「顔料」と「染料」はいずれも色を付けるためのもの。色が付く仕組みや仕上がりに大きな違いがあるため、適切に使い分ける必要があります。この記事では「顔料」と「染料」の違いをはじめ、プリンタインクの見分け方や筆ペンの使い分け、混ぜるとどうなるのか紹介しています。
「顔料」と「染料」の違いとは?
「顔料」と「染料」の違いは”溶剤に溶けるかどうか”
「顔料」と「染料」は、ともに人工物の着色に用いられる色材で色のついた粉末状の物体ですが、両者の大きな違いは、水や油などの溶剤に溶けるかどうかという点にあります。
「顔料(がんりょう)」は溶剤に溶けないため、バインダーと呼ばれる定着剤と混ぜ合わせ、人工物の表面に定着させて用います。つまり「顔料」は物体の表面に塗られているだけで、内部には染み込んでいません。
一方「染料(せんりょう)」は溶剤に溶けて、布や紙などの繊維の間に染み込むことで色を付けるという仕組みで着色します。「染料」は染み込んで染めるものと覚えておけば、「顔料」と混同してしまうことはなくなるでしょう。
「顔料」は堅牢性が高い
「顔料」の歴史は古く、2万年近く前に描かれた洞窟の壁画ですでに「顔料」が使われています。また現代において、「顔料」の利用は着色だけにとどまりません。
塗装したものの劣化を防いだり、電子部品・磁気テープなどの材料に導電性能を与えたりするなど、幅広く活用されているのです。これらは「顔料」の高い堅牢性に由来するもので、水ぬれや摩擦に強いため経年変化が少ないという特徴があります。
「染料」は素材に染み込む
「染料」は「顔料」より歴史が新しく、古代エジプトなどで天然色素を用いた染色が行われていたことが確認されています。「染料」を水などの溶剤に溶かし、色材を布や皮革、紙などに染み込ませて素材に色付けする手法が染色です。
「染料」は染める素材と染料との親和性によって染まり具合が違ったり、水にぬれると色移りしたりするなど、「顔料」よりデリケートな性質があります。
反面、「染料」は透明感のある発色や微妙なグラデーション、素材の風合いを損ねない仕上がりが特徴です。これらは「顔料」にはない「染料」の持ち味として挙げられる点です。
「顔料」と「染料」を混ぜるとどうなる?
「顔料」と「染料」を混ぜると固まることも
「顔料」と「染料」はどちらも色を付けるものではありますが、性質や成分が異なるため混ぜると固まったり分離したりといった不具合が発生することがあります。
また、素材へ色が付く仕組みもそれぞれ異なっているため、ムラになったり定着しなかったりすることも考えられるでしょう。したがって、同じ色だからといって混ぜて使うようなことは避けたほうが無難です。
混ぜるとプリンタのヘッドが詰まることも
プリンタインクの場合、染料インクに顔料インクを混ぜるとプリンタのヘッドが詰まってしまうリスクがあります。これは「顔料」の粒子が「染料」に比べて大きいため。プリンタ本体が故障して使えなくなることも考えられるので、充分に気をつけたいポイントです。
プリンタインクで「顔料」と「染料」の見分け方とは?
PGBKが「顔料」でBKは「染料」
キャノンのプリンタインクの場合、黒インクには「PGBK」と「BK」の2種類があります。「PG」は「Pigments」の略で「顔料」という意味があり、「PGBK」が顔料インクで「BK」は染料インクというように区別されているのです。
にじみにくく乾燥が早い「PGBK」はテキストの印刷に使われ、鮮やかな色合いの「BK」は写真の印刷に使われます。ブラザーの場合、黒は顔料インクでカラーインクは染料インクです。エプソンでは4色タイプはすべて顔料インクで、6色タイプはすべて染料インクとなっています。
蛍光ペンでにじむのは「染料」
インクが「顔料」であるか「染料」であるかについては、印刷後に見分けることもできます。印刷された文字に蛍光マーカーを入れたとき、染料インクで印刷されたものは文字がにじんでしまいます。また、薄い紙に印刷したときに用紙が波打ったり丸まったりする場合も、染料インクです。
普通紙だとにじむのは「染料」
染料インクで印刷するときは、用紙を選ぶ必要があります。普通紙に染料インクで印刷するとインクがにじみやすく、写真のアウトラインがぼやけたり細かい文字がつぶれてしまったりするのです。一方インクジェット用紙を用いると、にじむことなくテキストやイラストを鮮明に印刷することができます。
また写真用光沢紙を用いて写真を印刷すると、ラボに出した写真のような光沢のある仕上がりが期待できるのです。なおインクジェット用紙と写真用紙では目指す仕上がり効果が違うので、目的に合わせて適切に選ぶことが大切です。
筆ペンでの「顔料」と「染料」の違いとは?
顔料インクの筆ペンは乾きが速い
筆ペンで文字を書くとき、乾く前にこすれて台無しになってしまうことがありますが、顔料インクを使った筆ペンなら、乾きが速いので安心です。
乾いた後に水がかかってもにじみにくいところもメリットですが、インクに粘りがあるため筆先のすべりが悪く、さらさらとした書き味を楽しむにはやや不向きでしょう。
染料インクの筆ペンは味わいのある仕上がりに
染料インクの筆ペンは、にじみや濃淡など味わいのある仕上がりになります。筆運びがなめらかで書きやすいところもメリットです。水をつけてグラデーションを楽しむこともできるので、絵手紙にも適しています。
その他にも、多色使いの筆文字を書きたいときには、墨色は顔料インクを使い彩色に染料インクを使うとキレイに仕上がるのでおすすめです。
まとめ
「顔料」と「染料」の違いを解説し、プリンタインクでの見分け方や筆ペンの使い分けについても紹介しました。「顔料」と「染料」にはそれぞれ特徴や持ち味があるため、使用目的や出したい効果に合わせて選ぶ必要があります。
プリンタインクの場合は用紙との相性も大切ですが、印刷設定を間違えてしまうと期待どおりの仕上がりにならないので、印刷ボタンを押す前に今一度確認していだだければと思います。