「科学」と「化学」の違いとは?物理・生物での使い分けも解説

「科学」と「化学」の読み方はいずれも「かがく」で、ともに理科系分野でよく見聞きする語句です。そのためか区別はあいまいにされがちですが、使い分けの基準となる意味の違いがあります。この記事では、「科学」と「化学」の違いについて、意味や英語での表現とあわせて物理・生物での使い分けについても解説しています。

「科学」と「化学」の違い・意味とは?

「化学」と「科学」の違いは”理科系以外の分野も含んでいるか否か”

「化学」と「科学」はどちらも”かがく”と読む言葉ですが、”理科系以外の分野も含んでいるか否か”という点で違いがあります。
「化学」は”科学”の一部分で、物質の構造や性質に関する学問のことです。一方「科学」には、広義・狭義で意味があり、理系分野だけにとどまらない学問のことを指します。

「化学」とは”「科学」のなかの一部門・物質に関する学問”

「化学」は”科学”のなかの一部門です。「化学」の対象は物質で、単独の物質が持つ性質・構造だけでなく、複数の物質を反応させてどのような変化が表れるかなどを研究する学問です。
熟語で使われている「化」という文字には、「別のものになる」「影響を及ぼす」のほかに「魔術」というという意味もあり、「化学」が冶金や錬金術から発展した学問であることがうかがえます。

「科学」とは”理科系だけにとどまらない学問”

狭い意味での「科学」は自然科学のことを指しており、科目の理科にあたるものです。

広い意味でいう「科学」とは、観察や実験などで実証された体系的・法則的な知識のことであり、自然科学のほかにも社会科学や人文科学など、多岐にわたる分野の総称として使われている言葉です。

熟語に用いられている「科」という文字には、「分類されたもの」「区分」という意味があります。さまざまな事象を、観察や実験によって細かく分類して体系化したり法則を導き出したりする「科学」の内容を、「科」という文字が表しています。

読み方を区別するために「化学」を”ばけがく”とも呼ぶ

読み方が同じ「科学」と区別するために、「化」の訓読みを用いて「化学」を“ばけがく”と呼ぶこともあります。

「科学」と「化学」の英語表現とは?

「科学」は英語で”science”

「科学」は英語でいうと”science(サイエンス)”で、有名な学術雑誌の名前としても知られている単語です。「science」は”知識”という意味のラテン語「scientia」が語源となっていて、広義では体系化された知識、狭義では自然科学のことを指します。

「science」は日本語と同じ意味ですが、明治期に「science」を日本語で表すために「科学」という言葉が作られたことが、その理由です。

「化学」は英語で”chemistry”

「化学」は英語でいうと “chemistry(ケミストリー)”です。語源はアラビア語の「alchemy(アルケミー)」ですが、日本語では「錬金術」と訳されます。

アラビア語の「al-」は接辞語で、「アルコール」や「アルカリ」もアラビア語由来の言葉です。中世の頃は西洋より中近東のほうが文化的に進歩しており、化学分野においても先進的でした。その名残で、現在もアラビア語由来の化学用語が多くみられます。

「物理」「生物」「自然科学」の位置づけとは?

「物理」「生物」ともに”科学”

広義の「科学」は、大きく以下の3つに区分されます。

  • 自然科学
  • 社会科学
  • 人文科学

狭義の「科学」のことを表す「自然科学」は、自然界の事象や物質について研究する学問です。「物理(学)」「生物(学)」は「化学」とともに「自然科学」のなかの一分野であるため、「科学」に属します。

「科学」は”化学・物理・生物”を包含する学問

「科学」の分野を樹木にたとえると、「科学」から枝分かれした「自然科学」という枝に「化学」「物理」「生物」「地学」という葉っぱがついているというイメージです。

ちなみに「社会科学」の枝には「政治学」「経済学」「法学」「社会学」、「人文科学」の枝には「哲学」「心理学」「言語学」などの葉っぱがついています。

「自然科学」は客観性を重視

「科学」とは、観察や実験などによって実証された体系的・法則的知識のことですが、「自然科学」は「社会科学」や「人文科学」とは大きく異なる特徴があります。それは客観性を重視するという点です。

「自然科学」での観察や実験は再現可能であることが必要で、いつ・どこで・誰が行っても同じでなければならないのです。一方「社会科学」や「人文科学」では、人間の営みや内面が対象となっているため主観性を切り離すことが難しく、再現可能ではありません。

「数学」は”自然科学”と区別される

「自然科学」の研究に「数学」は不可欠です。大学では理学部に数学科が配されており、書籍の分類においても「数学」は「自然科学」に分類されています。しかし、一般的に「数学」は多くの場合「自然科学」にふくまれません。

「数学」が抽象概念である点や自然そのものを対象としていない点、「科学」を研究する際の道具として用いられている点などから、「数学」を「科学」から独立した学問としています。

まとめ

「科学」と「化学」の違いについて、物理・生物での使い分けなどをふくめながら解説しました。技術革新の影響で、これまで「科学」として取り扱われていなかった分野においても、科学的な解析により普遍性が見出されています。

そのため今後、「科学」と呼ばれるものは増えていくと予測されますが、「化学」が「科学」の一分野であることを覚えておけば、両者の使い分けに悩むことはなくなるでしょう。