「もとい(元い)」の意味は?「改め」との違いや類語・例文も解説

「もとい(元い)」とは日常会話でよく聞かれる言葉で、言い間違いを訂正するときに使われます。たとえば「今日は9時集合、もとい10時集合」と言ったときは、9時は誤りで、正しくは10時だという意味になります。

この記事では、「もとい」の意味と漢字表記のほか、使い方や類語について例文つきで解説しています。似た意味の「改め」との使い分けも押さえておきましょう。

「もとい」とは?

「もとい」の意味は”間違いを訂正するためにもとへ戻る”

「もとい」の意味は、“間違いを訂正するためにもとへ戻る”です。間違った発言をしてしまったときに「もとい」と言ってから、あとに内容を訂正する言葉を続けます。直前に言ったことを打ち消す意味合いで使われる言葉です。

また、本音を言うことがはばかられるようなときに、わざと違うことを言ってから「もとい」と冗談めかして、あとに続けて言いたかったことを言うという使い方もされています。他にも話が脱線しかかったときに、最初の話題へ戻したいときにも使うことができます。

「もとい」の漢字表記は”元い”

「もとい」は、「元へ戻る」の「元へ」から変化した言葉です。「もとい」「もっとい」とも呼ばれていた、髪の髻 (もとどり・まげ) を結び束ねる紐や糸のことを指す元結(もとゆい)が語源であるとする説もあります。

髷を結い直すとき元結を締め直すことから、間違った時に元のところに戻るという意味合いで使われるようになったようです。

「もとい」は話し言葉

「もとい」は、通常ひらかなで表記される言葉です。パソコンで「もとい」を変換すると「基」が出てきますが、「基本」「基礎」という意味であるため間違えないようにご注意ください。

しかし、文章で間違いが見つかった場合は書き直せばすむため、「もとい」は一般的に話し言葉で使われています。

「もとい」の使い方と例文とは?

「もとい」は言い間違えの訂正に使う

「もとい」は、言い間違えたことを訂正または取り消したいときに用いられます。誤ったことを言ってしまったとき、発言の前に戻すというイメージです。

例文
  • 集合場所は八重洲中央口、もとい丸の内中央口です。
  • 会議は明日9時、もとい明後日の9時に行います。
  • 新任の山田さん、もとい山本さんはどんな人ですか?

「もとい」はジョークや皮肉にも使える

「もとい」の前言を翻すときに使うことができるところをうまく利用して、ジョークや皮肉を言いたいときに活用することもできます。うっかり言い間違えた風を装って訂正しますが、本当に言いたかったことは「もとい」の前に言ったことです。

例文
  • うちのワイフは守銭奴、もとい大変な倹約家です。
  • 新入社員のAはITオタク、もといITにとても詳しい人材です。
  • 係長は軟派な男、もとい女性に対していつも優しい人ですよ。

「もとい」と「改め」の違いとは?

「もとい」と「改め」の違いは”否定するかどうか”

「改め」は「改める」の連用形です。主に名詞の言い換えに用いられ、「Aを新しく替えてB」という意味合いになります。わかりやすい例は、歌舞伎や落語のような伝統芸能における襲名でよく見聞きする、「〇〇改め△△」です。

「改め」は、前にあったものを変えるという点で「もとい」に似ていますが、「もとい」のような前に言ったことを否定、あるいはなかったことにするといったニュアンスはありません。

そのため、「もとい」の言い換えに「改め」を使える場面は、単に名称が変わったような場合に限られています。

「もとい」の類語とは?

「ではなく」は「もとい」の言い換えに使える

「もとい」の言い換えに使える類語としては、「ではなく」が挙げられます。「ではなく」は、最初に述べたことを否定して別のことを述べたいときに使う言葉で、「もとい」と同じ意味合いです。

したがって「AもといB」を「AではなくB」と言い換えても、内容的には同じものとなります。

「ならぬ」はあとから否定する言葉

「もとい」の類語として、「ならぬ」が挙げられる言葉です。「ならぬ」は「~である」という意味の「なる」に、打ち消しの「ぬ」がついたもので、「神ならぬ身」や「並々ならぬ努力」というように使います。

「もとい」は前言を上書きするイメージの言葉ですが、「ならぬ」は「AではないB」というようにBを説明するために使われる言葉です。したがって「ならぬ」は「もとい」の類語ですが、若干ニュアンスが異なる言葉です。

「というより」はより適切な言い換えに

「もとい」は前言を否定あるいは撤回したいときに使いますが、最初に述べたことよりもさらに適切なものに言い換えたいときには、「というより」を用います。

単に前言の否定や撤回に使用する「もとい」とは異なり、「AというよりB」とした場合、Aと比較してBのほうが言及したい内容をより適切に表している必要があります。

まとめ

「もとい」の意味と漢字表記を解説し、類語や使い方について例文とともに紹介しました。言い間違いをしてしまうと、あとから訂正しても「聞いていない」という声が出ることや、勘違いされてしまうことは少なくありません。

間違いをその場で訂正できる「もとい」をうまく使って、正しい情報が関係者全員にきちんと伝わるように努めたいものです。