「かまける」の意味とは?正しい使い方や誤用例・類語表現も解説

「かまける」はときおり見聞きしますが、漢字で書くこともできる言葉です。ちょっと言い訳めいた言い回しで使われることが多かったり、語感が似た言葉や方言でも使われたりすることから、誤用されている事例もみられます。この記事では、「かまける」の意味や漢字表記のほか、類語などについても紹介しています。

「かまける」の意味とは?

「かまける」の意味は”他に気を取られて意識が向かないこと”

「かまける」の意味は、“何かに気をとられてしまって他のことを省みないこと”です。あることに気を取られてしまい、他のことをすっかりなおざりにしたり、意識が向かなくなってしまったりするときに使います。

たとえば、転職したばかりのときには新しい仕事を覚えることに全力を投入するもので、恋人からのメールを見落としてしまうこともあるでしょう。このようなときに「仕事にかまけてメールに気づかなかった」と釈明します。

「かまける」のもともとの意味は心をひかれること

「かまける」には心を惹かれるという意味もあります。「かまける」という言葉は古くは万葉集のなかに見ることができますが、この頃の意味合いは「なおざりにする」ではなく「感心する」「共感する」「心をひかれる」というものでした。

ところが時代がくだるにつれて気をとられることよりも、そのことによって他のことをなおざりにするという点に重きが置かれるようになっていったのです。

「かまける」には愚痴を言うという意味も

長野県や岐阜県の方言で「かまける」は、「愚痴を言う」という意味合いで使われています。「暑い暑いとかまけていないで仕事にとりかかろう」というように使うことができます。

しかし一般的に「かまける」を使用する場合は、「暑さにかまけて仕事をおざなりにする」となり、全く意味が違ってくるため注意が必要です。

「かまける」の漢字表記とは?

「かまける」を漢字で書くと”感ける”

「かまける」を漢字で表すと、「感ける」となります。「感」という文字には、「心が動く」「物事に触れることである気持ちをいだく」という意味があり、「かまける」が持っていた本来の意味である「心をひかれる」ということをよく表しています。

「かまける」を漢字で表記することがあまりない理由は、「感」の訓読みとして挙げられない用法であることもありますが、「なおざりにする」という意味と「感」という文字が結びつきづらいという点も考えられます。

「かまける」の使い方のポイントとは?

「かまける」の前後に原因と結果をつけて使う

「かまける」は、何かに気がとられたために他のことをなおざりにすることを表すため、前後に原因と結果を伴って用いられます。

たとえば、「道楽にかまける」では完結せず、「道楽にかまけて商売をほったらかしにした」というように、何をおろそかにしたかについての言及が加えられるのです。

「かまける」に言い訳の意味はない

「かまける」をもちいるときには、何かをおろそかにすることになった原因が先に述べられ、後におろそかにしたことを説明します。そのためか「かまける」を、「言い訳をする」あるいは「口実にする」という意味で使っている誤用例が見受けられます。

例を挙げると「電車の遅延にかまけて寄り道していこう」というような使い方ですが、これは間違いです。この場合は「かまけて」ではなく、「かこつけて」が適切でしょう。

「かまける」は良い意味では使わない

何かに熱中するあまり他のことを省みない意味合いがある「かまける」ですが、ボジティブな意味合いでは用いられないという点に注意する必要があります。

たとえば「彼は勉強にかまけて飲み会に出てこない」という事例は、意思が固い真面目な人というポジティブな評価ではなく、付き合いの悪い人というネガティブな評価になります。

「かまける」の類語とは?

「掛かり切り」は何かに集中して他に手が回らないこと

「掛かり切り」は「かまける」と同様に、何かに集中することによってそれ以外のことに手が回らなくなった状態を指す言葉です。「子供たちの世話にかまけて、掃除に手が回らない」という文を「掛かり切り」に置き換えても意味が通ります。

なお「掛かり切り」になる対象はしなければならないことで、ギャンブルのようなやめたほうが良いようなことについて述べたいときには、「かまけて」を用いることが一般的です。

「そっちのけ」はやるべきことを放置して別のことをすること

「そっちのけ」は「そちらに退ける」ということが語源で、本来しなければならないことを放置して別のことばかりすることを指す言葉です。

たとえば「ゲームにかまけて宿題を後回しにする」を「そっちのけ」を使って言い換えると、「宿題そっちのけでゲームばかりする」となります。

「かまける」と「かまう」との関係とは?

「かまう」とは気に掛けること

「かまける」と紛らわしい言葉として、「かまう」が挙げられます。「かまう」は漢字で「構う」と書き、「気に掛ける」「相手にする」という意味の言葉です。

何かに熱中するという意味の「かまける」に近いニュアンスがありますが、「かまう」におざなりにするという意味合いは含まれていません。したがって、「かまける」と「かまう」は特に関係がある言葉ではありません。

まとめ

「かまける」の意味と漢字表記のほか、類語や似ている言葉の「かまう」との関係も紹介しました。話し言葉で気軽に使われていますが、漢字で書かれるとまず読めなかったり、方言では意味合いが違ってきたりするなど、「かまける」は意外と難しい言葉です。

「かまける」に限らず用法に自信が持てない場合には使用を控え、類語を用いて言い換えることをおすすめします。