「血で血を洗う」の意味や使い方とは?語源と類語表現も(例文付き)

「血で血を洗う」には「洗う」という言葉が使われているにもかかわらず、おどろおどろしい響きがあります。しかし、血を見ることが少なくなった現代においても、よく見聞きされることわざです。この記事では、「血で血を洗う」の意味や語源・類語だけでなく、使い方も例文付きで解説しています。

「血で血を洗う」とは?

「血で血を洗う」の意味は”報復の奨励”

「血で血を洗う」の意味は、“報復の奨励”です。殺されたら殺し返せ、または悪事を仕掛けられたら悪事をやり返せという、まるでマフィアの抗争のような意味のことわざです。

血で血を洗えば血の上塗りとなり、際限なく血みどろの状態が続きます。「血で血を洗う」ことによって問題の解決や修復は期待できず、エスカレートしていく一方です。

日本でも明治になるまで「仇討ち」は美徳とされ、江戸時代には幕府公認でした。特に名誉を傷つけられたようなケースでやられっぱなしですませることは恥とされていたほどですが、恨みの連鎖とならないように一定の秩序が設けられてはいたようです。

「血で血を洗う」は血縁者同士の争いのこと

「血」という言葉は、血液という意味のほかに血縁という意味も持っています。そのため血縁者同士の争いのことをたとえて「血で血を洗う」と表す用法あり、この場合は流血や刃傷沙汰とは必ずしも直結しません。

「血で血を洗う」の具体事例としては、遺産相続や後継者争いなどが挙げられます。これまで親密な間柄だった血縁者同士でサスペンスドラマ張りの熾烈な争いが展開され、裁判や事件にまで発展することもまれではありません。

「血で血を洗う」の語源・由来とは?

「血で血を洗う」の語源・由来は『唐書』に

「血で血を洗う」の語源は、中国の正史の一つで唐代の歴史を記した『唐書(とうじょ)』の「源休伝」に見られます。

おじを殺されたウイグルの王が、敵国の人間である源休に「私がおじを殺された報復としておまえを殺せば、血を以って血を洗うようにますます汚れてしまうだけだ」と語ったそうです。

このウイグル王の言葉のなかに「血を以って血を洗うがごとく」が記されており、これが「血で血を洗う」の語源とされています。

「血で血を洗う」のビジネスでの使い方と例文とは?

「血で血を洗う」はビジネスの世界でも

「血で血を洗う」戦いは、ビジネスの世界でも展開されています。「血で血を洗う」ような競争の激しい既存市場は、血で赤く染まった海という意味でレッドオーシャンと呼ばれ、血みどろの戦いを繰り広げても勝者になることは難しい市場とされているのです。

競争の激しい市場では生き残ることが難しいため、ライバルがいない未開拓市場を切り開いていくことを指向する考え方も広がっています。

「血で血を洗う」を使った例文

「血で血を洗う」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 血で血を洗う戦いを避けるためには、相手の出方に左右されない主体性を持つことが必要だ。
  • 社長が亡くなった後の後継者争いは収拾がつかず、兄弟間で血で血を洗うまでに発展している。
  • 暴力団の血で血を洗う抗争は、皮肉にも暴力団の分裂と弱体化を招いたようだ。
  • デフレ下における値引き合戦は、文字通り血で血を洗うような身を切るレベルになってしまった。

「血で血を洗う」の類語とは?

血縁者同士の争いと言う意味の「骨肉の争い」

「血で血を洗う」の血縁者同士の争いと言う意味における類語は、「骨肉の争い」です。「骨肉」とは骨と肉のことで肉体という意味の言葉ですが、血を分けた親子や兄弟という意味もあります。

つまり「骨肉の争い」とは肉親同士の争いのことを指しており、「血で血を洗う」と同じ意味合いを持つことわざです。また、さらに強烈な言葉が使われている「骨肉相食む」というものもあります。

「相食む」の直接的な意味はお互いを食い合うことで、熾烈な争いのことをたとえた言葉です。血を分けたもの同士が共食いをするという地獄絵図のような様子を指しており、「血で血を洗う」に近い意味を持っています。

「目には目を」は過剰な報復を抑える言葉

「血で血を洗う」の類語として、「目には目を」挙げる場合があります。「目には目を、歯には歯を」ということもある言葉で、ハンムラビ法典と聖書が出典です。

目をつぶされたら相手の目をつぶし、歯を折られたら相手の歯を折るということから、受けた仇と同等の仕返しをするというように解釈されています。

ところが、出典を正確に読めば「目には目で、歯には歯で」となるため、過剰な報復や罪滅ぼしを抑える意味合いがあるのです。したがって「目には目を」は、本来の意味から考えると「血で血を洗う」ことを戒める言葉であるため、類語とするにはふわさしくありません。

しかし、「血で血を洗う」同等の意味を持つ言葉として、しばしば「目には目を」が使われるようになった昨今では、類語とみなすことが自然でしょう。

まとめ

「血で血を洗う」の意味のほか、語源・類語と使い方を例文付きで解説しました。どちらかが倒れるまで終わらない報復合戦は、勝者にとっても損失が大きくなるため、次の戦いで勝ち残ることは難しくなるかもしれません。

負けるわけにはいかない勝負ならなおさら、一度「血で血を洗う」土俵から離れて冷静になる必要があるでしょう。