「オフショア」はビジネスの現場でよく耳にする言葉ですが、さまざまなシーンで使われているため、実際にどのようなことを指しているのか、あいまいになっているかもしれません。この記事では、「オフショア」の具体的な意味をはじめ、「ニアショア」や「オンショア」との違いについても解説しています。
「オフショア」の意味とは?
「オフショア」の意味は”海外”
「オフショア」の意味は、“海外”です。英単語「offshore」の読みをカタカナ表記した言葉です。
「offshore」は、岸を表す「shore」と離れることを示す「off」が合わさってできた単語で、本来は「沖合」のことを指す単語です。ここから転じて、本拠地である国の外である「海外」のことをいうようになりました。
「オフショア」にはタックスヘイブンという意味も
「オフショア」は”タックスヘイブン(租税回避地)”の同義語としても用いられています。
「タックスヘイブン」は、国の政策による特別金融区画として設けられており、その多くはかつてヨーロッパの植民地だった地域です。税制面で優遇措置を設けることで、海外からの企業や投資などを呼び込んでいます。
具体的には、香港・シンガポール・マカオのほか、マン島・モナコ・ルクセンブルグ・ケイマン諸島、さらにはバハマ・パナマなどが該当します。
「オフショア」の使い方とは?
ビジネスにおける「オフショア」の意味は新興国や途上国のこと
「オフショア」は海外のことを指す言葉ですが、ビジネスで使用される場合には新興国や発展途上国のことをいうケースが多くみられます。
アメリカの大企業では人件費や工場用地などを低く抑えるため、自社工場を海外に置いたり海外企業に委託・移管したりする「オフショアリング」が行われた結果、国内企業の空洞化を招く結果となったのです。
トランプ米大統領は中国に流出した企業に対して「アメリカ回帰」を促すことで、アメリカ本国の中産階級への雇用機会と所得を増やそうと尽力しています。
「オフショア開発」とはシステム開発の海外委託のこと
「オフショア開発」とは、システム開発などの業務を海外企業や海外の現地法人などに委託することを指す言葉です。
「オフショア開発」によって、ITを活用する事業分野の拡大にともなう日本人エンジニアの人件費高騰と、少子化による人手不足を解消しています。
近年では開発業務だけにとどまらず、データ入力やコールセンター業務などもアウトソースされるようになりました。
「オフショア」と「ニアショア」との違いとは?
「ニアショア」とは国内の地方都市のこと
「オフショア」と似ている言葉として、「ニアショア」が挙げられます。
- 「オフショア」:海外
- 「ニアショア」:国内の地方都市
いずれも本拠地より人件費などが安い地域を指していて、一般的に「オフショア」の方が製造コストを抑えることができます。
しかし、言葉や文化の壁などをクリアするための教育に時間と手間が掛かることと、新興国が発展するにつれて人件費が高騰し、コスト削減のメリットが小さくなってしまうという問題があるのです。
そのため、本拠地より製造コストが掛からない国内の地方都市が、「ニアショア」として注目されるようになりました。
「ニアショア」はセキュリティー面でもメリットあり
「オフショア」でのビジネスには為替レートの急激な変化のほか、デモや暴動などのカントリーリスクなどの大きな不安材料があります。
2012年の中国で起きた尖閣問題を発端とする日本企業の焼き討ちのような事件は、いつ起きてもおかしくないのです。
けれども国内の地方都市でビジネスを行う「ニアショア」の場合は、人件費面でのメリットは小さいものの、為替レートやカントリーリスク対策へのコストは不要となります。
地方の振興にもつながる「ニアショア」
東京一極集中によって、地方が疲弊しつつあります。けれども「ニアショア」によって地方でビジネスが展開されると、地方での就業機会が増えることが期待できるのです。
「ニアショア」においては、地方自治体のバックアップも期待でき、「オフショア」から「ニアショア」への回帰を促す「一般社団法人日本ニアショア機構」なども設立されています。
「オフショア」と「オンショア」との違いとは?
「オンショア」は”オフショア”の対義語
「オンショア」は「オフショア」の対義語で、「自国内」という意味です。「オンショア」は主に金融取引で使われる言葉で、「オフショア」に比べると使用される範囲は狭くなっています。
金融における「オンショア」は「国内金融市場」と訳され、取引では国内の規制や税制が適用されます。海外投資を行う場合でも取引通貨は「円」を用い、税金や手数料なども日本国内の法律に基づいて決められたものです。
「オンショア開発」はクローズドの開発体制
「オンショア開発」は「オフショア開発」の対義語です。海外企業や海外の現地法人で開発を行う「オフショア開発」に対し、本拠地の自社内で完結させる開発体制のことをいいます。
「オンショア開発」のメリットは、言葉や文化の違いを克服するためのトレーニングが不要で、意思の疎通が行いやすいことのほか、機密が漏洩しにくいことも挙げられます。
まとめ
「オフショア」の意味のほか、「ニアショア」や「オンショア」との違いも解説しました。「オフショア」と「ニアショア」はもともと波の状態を指すサーフィン用語でした。
およそビジネスとは関係なさそうなサーフィン用語がビジネスや金融で広く用いられるようになった理由は、ビジネスのグローバル化によって国境が波のように流動的なものになったことによるのでしょう。