「火中の栗を拾う」の意味とは?由来や類語も紹介(例文付き)

「火中の栗を拾う」ということわざがありますが、どう見ても危険な行為のように感じられます。危険に見合うだけの価値が栗にあればよいのですが、そうでなければやめたほうがよいのではないでしょうか。この記事では、「火中の栗を拾う」の意味と由来や類語のほか、例文も紹介しています。



「火中の栗を拾う」の意味とは?

「火中の栗を拾う」は他人のために危険を冒すこと

「火中(かちゅう)の栗を拾う」の意味は、他人の利益のために危険な行動をとることです。火中の栗とは火にくべられた栗のことで、おいしそうに焼けています。

けれども火の中にある栗はいつはじけるか分からず、拾おうとすれば大火傷を負うかも知れません。そんな危険を冒してまで栗を拾おうとするのですが、その栗は自分が食べるのではなく、他人が食べるのです。

つまり「火中の栗を拾う」ことで得られた利益や成果は、自分のものにはなりません。したがって、「火中の栗を拾う」ということわざにおいては、他人の利益のためにという点がポイントになります。

危険を承知でチャレンジするという意味も

危険を承知でチャレンジすることや、困難に向かって乗り出していくことを表したいときに、「火中の栗を拾う」を用いることもあります。

たとえば社内のある部署において、関わると無傷ではすまなそうに思える面倒な事件が勃発したようなケースでは、部署内の人間であっても逃げ出したくなるでしょう。そこへ、他部署から解決のために名乗り出るような社員が登場した場合、彼の行為を指して「火中の栗を拾う」と評します。

この用法では、「火中の栗を拾う」にあった「他人の利益のため」という部分が薄くなり、行為の危険性に重点が置かれます。つまり、避けられない自分の責任として仕方なく危険を冒すというより、自ら進んで名乗りを上げるような状態のときが対象となるのです。

「火中の栗を拾う」の由来

「火中の栗を拾う」の由来はフランスの寓話

「火中の栗を拾う」の由来は、フランスの寓話です。ずる賢いサルがネコをそそのかして囲炉裏の中の栗を拾わせまんまと栗をせしめるのですが、ネコは大火傷を負ったうえに栗にありつけなかったというお話です。

17世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌが、『イソップ物語』を基にして作った「猿と猫」(Le singe et le chat)という寓話で、ここから他人の利益のために危険を冒すことを「火中の栗を拾う」というようになりました。

寓話においては、愚かな行動をとる動物を登場させて、教訓や風刺を織り込むという手法が多くとられます。そのため、自己犠牲を称えるのではなく、ネコのような愚かな行為をしてはいけないという意味合いが強く込められています。

中国のことわざにもある「火中の栗を拾う」

「火中の栗を拾う」は、中国のことわざにもあります。中国では「火中取栗(かちゅうしゅりつ)」あるいは「火中之栗」と四字熟語の形になります。

中国においても「火中の栗を拾う」はフランスと同様に、だまされて他人の手先として使われて危険を冒すようなことをするのは愚かなことだという戒めの言葉です。

「自己犠牲」の意味合いは日本的

由来となったフランスの寓話や中国のことわざと、日本で使われている「火中の栗を拾う」では、意味合いが異なっています。

他人のために犠牲を払うというところまでは同じですが、フランスや中国ではそれを愚かな行為と切り捨てています。ところが日本では、バカなことをするなという戒め以上に、自己犠牲を伴う尊い行為だという見方をされることもあるのです。

個人を尊重する考え方が主流のフランスや中国と、集団との関係を考慮する日本との違いがうかがえます。

「火中の栗を拾う」の類語

「火中の栗を拾う」の類語は「虎穴に入る」

他人の利益のために危険を冒すという意味合いでの「火中の栗を拾う」の類語は見当たりませんが、危険を承知でチャレンジするという意味の類語としては、「虎穴に入る(こけつにいる)」が挙げられます。

虎穴とは虎が住んでいる穴のことで、この中に入ることが大変危険であることは、誰にでも分かります。「虎穴に入る」は、その危険を知ったうえで穴に入るということを指しており、「火中の栗を拾う」と似た意味合いを持っていることわざです。

同じ意味を持つことわざに「危ない橋を渡る」があります。危ないと分かっている橋を敢えて渡るということを表している点で、「火中の栗を拾う」の類語と言えます。

「火中の栗を拾う」の例文


日本では「火中の栗を拾う」を、由来となったフランスの寓話とは異なり、自分の損得を省みず他人のために犠牲を払うという意味合いで用いるケースが多くみられます。

そこで「他人のために危険を冒す」という意味と、「危険を承知でチャレンジする」という意味の2パターンの用法での例文を紹介します。

他人のために危険を冒すという意味の例文

  • いくら懇意にしていたとはいえ破綻寸前の会社に追加融資するなど、火中の栗を拾うようなものだ。
  • 何も知らない彼に発破をかけて火中の栗を拾わせる、そんなやり方には賛成できない。

危険を承知でチャレンジするという意味の例文

  • 確かにハイリスクな案件だが、リターンの大きさを考えると火中の栗を拾う価値は大アリだ。
  • ともすれば火中の栗を拾いたがる彼の性格は、ベンチャー企業に向いていると思う。

まとめ

「火中の栗を拾う」の意味と由来や類語のほか、使い方別の例文も紹介しました。ビジネスの現場で「火中の栗を拾う」ことになるケースはよくあります。

失敗を恐れていては成長の機会をのがしてしまいますが、自分自身が立ち直れないほどのダメージを受けたり、会社に多大な損害を与えたりするようなことになってはいけません。

火の勢い・栗の価値・想定される損失を総合的に考慮して、上手に栗を拾っていただければと思います。