「徒花」という言葉には、何となくつかみどころがないニュアンスが漂っていますが、具体的にどんな花を指しているのだろうという疑問も浮かびます。この記事では、「徒花」の読み方と意味のほか、使い方がわかる例文や類語・英語表現なども解説しているので、「徒花」についての疑問を解消するために役立ててください。
「徒花」とは?
「徒花」の意味は”見かけは良いけれど実質を伴わない・努力が無駄に終わる”
「徒花」の意味は、“見かけは良いけれど実質を伴わないもののこと・努力や苦労が実らずに無駄に終わること”です。なお、「むだばな」と読む場合は、特に”雄花のこと”を指しています。
「徒花」の元々の意味は”実を結ばない花のこと”
「徒花」の元々の意味は、“実を結ばずに散る花のこと”です。被子植物の花は人間からみれば鑑賞の対象ですが、植物にとっては繁殖のためのといえます実を結ぶことができない花は無駄でしかありません。
「徒花」には季節外れの花という意味も
「徒花」とは、“季節はずれに咲く花のこと”を指す場合もあります。花は、花芽(かが・はなめ)という小さな芽が発達したものですが、花が咲くよりずっと前にできています。
基本的に適切な時期になるまで花芽は花を咲かせませんが、ときどき本来の時期から外れた時期に花を咲かせることがあり、これを「徒花」と呼ぶのです。
「徒花」の読み方は”あだばな”
「徒花」の読み方は、“あだばな”です。他にも「いたずらばな」や「むだばな」と読むこともあります。
「徒」という漢字には、「無駄・無益」という日本固有の意味があり、この意味で「徒」を用いるときの読み方としては「あだ・いたずら・ただ・むだ」があります。
「あだ」と読む漢字としてはほかに「仇」がありますが、この場合の意味は「かたき・敵」となるため、「あだうち」は「徒打」ではなく「仇討」が正解です。
「徒花」の使い方や例文とは?
「徒花」は”はかない恋”をたとえる表現としてよく用いられる
「徒花」は、はかない恋をたとえる表現としてよく用いられています。なお、「いたずら」には「徒」のほかに「悪戯」という表記もありますが、悪ふざけという意味合いになるため注意が必要です。
「徒花(あだばな・いたずらばな)」は、”桜の花”を指しており、「いたずら」と読む場合には”むなしい”という意味合いも加わります。桜の花を「徒花」と言い表すことには、咲いて間もなくはかなく散ってしまう桜の花に無常を感じる日本人の感性が投影されているようです。
「徒花」を使った例文
「徒花」を使った例文をご紹介しましょう。
- 80年代後半に登場した土地成金たちの多くは、バブルの徒花で終わったようだ。
- 徒花を散らすだけのような彼のやり方に嫌気が差し、部下たちは離れていってしまった。
- せっかくの努力が徒花にならないように、まずは足元からしっかりと固めていこう。
「徒花」の類語とは?
類語①「虚飾」は上辺だけで中身がないこと
「虚飾」は、上辺だけで中身がないことを表した言葉です。「虚」という文字には「うつろ」「むなしい」という意味があり、中身がないことを指しています。
きらびやかに飾り立ててはいるものの、中はうつろであることを表現した熟語が「虚飾」で、「徒花」の類語といえる言葉です。
類語②「見掛け倒し」は外見に中身が伴わないこと
「見掛け倒し」とは、外見だけが立派で中身が伴っていないことを指す言葉で、「倒し」は「くつがえす」という意味合いで用いられます。
したがって、「見掛け倒し」は見掛けのイメージをくつがえしていることを表しますが、良い意味で見掛けを裏切るような場合には使われず、もっぱら外見より中身が劣っているときだけに使われる言葉です。同じ意味合いの四字熟語として「羊頭狗肉」や「有名無実」があります。
類語③「水の泡」は徒労に終わること
「水の泡」は、努力や苦労が実ることなく無駄に終わってしまうことを示した言葉です。「水の泡」はすぐに壊れてしまうことと中身が空洞であることから、移ろいやすくはかないものや後に何も残らないもののたとえとして用いられます。
「水の泡」には実りがないことを表す「徒花」に似た意味合いがあることから、類語として使うことができる言葉です。
「徒花」の英語表現とは?
徒花の英語表現①「titular」の意味は”名ばかり”
「titular」の意味は”名ばかり”であるため、「徒花」の英語表現といえます。「title」と同じ、称号や題名という意味の「titulus」が語源で、「〜のような」という意味を加える接尾辞「-ar」がついてできた単語です。
名前だけのリーダーのことを「titular leader」といいますが、実権を持たない名前だけのお飾りという意味合いがうかがえます。
徒花の英語表現②「nominal」の意味は”有名無実”
有名無実という意味合いの「徒花」に対応する英語表現として、「名目上の」の英訳である「nominal」があげられます。「nominal」は、名前を表す「nomen」に名詞の後について形容詞をつくる接尾辞「-al」を伴った単語で、名前だけで実質を伴わないものを指すものです。
「名目賃金」の英訳「nominal wages」からも、実質が伴っていないという「nominal」のニュアンスが感じ取れます。
まとめ
「徒花」の読み方と意味を紹介し、使い方や類語・英語表現などもあわせて解説しました。「徒」という文字が持っている日本的な意味と比喩的な表現が理解できれば、「徒花」を自在に使いこなすことができるようになります。ただし言葉自体にネガティブなニュアンスがあるため、他人に対して使うときには配慮が必要でしょう。