」や「泥中の蓮」が挙げられます。いずれも、むさくるしい場所に似つかわしくない優れたものや美しいものがいることのたとえです。

「紅一点」の対義語とは?

「紅一点」の対義語は”烏合の衆”

たくさんのもののなかでひとつだけ際立っていることを表す「紅一点」の反対語としては、「烏合の衆」があります。カラスが寄り集まったように無秩序でただうるさいだけの人々を指している言葉で、「紅一点」と反対の意味を持っています。

また、似たり寄ったりの集まりという意味で、「どんぐりの背比べ」も「紅一点」の反対語として挙げることができます。

対義語として正しくない「黒一点」

「紅一点」の反対語としてよく見受けられる言葉として、「黒一点」がありますが、正式なものではない俗語です。女性の中にひとりいる男性をたとえた言葉として用いられていますが、そもそも「紅」の反対は「黒」ではなく「白」です。

また由来の「万緑叢中紅一点」から考えると、「紅」と対になる色は「緑」とするべきで、「黒」は男性をイメージする色であるという理由から用いられているにすぎません。

まとめ

「紅一点」の意味をはじめ由来や使い方のほか、類義語・反対語も紹介しました。「紅一点」はもともとの意味から派生した用法が広く定着してしまい、本来の意味合いで使われることが少なくなった言葉です。

言葉はコミュニケーションツールであるため、意味が正確に伝わる言葉を選ぶことが望ましいといえます。したがって現状では、女性に限定して「紅一点」を用いることが自然でしょう。