「薫陶」の意味と出典とは?使い方の例文や熟語の類義語も解説

「薫陶」は見た目も聞こえも難しい言葉です。「先生の薫陶により…」という用法にふれることが多く、文脈や使用者の口調から立派な先生に対する感謝の気持ちが感じられます。この記事では「薫陶」の意味をはじめ、語源・類義語と使い方を解説したうえで、例文もあわせて紹介しています。



「薫陶」の意味とは?

「薫陶」の意味は「感化すること」

「薫陶」は「くんとう」と読み、徳や品位など人格の力で他人を感化し教育することを指す言葉です。たとえば尊敬できる師匠や先生の人となりに触れるだけで、自然に感化されていきます。

強制的に教え込むのではなく、指導者の姿そのものから影響され、自然に感化されていく状態で、「薫陶」で教育されるものは学問や技術だけにとどまらず、人格や思想など全人的なものにまでおよびます。

「薫陶」の語源は作陶

「薫陶」の「薫」はよい香りという意味のほかに、香を焚くことや人を感化するという意味もあります。良い香りが漂っている部屋に置かれたものには、自然とその良い香りが染み込んでいくことから、人を感化するという意味が生じました。

「陶」には瀬戸物のほか、教化するという意味があります。陶器を作るときの土をこねて形成しているさまが、人格を練り上げ形成していく様子につながったものです。

「薫」と「陶」が合わさって、良い香りが染み込みながら次第に形作られていくという意味合いの「薫陶」となりました。

「薫陶」の出典

『福翁百話』にも記載されている「薫陶」

『福翁百話(ふくおうひゃくわ)』は、福沢諭吉のエッセイ集です。『時事新報』という新聞に掲載され、単行本としても発行されました。そのなかに「日本人は数百年間儒教に薫陶された」という一文があります。

世界的にみると宗教心が薄いとされる日本人について、宗教ではなく儒教が日本人のバックボーンとなっているという内容です。

『空華集』にもみられる「薫陶」

「薫陶」は『空華集(くうげしゅう)』にもみられます。『空華集』は、南北朝時代に禅僧詩人である義堂周信 (ぎどうしゅうしん)によって著された漢詩文集です。

このなかに「朝而薫陶之、暮而琢礪之」という文がみられ、薫陶と琢礪(たくれい・勉学に励むこと)が宗派を問わず教学を高める道であると著されています。

「薫陶」の使い方・例文

自分に対しては使わない「薫陶」

「薫陶」は高い徳や人格によって教え導くことを指しているため、受け身の形で用いられることが多い言葉です。教えてもらう側が「薫陶を受ける」「薫陶を賜る」というように用いることが自然で、教える側が自ら「薫陶を与える」と言ってしまうと嫌味に受け取られます。

なお、「薫陶を与える」「薫陶を授ける」という言い回しは、指導する立場以外の人であれば問題ありません。

「薫陶」を使った例文

「薫陶」の使い方が分かる例文を紹介します。

  • 先生の薫陶を賜ったことで、人として本当に大切なものを理解できるようになった。
  • 創業者の薫陶を受けた生え抜きの役員たちが辞任した後、我が社の勢いは目に見えて衰えた。
  • 師匠は厳しい指導ではなく薫陶を授けることで、弟子たちに伝統の技と心を教えているようだ。

「薫陶」の類義語

「薫育」は「薫陶」の同義語

「薫育」は、徳による影響の力で教え導くことを指しており、「薫陶」の同義語といえる言葉です。「薫陶化育(くんとうかいく)」という四字熟語は、天地が万物を作り育てることを表した「化育」が「薫陶」に続いたもので、「薫育」と同じ意味を持っています。

なお「薫育」と同じ読みの「訓育」は、品性や気質をよい方向へ導くという意味がありますが、徳力による次元の高い導きではなく「しつけ」に近い言葉です。

「感化」は共感による影響

「薫陶」の類語として、「感化」が挙げられます。他人の生き方や考え方を変えることは難しいことですが、相手の共感を得ることで影響をおよぼせるようになると、自然に相手は変わっていくものです。

なお、「薫陶」は指導的立場にある人によってもたらされ、高潔な人格や徳力のようなレベルの高いものが伝えられますが、「感化」では、一般的なものや指導的な意図が含まれないものによる影響も含まれます。

たとえば「兄による感化」によって剣道を始め、「名伯楽の薫陶」によって範士になっていくというように使い分けます。

「教化」は徳や権威で導くこと

「教化」は「きょうか」または「きょうけ・きょうげ」と読み、読み方で意味合いが異なっています。「きょうか」と読む場合は徳や儒教の教えなどにより人を教え導くことを、「きょうけ・きょうげ」と読む場合は人々を教え導き仏道に入らせることを指します。

両者とも、人々が自然に付き従うような徳や権威による指導のことを表した言葉ですが、時の権力者の政治的意図が結びつく場合もあります。

まとめ

「薫陶」の意味や語源・類義語に加え使い方を解説し、例文も紹介しました。「薫陶」は強制的に教え込むのではなく、相手に自ずと感じ取らせるという指導法です。

黙っていてもにじみ出る徳や、日常の言動からそこはかとなく漂うオーラのような人間力があってこそ可能な指導法ですが、受け手が鈍感であれば見逃してしまうこともあります。「薫陶」は師・弟子ともに人を選ぶ教育法で、簡単に真似できるものではないようです。