「ナショナリズム」の意味は?対義語や「グローバリズム」も解説

「ナショナリズム」という言葉は政治・経済の分野でよく見聞きされますが、極右的にとらえられてしまうこともあることからも分かるように、複数の意味付がされています。ここからは「ナショナリズム」の意味と、対義語のグローバリズムなどについても解説します。

「ナショナリズム」とは?

「ナショナリズム」の意味は”国民主義”

「ナショナリズム」の意味は、“一つの文化的共同体が、集団としての統一と発展や独立をめざす思想・運動のこと”です。国民主義・国家主義・民族主義などと訳されますが、「愛国心」という意味で使われることもあります。

「ナショナリズム(nationalism)」は、ネイション(nation)に名詞を形容詞化する接尾辞である「al」と主義や主張を表す接尾辞「ism」がついた言葉で、直訳は「ネイションに関する主義」です。

したがって、「ナショナリズム」はネイションの意味合いによって訳が変わってくるのですが、ネイションを文化的共同体のまとまりとしてとらえると「国民主義」となります。

「ナショナリズム」には”国家主義”という意味も

ネイションを「国家」としてとらえると、「ナショナリズム」の意味は“国家主義”となりますが、国家という概念は17世紀以降に形成され始めたものです。

国民同士の協調や帰属を意識する「国民主義」と比較すると、「国家主義」は国家に対する忠誠のような政治的色合いが強い言葉で、かつてのナチスのように指導者が人為的に誘導してきた経緯があります。

また、「国家主義」は国民ひとりひとりではなく国家全体を優先する考え方でもあり、「ナショナリズム」が極右的なものとしてとらえられてしまいがちなポイントとなっています。

「ナショナリズム」は”民族主義”とも訳される

ネイションを「民族」としてとらえると“民族主義”となりますが、民族・人種を表す英語はネイションではなくレイス(race)です。しかしレイシズムの訳は民族主義ではなく、人種差別を正当化する意味合いで使われています。

多民族国家における「ナショナリズム」は「民族主義」ととらえられることが多く、「ナショナリズム」が民族間の紛争の元になっているようです。

「ナショナリズム」のメリットとは?

グローバリズムは「ナショナリズム」を復権させた

大航海時代に幕を開けたグローバリズムの流れから一転して、「ナショナリズム」への回帰がみられるようになりました。これまでグローバリズムが進むことで「ナショナリズム」は弱くなっていくように思われていました。

しかし、グローバリズムの急先鋒だったヨーロッパやアメリカで「ナショナリズム」が復権している理由は、グローバリズムにはない「ナショナリズム」のメリットが見直されたからです。

「ナショナリズム」のメリットは国民の連帯強化

グローバリズムには普遍的な価値観を押し付ける一面がありますが、押し付けられた側は自国の「ナショナリズム」を強化して対抗します。その結果が欧米諸国で頻発している移民問題です。

そして、欧米諸国でも国民意識と自国民の連帯を高める「ナショナリズム」のメリットが自覚されるようになり、グローバリズムから「ナショナリズム」への回帰が進んでいるのです。

「ナショナリズム」の対義語とは?


「ナショナリズム」の対義語としては、「グローバリズム」「コスモポリタニズム」「インターナショナリズム」「ユニバーサリズム」が挙げられますが、それぞれに意味合いが異なっています。

「グローバリズム」は世界を均一化する

「ナショナリズム」の対義語として、「グローバリズム」が挙げられます。「グローバリズム」は地球という意味のグローブ(globe)が元になっている言葉で、「地球主義」と訳されています。

国家や地域というナショナリズムに基づいた単位の集まりである世界を、普遍的な価値や規範で均一化しようという考え方ですが、現在では主に新自由主義者による国境なき経済活動を表している言葉です。

国境を取り払って移民を大量に受け入れたことにより様々な弊害が起きていますが、一方でアメリカの「アメリカ・ファースト」やイギリスの「ブレグジット」などのような、ナショナリズム回帰も始まっています。

コスモポリタニズムは全世界を自国と考える

「コスモポリタニズム」とは「世界主義」と訳される言葉で、東西の文化が融合したヘレニズム時代に発生したものです。

小さな都市国家(ポリス)ではなく、一つの共同体としての「世界」にすべての人間が平等な立場で所属することを目指した国際都市(コスモポリス)になろうという考え方です。

国民単位の独立を旨とする「ナショナリズム」の対義語といえる「コスモポリタニズム」ですが、世界を均一化するのではなく全世界を自国と考える点が、「グローバリズム」と異なります。

「インターナショナリズム」は共存共栄を目指す

国際主義と訳される「インターナショナリズム」は、各国が独立した主権国家として存在しながらも、相互の共存共栄と世界平和を実現しようとする考え方です。

インター(inter)は「間・相互」という意味をもつ接頭辞で、ナショナリズムの頭につくことにより、共同体や国家の関係性を模索する意味合いを形成しています。

インターナショナルは自国の独立性を尊重しながらも、他国の独立性を損なうことなくよりよい関係性を相互的に築いていこうとすることで、世界を均一化する「グローバリズム」や全世界を自国と考える「コスモポリタニズム」とは異なります。

「ユニバーサリズム」は普遍性を重んじる

「ユニバーサリズム」は、「普遍主義」と訳されます。「ユニバーサリズム」は、普遍的という意味のユニバーサル(universal)が元になった言葉で、個別の違いよりそれぞれに共通する事柄を尊重しようとする考え方です。

全人類に共通する普遍性を重んじる立場の「ユニバーサリズム」は、それぞれの国ごとの違いを大切にして独立性を保とうとする「ナショナリズム」の対義語といえる言葉です。

まとめ

「ナショナリズム」の意味のほか、対義語の「グローバリズム」などについても解説しました。人類の歴史が戦争の繰り返しであることから分かるように、それぞれの国が国益の最大化を目指すと衝突が起こります。

しかし、世界をひとつにまとめる価値や規範を見出すことは難しく、力の強さや数の多さで押し切ることになりがちです。世界中の人々が幸福に暮らせる方法論の、1日も早い確立が望まれます。