「無辜」の意味と読み方とは?使い方や類語・対義語も解説!

「無辜(むこ)」に含まれる「辜」という文字は、「罪」「過ち」の意味があります。では「無辜」にはどんな意味があるのでしょうか。この記事では、「無辜」の意味と読み方のほか、類語や対義語に加えて英語表現も紹介しています。

「無辜」とは?

「無辜」の意味は”罪のないことやその人のこと”

「無辜」の意味は、“罪のないことやそのような人のこと”です。「辜」という文字には、訓読みとして「そむ(く)」「つみ」「とが」「はりつけ」などがあり、「罪」「過ち」「はりつけにする」という意味を持っています。

この「辜」の前にないことを表す「無」がついて、罪や過ちがないことを示す「無辜」という熟語ができあがっているのです。

「無辜」の読み方は”むこ”

「無辜」の読み方は”むこ”です。見慣れない漢字ですが読み方を覚えておきましょう。

「無辜」の”無”とは「存在しない」こと

否定を表す漢字としては「無」のほかに「非・不・未」がありますが、次のような使い分けがされています。

  • 無:存在しない
  • 非:本来の姿ではない
  • 不:シンプルな打ち消し
  • 未:今はまだない

「無辜」において「無」が使われていることから、罪そのものが存在しないという意味合いを表していることがわかります。

「無辜」の使い方とは?

「無辜の○○」とは罪のないもののこと

「無辜」は罪のないことやその人のことを指す言葉ですが、「無辜の○○」といった場合、その存在に罪がないことを言い表します。

たとえば「無辜の男性」と言えば、すなわち「罪のない男性」です。その男性には一切の非がないことを表現しています。

「無辜の民」は法的な罪とは無縁

「無辜の民」とは、罪がない人々のことを指します。その罪とは法的責任を問われるようなものだけではありません。

「無辜の民」という言葉が登場する場面は、紛争地帯や災害の被災地域に関する報道です。被災者たちには法的責任を問われるような罪はもとより、道徳に反することをしたわけでもなく、抵抗する力や術さえも持たない人たちです。

つまり罰を受けるいわれがないにもかかわらず、命を奪われたり傷つけられたりした人々を指して、「無辜の民」と呼びます。

「無辜の死」とは犠牲となって死ぬこと

「無辜の死」とは罪なき死という意味で、自らの罪によるのではなく犠牲となって死ぬことを指します。世界一のベストセラーである聖書に、人類の罪を贖うために汚れなき神はひとり子であるキリストを遣わしたと書かれています。

このことから、「無辜の死」を遂げた世界で最も有名な人物としてイエス・キリストの名をあげることができるでしょう。

「無辜」の類語とは?

類語①「不辜」は”無辜”の同義語

「不辜」は「ふこ」と読み、「無辜」とほぼ同じ意味合いです。罪を表す「辜」を「不」で打ち消していることから、罪がないことやものを表します。

しかし、「不」は「無」のように存在しないことを指すのではなく、単なる打ち消しのための接頭語であることから、「無辜」という言葉が持つほどの重みはありません。

類語②「無実」とは罪を犯していないこと

「無実」には実質や誠意がないという意味のほか、「無辜」と同様に罪を犯していないという意味があります。「無辜」との違いは、疑いの有無で、「無実」においては、罪を犯していないにもかかわらず罪を問われているという前提があります。

一度罪があるとされたうえで実は罪がなかったというときに、「無実」がつかわれるのですが、一方の「無辜」の場合には、罪が問われるようなことはありません。

類語③「無罪」とは罪に問われないこと

「無罪」とは、刑事裁判において被告人の行為が罪に問われないことや、犯罪を証明できないことやその判決を表す言葉です。「無罪放免」という熟語からもわかるように、いったん罪を問われたけれど結果的に罪がないという流れがある点で、「無実」と近い意味合いがあります。

「無罪」と「無実」は、はじめから罪が存在しない「無辜」とはニュアンスが異なっていますが、罪がないということを指していることから類語としてあげることができる言葉です。

類語④「潔白」とは清らかなさま

「潔白」とは、心や行いに後ろ暗いところがなく清らかなことや様子を表す言葉です。けがれがなく清らかなことを指す「潔」と、は明らかなことを指す「白」というふたつの文字で構成されています。

隠しだてするものがない清らかさを示す「潔白」という言葉は罪がないことを表すため、「無辜」と似た意味合いがあります。

「無辜」の対義語とは?

「有罪」は”無辜”の反対の意味の言葉

「無辜」の対義語として対応する言葉はありませんが、意味のうえで反対となるものとしては「有罪」があげられます。

「有罪」は罪があることや罪があると認められたことを指す言葉です。刑事裁判で「有罪」となれば被告人は罪を犯した者となりますが、実際には被告人が罪を犯していない場合もあります。

つまり「有罪」での罪は、裁判を行う人間が認めて成立するものですが、「無辜」での罪はそもそも存在しないもので、誰からも問われるいわれはないものです。

「無辜」の英語表現とは?

「無辜」は英語で”innocent”

「無辜」に対応する英単語として、“innocent”をあげることができます。「有害な」という意味の「nocent」に否定を表す接頭辞の「in-」がついてできた言葉で、「無邪気な」「罪を犯していない」という意味をもっており、「無辜」の英訳として使える単語です。

まとめ

「無辜」の意味と読み方をはじめ、類語・対義語や英語表現などを紹介しました。「無辜」なる人々の多くは非力で、紛争や災害に立ち向かうこともできないまま、犠牲になっています。一般市民である私達も彼らと同様に非力な存在ではありますが、見て見ぬ振りをすることはしたくないものです。