「毅然」の意味とは?「毅然とした人」の特徴や使い方・類語も解説

「毅然」は「毅」という難しい漢字が使われていますが、「毅然たる態度」という言い回しでよく耳にする言葉です。また似た言葉として「泰然」がありますが、意味に違いはあるのでしょうか。この記事では、「毅然」の意味や類語・対義語のほか、使い方が分かる例文も紹介しています。

「毅然」の意味とは?

「毅然」の意味は「肚が据わっている状態のこと」

「毅然」は「きぜん」と読みます。肚が据わっておりものごとに動じないことや、断固として意思や信念を貫く様子のことを意味する言葉です。

「毅然」という熟語に用いられている「毅」という文字には、意志が強くしっかりしているという意味があります。「然」は「公然」などにみられるように、状態を表す言葉を作る助字として働き、「毅」につくことで意思が強くしっかりしている状態を指しています。

「毅然」を使った例文

  • 普段は影の薄い店長だったが、お客からの不当な要求を毅然たる姿勢で退けたことで一気に存在感が増した。
  • 反対意見が圧倒的多数である聴衆を前に、演台に上がった彼は毅然とした態度で賛成意見を展開した。
  • 亡き父に莫大な借金があったことが発覚したが、母は毅然として債務整理の手続きを進めた。

「毅然とした人」はどんな人?

メンタルが強く堂々としていられる

ものごとに動じない人のなかには、鈍感であったり楽天的だったりするタイプもいます。つまり自分が置かれた状況に気付いていなかったり、理解できていなかったりするために動揺せずにすんでいる状態です。

毅然とした人の場合、自分が危機的な状況にあることが分かっていても動じません。つまり、いかなる場合でも揺らがないほどの強いメンタルがバックボーンとしてあるため、堂々としていられるのです。

毅然とした人は信念や意思も強い

ビジネスだけでなく対人関係においても、さまざまな駆け引きから逃れることはできません。圧力を掛けられたり、懐柔策を仕掛けられたりするだけでなく、賄賂やハニートラップなど攻撃手段はさまざまです。

このような場合に毅然たる態度を失わないためには、強い信念や意思を持ち目先の損得に惑わされないことが必要です。

「毅然」の類語

「泰然」は落ち着いて動じない様子のこと

「泰然」は、落ち着いていて平静さを失わない様子や態度のことを指します。「泰然」の「泰」は、「安泰」「天下泰平」という言葉からも分かるように、「やすらか・おだやか・落ち着いている」という意味があります。

「毅然」との違いは、特に強い意思や覚悟は必ずしも必要ではなく、寛容さや徳力などの人間力によってどっしりと構えているような場合にも使用できるところです。

「決然」は覚悟を決めたさま

「決然」とは、心に固く誓い覚悟を決めたさまのことを指しています。迷いやためらいを捨てて、何があっても決行すると覚悟したならもう動じることはありません。したがって「決然」は、腹を据えて動じることがない「毅然」の類語といえる言葉です。

なお、「決然」は「決然として起つ」「決然と言い放つ」というように、行動を伴う言葉とともによく用いられます。

「断然」はきっぱりとした態度や様子のこと

「断然」は、きっぱりとした態度をとることや、強い意思で行動する様子を表しています。「断然たる措置を行う」というように、「毅然」の類語として用いることができる言葉です。

なお「断然」は、「絶対に・明らかに」といった意味で「断然こちらがいい」「断然拒否する」のように使うこともできます。

「平然」は平気なこと意味する

たいていの人は大舞台に立ったときには、緊張して普段通りの振る舞いができなくなるものです。ところが全く動じることなく、落ち着き払っていられる人もいます。

このように、周囲の状況など気に掛けることなく平気でいる様子を表す言葉が「平然」です。「平然」の場合も意思や覚悟の強さは問われておらず、生来の図太さや無神経さによるものも含まれます。

「毅然」の対義語

「優柔不断」は煮え切らないこと

「優柔不断」は、ものごとの判断を決めかねて迷っていることを表す言葉です。検討材料か判断能力かのいずれが不足しているため判断できない、あるいは失敗を恐れすぎるため決断できないなど、優柔不断になる理由はさまざまです。

いずれにしても、どうすればいいか分からず煮え切らない態度を続けている「優柔不断」は、強い意思を持って動じないことを指す「毅然」の対極にあり、対義語といえます。

「呆然」は気抜けしたさま

「呆然(ぼうぜん)」は気抜けしてぼんやりとした様子を指す言葉です。「呆」には「おろか・ぼんやりするさま・ あきれる」という意味があり、予期せぬことに遭遇すると、事態を飲み込めずにぼんやりしてしまったり、あまりのことに呆れ果ててものも言えなくなってしまったりしがちです。

このような場合、慌てふためくことはないにしても「毅然」と腹を据えて信念を貫ける状態ではありません。

まとめ

「毅然」の読み方と意味や類語・対義語と合わせて使い方が分かる例文も紹介しました。毅然たる態度を貫く場合、自分の意思や信念が正しいものでなければただの分からず屋に堕してしまいかねません。ただ神経が太いだけでは、「毅然」には不十分であることをわきまえておくことが必要でしょう。