「エミール・ベルリナー」は、アメリカの発明家で、電話機や蓄音機の開発に携わった人物です。発明家としてはトーマス・エジソンの方が名が知られていますが、「エミール・ベルリナー」はそのエジソンと競争し、「勝った」とも言われています。「エミール・ベルリナー」の功績とエジソンとの関係について詳しく紹介します。
「エミール・ベルリナー」とは
「エミール・ベルリナー」とは19世紀のアメリカの発明家
「エミール・ベルリナー(Emil Berliner、1851年~1929年)」とは、アメリカの発明家です。出身はドイツですが、1870年にアメリカに移住しています。
移住当初は、様々な仕事で生計を立てていましたが、電気工学(エレクトロニクス)に興味を持ち、働きながら学び、電気技術者としての仕事に就きます。いくつかの職場で技師としての経験を積んだベルリナーは、電話機の開発を手掛けていた「アレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)」の会社に入社、電話機開発で高い功績を残しています。
「エミール・ベルリナー」とはエジソンとの発明競争も知られる
アメリカの偉大な発明家といえば、エミール・ベルリナーよりも、トーマス・エジソンの印象が強いという人も多いのではないでしょうか。
「トーマス・エジソン(Thomas Alva Edison、1847年~1931年)」は、蓄音機や白熱電球の発明で大きな功績を遺した人物で、ベルリナーと同時期に活躍した発明家です。二人は電話機開発における「特許」問題から始まり、その後の蓄音機の実用化においても、発明競争を繰り広げたことで知られています。ベルリナーの功績を語る上で、エジソンは欠かせない存在と言えるでしょう。
「エミール・ベルリナー」の功績と「エジソン」との競争
エミール・ベルリナーは電話機と蓄音機の開発に携わりました。彼の功績について、エジソンとの発明競争とともに詳しく紹介します。
電話機発明における特許争いはエミール・ベルリナーの勝利
エミール・ベルリナーが電話機開発に携わったのはグラハム・ベルの研究所が開発の最終段階に差し掛かったところで、エジソンの特許との抵触が問題になったいた時期でした。このエジソンとの特許問題に関し、ベルリナーは実用的な改良案をグラハム・ベルに提出し、既出の特許に触れる可能性を排除することに成功します。
ベルリナーはこの改良案で新たに特許を取得し、グラハム・ベルに技術者として雇用されます。そして、ベルリナーの新案によって、グラハム・ベルは特許争いに勝利し、電話機の開発に成功する形となったのです。
一方で、エジソンの功績がなければ、電話機の発明そのものがもっと遅れていたとも言われていて、当のエジソン自身も「グラハム・ベルが電話機を開発した」と言われることに納得していなかったようです。
エミール・ベルリナーは蓄音機「グラフォフォン」を開発
電話機の開発では、ベルリナーの改良案によって最終的にグラハム・ベルが特許を獲得しましたが、エジソンはこれに対し「蓄音機」の分野で反撃を開始します。1877年には、エジソンは最初の錫箔円筒式蓄音機「フォノグラフ」(筒状の蝋に溝を掘り、音声を記録・再生する装置)を完成させ、「話す機械」として評判を集めました。しかし、実際には、性能が低く、実用化には遠い物だったようです。
これに対抗するように、ベルリナーは実用化に適した蓄音機の開発に着手します。録音と再生の針を別にする・音声が明確に聞こえるようゴム管を使う、などの改良を行い、1885年に「グラフォフォン」という蓄音機を開発したのです。電話機開発の際にグラハム・ベルの研究所に技師として入所したベルリナーでしたが、この「グラフォフォン」完成の前年に退所し、独自の開発に専念しています。
その後、ベルリナーは、音の振動を横振動に変換し、円盤に刻む方式(ディスク)を採用します。これが後のレコードプレイヤーの原型と呼ばれる円盤式蓄音機「グラモフォン」です。これにより、大量生産が見込めるようになりました。
エミール・ベルリナーはヘリコプター開発にも携わる
エミール・ベルリナーは、電話機と蓄音機の発明が有名ですが、ヘリコプター開発の初期段階に携わったことも特筆すべき功績です。
1907年から20年あまり、ベルリナーは「垂直飛行技術」向上に関する研究を行っています。自動車エンジンを改良して、軽量のロータリーモデルを開発、垂直飛行を改善したエンジンを発明しました。1922年には、合衆国陸軍のために、ベルリナーは息子ヘンリーとともに、合衆国陸軍に対してヘリコプターの実演を行っています。このヘリコプター研究は、のちに息子が引き継ぎ、Berliner Aircraft Company(1926年)を設立しています。
まとめ
エミール・ベルリナーは、電話機の開発に興味を抱き、グラハム・ベルとエジソンの特許争いを解決する改良案を提出、新たな特許案でベルの電話機開発に大きく貢献しました。そのことがきっかけで、今度はエジソンとの蓄音機開発競争に挑むことになり、長年にわたる開発競争の結果、現代につながる円盤式蓄音機という大きな発明を成し遂げています。このベルリナーの蓄音機は、レコードからその後のCDに至るまで、現代の音声記録・再生分野の基礎を作ったとも言われています。