「温厚」の意味とは?類語・対義語や四字熟語も紹介(例文つき)

「温厚」という言葉からは、「温厚な紳士」というような穏やかなイメージが立ち上りますが、具体的な意味を尋ねられてきちんと答えられるでしょうか。また、類語の「温和」と「穏和」は使い方が異なるようです。この記事では「温厚」の意味と類語や対義語のほか、「温厚」の文字が入った四字熟語や例文も紹介しています。

「温厚」とは?

「温厚」の意味は”人柄が穏やかなこと”

「温厚」の意味は、“人柄に温かみがあって穏やかなこと”です。熟語に使われている「温」という文字にはあたたか・おだやか・なごやかという意味に加えて包み込むという意味もあります。

「厚」は、厚みのことのほかに大きさやていねいさ、心がこもっている様子なども表している漢字です。2つの文字が合わさって「温厚」という熟語になると、穏やかなぬくもりがあり優しく包み込んでくれるような大人の寛容さを意味するようになります。

「温厚」さの特徴は包容力

温厚な人と、穏やかな人や優しい人とは似て非なるものがあります。生まれつき穏やかであったり優しかったりする人はいますが、小さな子供を見れば分かるように生まれつき温厚な人はいません。

つまり、温厚さは生まれつきの性格ではなく、後天的に獲得する性質といえます。温厚さを発揮するためには、他人の欠点や失敗を許すことができる寛容さや包容力が必要ですが、人の「情」が分かることが前提です。

温厚さは人間が練れてこなければ獲得できないものですが、逆にみると後天的な努力で獲得できる資質であるともいえます。

「温厚」の文字が入った四字熟語とは?

「温厚篤実」は穏やかで誠実な人柄

「温厚篤実」は「おんこうとくじつ」と読み、「篤実温厚」ともいいます。穏やかであることに加え、誠実で情けに厚いことを表す四字熟語です。

「篤実」という熟語には、人情が厚く誠実であるという意味があります。「温厚篤実」さを備えたトップやリーダーは多くの人たちから慕われ、組織やチームの人間関係にもよい影響を与えることでしょう。

優しくて情け深い「温柔敦厚」

「温柔敦厚」は、「おんじゅうとんこう」と読みます。孔子が「詩経(しきょう)」という中国最古の詩集に対して評したときの言葉で、人を教化するために必要な力を表したものです。

「敦」という文字は、人情があつく誠実なことや真心のあることを指しており、「温柔敦厚」は優しく穏やかで情が深いことを意味しています。

「温厚」の類語とその違いとは?

類語①「温和」は穏やかで優しいこと

「温厚」の類語としては、「温和」を挙げることができます。あたたかで和やかなことを指しており、「温厚」と同じ意味合いを持つ言葉です。

しかし、人の性質だけでなく気候に対して用いることもできるという点で、「温厚」とは異なります。「温和」は「穏和」と書くこともできますが、気候について表したい場合には「温和」を用います。

類語②柔和」は人当たりが柔らかいこと

「柔和」は「にゅうわ」と読み、態度が穏やかでやわらかいことを指す言葉です。「柔和」は性質についてより、「柔和な眼差し」「柔和な態度」というように口調や仕草などの動作に対してよく用いられます。

「柔」という文字は「じゅう」と読むことが多いため、「柔和」を「じゅうわ」と読み間違えないように注意が必要です。

類語③「穏健」は良識ある穏やかさ

「穏健」は「おんけん」と読み、性格や思想・言動などにおいて突出した点がなく落ち着いていることを表す言葉です。対義語の「過激」をイメージすれば、理解しやすいでしょう。

「穏健」は「穏健派」という形でよく用いられており、強硬手段に訴えることなく穏やかに問題を解決しようとする立場の人たちを指しています。「温厚」では人格に重きが置かれますが、「穏健」では思想的な面に重点が置かれます。

「温厚」の対義語とは?

対義語①「冷酷」は冷たく非情なさま

「温厚」の対義語として、冷たく非常なさまを表す「冷酷」が挙げられます。「冷」は温度が低いことによる冷たさのほか、心の冷たさによる薄情さや心がさめていることを表し、「酷」は無慈悲なことを指しています。

相手に対する思いやりなど持ち合わせていないことを意味する「冷酷」は、情に厚い「温厚」と正反対の言葉です。

対義語②「陰険」は意地が悪いこと

「陰険」も「温厚」の対義語です。「陰」は暗いことのほか、こっそりとかくすことという意味があります。

けわしく刺々しいという意味がある「険」という文字と一緒になった「陰険」は、意地悪そうな様子や心になかに悪意を隠していることを表す熟語です。温かみや穏やかさが漂う「温厚」とは正反対の、暗い刺々しさが感じられる言葉です。

「温厚」の使い方とは?

「温厚」を使った例文

「温厚」を使った例文を紹介します。

  • 温厚でこれまで声を荒げることさえなかった彼があれほどまでに怒るのだから、よほどのことに違いない。
  • 店主の温厚な人柄に惹かれた私は、特に買い物の予定がなくてもついお店に立ち寄ってしまう。
  • いつも温厚な祖父の前に出ると、つまらないことに腹を立てている自分がとても小さく感じられる。

まとめ

「温厚」の意味のほか類語・対義語と、四字熟語や例文などを紹介しました。刑事ドラマなどで温厚な刑事に容疑者が自供するシーンが描かれていますが、温厚さには人を諭す力があります。

厳しく注意されたときのように反発心がもたげるようなことはなく、自らの姿を省みる素直さが発露されるようです。相手の良さを引き出す効果も期待できる温厚さを身に着ければ、チームの総合力を向上させることができるかもしれません。