「リストラ」という言葉は1990年のバブル崩壊以降、ひんぱんに見聞きするようになりました。本来の「リストラ」は必ずしも「解雇」のことを意味するものではありませんが、一般的に「リストラ=クビ」と受け止められているようです。この記事では「リストラ」の意味のほか、「解雇」や「退職勧告」との違いも解説しています。
「リストラ」とは?
「リストラ」の意味は”再構築”
「リストラ」の意味は、“再構築”です。英語の「restructuring(リストラクチュアリング)」を省略したものです。
構造・組織・体系や構築物・建造物という意味の「structure」に、again「再び」・against「反対に」・back「後ろへ」という意味を加える接頭辞「re-」と、動名詞を作る接尾辞「-ing」が加わってできています。
本来の「リストラ」は収益を高めるための活動
「リストラ」で組織や体系を再構築する目的は、企業が成長を維持したり収益力を高めたりすることです。したがって、成功部門への追加投資や新規部門の立ち上げのほか、人材育成なども「リストラ」のための手法としてありえます。
本来の意味からするとM&Aも「リストラ」のひとつですが、M&Aにともなう人員の削減ばかりが取り沙汰されているのが現状です。
「リストラ」の分かりやすい例はコストカット
本来、「リストラ」とは組織や体系を再構築することを指す言葉ですが、不採算部門からの撤退や組織の簡略化などがよく挙げられます。
「リストラ」にはさまざまな方法がありますが、なかでも短期間で効果が表れる手法がコストカットです。もっと分かりやすくいうと人件費のカット、つまり人員の削減や非正規雇用の拡大などを指します。
「リストラ」と「解雇」との違いとは?
「解雇」は”リストラ”の手法の一つ
人員の削減は実施後に効果がすぐに表れることや、特別なスキルがなくても比較的簡単に行えるため、「リストラ」の手法としてしばしば用いられます。
そのため、「リストラ」と聞けば「解雇」がイメージされるようになってしまい、「リストラ」は「解雇」と同じ意味で使われることが増えているのです。
しかし本来の意味では、「解雇」は「リストラ」の手法のひとつでしかなく、「リストラ」=「解雇」ではありません。
「解雇」は使用者側からの契約解除
「解雇」とは、使用者側から労働者への一方的な労働契約の解除のことです。正当な理由がない限り労働者を「解雇」することはできませんが、理由が正当であれば労働者側は「解雇」に応じなければなりません。
労働者を「解雇」する場合、会社は労働者に対して少なくとも30日前に予告するか、解雇予告手当を支払うことが必要です。正当な理由とされる「解雇」には、以下の3種類があります。
1.普通解雇
労働契約を継続できないような事由、たとえば労働者が労働契約を履行しないような場合に認められる解雇です。
2.整理解雇
会社の業績が悪化するなど、止むを得ない理由で行う人員整理のための解雇です。
3.懲戒解雇
就業規則において定められている「服務規律」に違反した社員への懲戒処分としての解雇です。
「リストラ」と「退職勧告」との違いとは?
「退職勧告」とは退職を促すこと
「退職勧告」とは、労働者が退職することに了解したうえで、自ら退職するように会社側が働きかけることです。会社が労働契約を解除する「解雇」とは違い、「退職勧告」では労働者が労働契約を解除します。
「退職勧告」はあくまでも勧告であるため、労働者が退職に同意しなければ労働契約を解除できません。つまり労働者は、「辞めません」と断りさえすれば退職する必要がないのです。
なお退職勧告に応じての退職では、退職勧告の理由・退職年月日・退職金の額などが記載された「退職勧告通知書」に労働者が署名することで合意が成立します。
いきすぎた「退職勧告」はパワハラになる
労働者が退職強要(強制的な「退職勧告」)を受けた場合や、勧告に応じなかったことで不利益な扱いを受けた場合には、パワーハラスメントや強要罪に該当するかもしれません。
そのような場合、労働者は労働審判や民事裁判などに訴えることで、不当な扱いによる損害賠償などを求めることができます。
退職強要による退職は取消しできる
退職強要に耐えきれず不本意ながら退職に応じてしまったような場合は、退職を取り消すことができます(民法第96条)。
ただし、ひとたび「退職勧告通知書」や「退職同意書」などに署名したり「退職届」を提出してしまったりすると、実際に退職を取り消すことは困難です。
退職強要を受けたことを立証するだけの証拠をそろえるなど、かなりの時間とエネルギーが必要となるため、退職の意思がなければ不用意に署名したり退職届を提出したりしないことが大切です。
まとめ
「リストラ」の意味のほか、「解雇」や「退職勧告」との違いも解説しました。「リストラ」で自分が「解雇」や「退職勧奨」の対象になった場合、大きなショックを受けてしまうでしょう。
会社を辞めない方法はありますが、居心地が悪くなることは避け難いのが現状です。いっそのこと可能な限り有利な条件で退職して新天地を求めることを考えたほうが得策かもしれません。