「回復」と「快復」は一字違いでいずれも「かいふく」と読む熟語で、似たような意味合いで使われています。しかし、用法にははっきりとした違いがあるのです。この記事では「回復」と「快復」の違いを、漢字の意味と怪我や天気などにおける具体的な使い分けを交えながら解説しています。
「回復」と「快復」の違いとは?
違いは「回復」は元に戻ること「快復」は治ること
「回復」と「快復」は読みが同じで「復」という文字が共通している熟語ですが、違いは”回”と”快”の意味にあります。「回」は「まわる」のほか、「奪回」「挽回」という熟語からもわかるように、「元に戻す・戻る」という意味があります。
一方、「快」には「こころよい」のほかに「病気が治る」という意味があり、「全快」「快気」という熟語もこの意味を含んだ熟語です。つまり「回復」は”元に戻ること”、「快復」は”怪我や病気が治ること”を表しています。
「快復」は常用漢字表にない用法
「快復」は、常用漢字表にない用法です。そのため、新聞や公文書のような常用漢字表にある用法をしなければならない媒体においては、「回復」が用いられています。しかし一般的な場面においてなら、常用漢字表にない表現を使ってはいけないという縛りはありません。
したがって私信などで「快復」を使用することに問題はなく、むしろ自然な気持ちの発露といえるものです。使い分けに迷った場合には、公文書や教科書、ビジネス文書などのような公的側面が強い場合は「回復」を使うと覚えておけば大丈夫です。
「恢復」は「回復」と同じ意味の言葉
かつて、「回復」は「恢復(かいふく)」と表記されていました。「恢」には「とりもどす」と言う意味がありますが、「天網恢恢(てんもうかいかい)」という言葉からもわかるように「ひろい・大きい」ということも指しています。
このように「恢」と「回」は意味合いの異なった漢字ですが、常用漢字である「回」を用いた「回復」に置き換え「恢復」と同じ意味の熟語として使っているのです。
「回復」と「快復」の怪我での使い分けとは?
治っていく過程で使う「回復」
「回復」は、よくない状態になったものが少しずつ元の状態に戻っていることを表しており、怪我や病気が治っていく過程のことを指す言葉です。
例を挙げるなら、怪我や病気で治療を行っている途中で「回復の兆しがみえてきた」「かなり回復してきたが全快には至らない」というような使い方をします。
完全に治ることを指す「快復」
「快復」は、怪我や病気が完全に治ることを指した言葉です。そのため、治っている途上で使うことはできないのです。先に紹介したように、「快復」という用法を新聞などで見かけることはありません。
常用漢字表にない用法であることが理由ですが、「快復」が「全快」を指すことから不用意に用いることがはばかられるため、「快復」という言葉は慎重に使用されています。
お見舞いでは「快復」を使う
お見舞いの手紙ではまだ「快復」に程遠い状態のときであっても、「ご快復をお祈りします」というように「快復」を使います。
常用漢字表に従うなら、「ご回復をお祈りします」と表記することが正しいのですが、「快復」という用法は常用漢字が告示される前から広く用いられていることもあり、手紙のマナーに適う用法は「快復」となっているのです。
「回復」と「快復」の天気での使い分けとは?
天気は「回復」が正解
天気予報では、「午後にはお天気がカイフクするでしょう」という解説をよく耳にしますが、この場合の「カイフク」は「回復」が正解です。
一般的に雨天はお天気がよくない状態とされており、よくない状態が元のよい状態に戻ることを指す「回復」が用いられます。
ものごとに関して広く用いられる「回復」
天気に限らず「回復」は、悪化したものごとや状況などが元の状態に戻ることを指して用いられます。たとえば「景気が回復する」「こじれた関係が回復する」という言い回しです。また「事故で乱れたダイヤが回復する」という用法もあります。
このように「回復」は、社会情勢や人間関係のほか、ものごとの状態や状況などに対して広く使うことができる言葉です。
「快復」は怪我や病気だけが対象
「快復」は完全に健康な状態に戻ることを表す言葉ですが、怪我や病気などが対象でない場合に用いられることはありません。つまり、状態が悪くなったものが完全に元どおりに戻ったときに「快復」と使うと誤用となるのです。
このように「快復」は限定的に使われるため、お見舞いのとき以外は「回復」を使うと覚えておけば使い分けに迷わずにすみます。
まとめ
「回復」と「快復」の違いについて、怪我や天気での使い分けを交えながら解説しました。「快復」は、怪我や病気がすっかりよくなるという場合に限って用いる言葉です。
それ以外のものごとを対象に、元の状態に戻ることを表したいときには「回復」を使います。この2点を覚えておけば、「回復」と「快復」の使い分けで困ることはないでしょう。