「鼎の軽重を問う」の意味とは?由来や使い方も解説(例文付き)

「鼎の軽重を問う」ということわざに接する機会は、多くありません。日常生活のなかでは使いにくい言葉であるうえ、「鼎」というものがなんであるかを知らない方が増えているためでしょう。この記事では、「鼎の軽重を問う」の意味をはじめ、由来や使い方を例文付きで解説しています。



「鼎の軽重を問う」とは?

「鼎」は日頃見かけない文字であるため、読み方や意味が分からないという方もいるかもしれません。そこで「鼎の軽重を問う」の意味を解説する前に、まず「鼎」について説明をします。

「鼎」の読み方は「かなえ」

「鼎」は「かなえ」と読み、古代の中国において食物の煮炊きのために用いられていた器でしたが、後に祭祀のためにも使われるようになったものです。

3本の足がついており、初期の頃は土製でしたが殷代中期ころから青銅製のものが登場し、漢代まで使用されていました。

熟語として今も残っている「鼎」

「鼎」そのものを目にする機会はほとんどなくなりましたが、三者による対談を指す「鼎談」や、三者が対立することを表す「鼎立」という熟語のなかで、「鼎」という文字が使われています。

また、大臣の異称として「鼎位」「鼎臣」がありますが、周王朝で始まった官制における3つの官職「三公」が由来です。これらの熟語に「鼎」が用いられている理由は、「鼎」に3本の足がついていることによります。

「鼎」は王位や帝位の象徴

「鼎」は、特に「九鼎(きゅうてい)」を指すこともあります。「九鼎」とは、中国の夏の始祖である禹王(うおう)が中国全土(九州)の青銅を集めさせ鼎を鋳造し王室の宝としたものです。

「鼎を定む」が奠都(てんと)のことを指すようになったことからもいえるように、「九鼎」を含む「鼎」が王位や帝位を象徴する言葉となりました。

「鼎の軽重を問う」の意味は「権力者の実力を疑うこと」

「鼎の軽重を問う」での「鼎」は「九鼎」そのものを指して用いられており、王や帝のような権威や権力のことを意味しています。軽重とは重量や程度のほか、価値の重さの度合いを表す言葉です。

全体を合わせると権力者の実力を値踏みするということになり、権力者の実力を疑ったりその地位を奪っておうとしたりすることも指すようになりました。

「鼎の軽重を問う」の由来

「鼎の軽重を問う」の由来は中国の故事

「鼎の軽重を問う」の由来は『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)・宣公(せんこう)三年』にある故事です。春秋時代、楚の荘王(そうおう)が西方の異民族を討伐したことをねぎらうために、周の高官である王孫満(おうそんまん)が派遣されました。

そのとき、周王室の宝器である鼎の重さを尋ねた荘王に対して王孫満は、「周があるのは徳によってであり、鼎によるものではない。今、周の威光は衰えているが、天命はまだ国を改めてはいないのだから、鼎の軽重を問うべきではない」と答えたのです。

鼎の重さを尋ねることには鼎を持ち去る、つまり周に成り代わろうとする目的があることと、鼎が象徴する周の威光や権勢を疑うことにほかなりません。この故事が、「鼎の軽重を問う」の由来です。

「鼎の軽重を問う」の使い方

「鼎の軽重を問う」対象はもともと権力者

「鼎の軽重を問う」は、もともと王や皇帝の権威や権力に対して使われていたことわざですが、現在では王や皇帝のような特権的階級ではない人が持つ地位や資質に対しても用いられるようになりました。

たとえば会社の役職者だけでなくプロジェクトリーダーなどの資質に疑問を呈したり、地位を脅かそうとしたりするような場合に、「鼎の軽重を問う」が使われます。

権限がない人には使わない

教師が成績のふるわない生徒に対して、あるいは奥さんが減給となった夫に対してただすような場合に、「鼎の軽重を問う」を使うことはできません。

「鼎の軽重を問う」の用法として適しているケースは、経営者や役職者のように地位や権限を有する人に対して、その資質や適性を軽んじたり退陣を求めたりするときです。

「鼎の軽重を問われる」という用法が多い

コミットメントの実行性が問われる昨今、成果がシビアに評価されるようになったためか、責任を追及する側より問われる側に注目が集まります。

その結果、「鼎の軽重を問う」という形より「鼎の軽重が問われる」という形で用いられることが多くみられるようになりました。つまり責任を問われる側が主語となるため、文末は「問う」ではなく受身形の「問われる」となるのです。

「鼎の軽重を問う」の例文

「鼎の軽重を問う」を用いた例文を紹介します。

  • 粉飾決済を指示した経営陣に対して、株主たちからは鼎の軽重を問い退陣を求める声が多くあがった。
  • 赤字支社の閉鎖によるトラブルを鎮火できなければ、本社は鼎の軽重を問われることになるだろう
  • 減収に悩む老舗会社は新興勢力から放漫経営への指摘を受け、鼎の軽重を問われた形になった。

まとめ

「鼎の軽重を問う」の読み方と意味をはじめ、ことわざの由来や使い方と例文を解説しました。時代が進むことで、ことわざに用いられている文字が何を指しているのかを理解できる人が少なくなれば、ことわざそのものが使われる機会も減っていくことは自然な流れでしょう。

しかし、「鼎の軽重を問う」ことが不遜な行為に当たる場合もあることを知っておけば、無用な反発や批判を受けてしまうような失敗を避けるために役立ちます。