「二階から目薬」の意味とは?由来と類語表現も解説(例文付き)

「二階から目薬」ということわざがありますが、目薬を二階からさして届くとは思えません。また、目薬はいつから使われていたのでしょうか。この記事では、「二階から目薬」の意味を分かりやすく解説するため、ことわざの由来や類語表現などを交えながら、例文も紹介しています。

「二階から目薬」の意味とは?

「二階から目薬」の意味は”もどかしいこと”

「二階から目薬」の意味は、“もどかしいこと”です。点眼を行うとき、目薬の容器の先を目に近づけて慎重にさしても、目にうまく薬液が入らないことは少なくありません。目薬をうまくさすことは結構難しいもので、2階から目薬をさしてうまくいく確率はかなり低いでしょう。

結果的になかなか目に薬液が入らず、もどかしい思いをすることになります。このように「二階から目薬」は、ものごとが思うように進まずもどかしく感じる様子を表したことわざです。

「二階から目薬」はそんなやり方だとうまくいかないということ

「二階から目薬」には、回りくどいやり方では良い結果が得られないということも指していることわざです。

素直に目の近くから目薬をさせば簡単に終わるのに、わざわざ遠く離れた二階から目薬をさすようなことをすれば、うまくいかないことは明らかです。

さんざん試した挙げ句に目薬は目に入らずじまいとなり、思うような効果を得ることができません。このように「二階から目薬」は、回りくどいやり方をしていてはうまくいかないということをたとえる言葉としても用いられます。

「二階から目薬」の由来とは?

「二階から目薬」の由来は浮世草子

「二階から目薬」の由来は、『風流御前義経記(ふうりゅうごぜんぎけいき)』という“浮世草子”です。浮世草子とは江戸江戸時代に上方で生まれた文学の一種で、当時の世相や人情が生き生きと描かれています。

『風流御前義経記』は、元禄13年(1700年)に西沢一風が著した作品で、主人公が諸国の遊里を遍歴しながら母と妹を探すというストーリーです。

このなかに、階下から男性に容貌をからかわれた女性が負けじと「あなたは目が悪い、目薬をさしてやろう」と言い返し、それを受けて男性がアカンベーをしたというお話があり、これが「二階から目薬」の由来となっています。

評判の目薬が「二階から目薬」の元に

江戸時代の目薬は軟膏状のものが多く、目の周囲やまぶたの裏に塗りつけて使うことが一般的でした。ところが江戸中期に発売されて大変良く効くと評判になった目薬が、水に浸して液状にして使用するタイプだったのです。

軟膏状の目薬では二階からさすことはまずできませんが、液状のめぐすりなら可能性は低いものの全く無理ともいえません。「二階から目薬」での男女のやりとりは、評判の目薬があってこそ成立したといえます。

「二階から目薬」の類語表現とは?

二階から目薬の類語①「天井から目薬」

「二階から目薬」は、“天井から目薬”ともいうこともあります。二階からに比べると天井からのほうが少しだけ距離が縮まった感はありますが、いずれも目に薬液を届かせることは困難です。

なお、先に解説したように「二階から目薬」には2つの意味があるため、もどかしい思いをするという意味と、やり方が悪いためうまくいかないという意味それぞれについての類語を以下に紹介します。

二階から目薬の類語②「隔靴掻痒」

「隔靴掻痒」は”かっかそうよう”と読む四字熟語で、「靴を隔てて痒きを掻く」ともいう形のことわざとしても用いられています。足がかゆいときに靴の上からいくらかいてもかゆみは治まらず、もどかしい思いをすることから、「二階から目薬」と同じ意味で使われている言葉です。

もうひとつ、「御簾を隔てて高座を覗く」ということわざも類語で、「みすをへだててこうざをのぞく」と読みます。「御簾」とは目の細かいすだれのような調度品で、主に宮殿や社寺の屋内で使われます。

御簾はすだれのような日除としてではなく、視線をさえぎるために使用するものであるため、御簾ごしに高座を覗いてもよく見えません。もどかしい思いをするという意味から、「御簾を隔てて高座を覗く」は「二階から目薬」の類語といえることわざです。

二階から目薬の類語③「焼け石に水」

「焼け石に水」ということわざは、熱く焼けた石に水を掛けてもすぐに蒸発してしまうことから、少しばかりの努力や援助では効果が期待できないということをたとえて用いられます。

全く効果がないわけではないものの、他のやり方を考えたほうが早く成果を手にすることができるという点において、「二階から目薬」の類語といえる表現です。

「二階から目薬」の使い方とは?

「二階から目薬」を使った例文

「二階から目薬」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 手袋をしたまま鍵を開けようとしたが、二階から目薬のようでなかなか開けることができなかった。
  • 彼女が君の気持ちに気付いてくれるのをただ待っているなど、まるで二階から目薬で埒が明かないよ。
  • こんなに赤字が膨らんでしまってから小銭貯金を始めても、二階から目薬というものだ。
  • 目標金額に対して集まった募金がこれだけでは、二階から目薬にすら届かない。

まとめ

「二階から目薬」の意味をはじめ、由来と類語表現や例文を紹介しました。日本においては効率を求めるビジネス現場であっても、あまりにストレートなやり方は好まれません。

しかし「二階から目薬」となってしまうようでは考えもので、ちょうと良い頃合いを測りながら仕事を進めていく必要があるでしょう。なお、「二階から目薬」にはまぐれ当たりという意味はないため、ご注意ください。