「思慮深い」という言葉を聞くと、思想家や哲学者の姿が思い浮かぶかもしれません。忙しい現代社会にはそぐわないのか、クイックレスポンスがもてはやされている昨今です。しかし、思慮深さを仕事に役立てることはできます。この記事では、「思慮深い」の意味と思慮深い人の特徴のほか、類語と対義語も紹介しています。
「思慮深い」の意味とは?
「思慮深い」の意味は充分に考えるということ
「思慮深い」の意味は、“深く考え抜き慎重に物事を判断することやその様子のこと”です。「思慮」という熟語に使われている「慮」という文字には、よくよく考えるという意味があります。
ここに「思」が加わることで、いろいろと思いをめぐらせた考えということを指しており、さらに「深い」がついてできた「思慮深い」 は、深く考え抜き慎重に物事を判断することを表します。
「思慮深い」に企てるという意味はない
「慮」という文字には「企てる」という意味があることや、用意周到に計画を立てるという意味の「深慮遠謀(しんりょえんぼう)」という熟語があるためでしょうか。
「思慮深い」という言葉に対して、悪代官がよからぬ企てをしているようなイメージを持たれることがありますが、「思慮深い」には特にネガティブな意味合いは含まれていません。
「思慮深い」に思いやりという意味はない
「思慮深い」に深く思いやるという意味はありません。 「思い」の「思」という文字と、「配慮」や「遠慮」という気配りを表す熟語に用いられている「慮」という文字が使われていますが、「思慮深い」という言葉には深く思いやるという意味はないのです。
思慮深い人の特徴とは?
思慮深い人は慎重
思慮深い人は慎重です。思いつきやひらめきではなく、さまざまな情報を集めたうえで精密に分析して判断するため、どうしても結果が出るまでに時間が掛かってしまいます。
そのため、思慮深い人は慎重になりがちなのです。なお年々時代の流れが速まっていることから、時間を掛けすぎた判断は時代に合わなくなってしまうというリスクもあるという点には注意が必要です。
思慮深い人はものに動じない
思慮深い人が下す判断は多くのものから選び抜かれたもので、その陰には数多の没案があるのです。なんらかのトラブルで判断を変える必要が生じたようなとき、もし案がひとつしかなければ一から立て直さなければならなくなります。
しかし次善の策がいくつかあれば、トラブルに際しても動じることなくすぐに次の一手を打つことができるのです。思慮深い人がチームの責任者であれば、メンバーの動揺を鎮めて速やかに態勢を立て直すことができるでしょう。
思慮深い人は失敗が少ない
思慮深い人の特徴として、失敗が少ないこともあげられます。先の「ものに動じない」でも述べましたが、思慮深い人の判断は数多くの検証に基づいて下されているので、大きな失敗が想定されるような案は廃棄されているからです。
どうしても失敗を避けきれない場合でも、ダメージを最小化するための案も考えられているため、失敗して計画が頓挫してしまうような事態に至ることは少なくなります。
思慮深い人は説得力がある
思慮深い人の意見には、説得力があります。思慮深い人が下す判断には、さまざまな事例やデータによる裏打ちがなされています。一方、思いつきやひらめきによる案にはそのような裏打ちがないため、説得力に欠けることは否めません。
時代の流れが速くなるにつれ、じっくり計画を練るよりできるだけ早くトライ&エラーをスタートさせることが勧められるようになっています。 しかし思慮深い人は、脳内でバーチャルなトライ&エラーを繰り返しているともいえるのです。
「思慮深い」の類語とは?
類語①「熟考」とは充分に思いをめぐらすこと
「思慮深い」の類語として「熟考」があげられます。「熟考」は”じゅっこう”と読み、充分に思いをめぐらせることを表した言葉です。
熟語に用いられている「熟」という文字は、実った果物などが充分においしい状態になるという意味があります。ここから「熟」が完全な状態であることを指すようになり、「考」とあわさって完全な状態になるまで充分に考えるという意味の言葉になりました。
類語②「潜心」とは心を落ち着かせて考えること
「潜心」は”せんしん”と読む「思慮深い」の類語です。「潜」という文字には「潜在意識」という言葉からもわかるように奥深いところという意味があり、「心」とあわさることで心静かに深く集中させて考えるという意味の「潜心」となっています。
類語③「沈思」とは静かに深く思いをめぐらせること
「沈思」は”ちんし”と読み、静かに深く考え込むことを指しています。「沈」という文字には、「ものしずか・落ち着いている」という意味があり、「思」という文字がつくことで静かに落ち着いて思いをめぐらせるということを表す「沈思」という言葉になっています。
「思慮深い」の対義語とは?
「思慮深い」とは反対の意味を持つ”浅慮・短慮”
「浅慮」は”せんりょ”と読み、「思慮深い」と反対の意味である考えが浅いことを表した言葉です。「浅」は水かさが少ないことを指していますが、知識や考えが乏しいという意味もあります。
なお、「浅慮」と同様に考えが足りないという意味を持つ言葉として「短慮」がありますが、気が短いという意味もあわせ持っているという点が「浅慮」とは異なります。
まとめ
即断即決を求められたとき、「思慮深い」タイプの人は不利になるように思えるかもしれません。しかし、アイデアは突然天から降ってくるものではなく、日頃からさまざまな事案について思慮深さを発揮しているからこそ思い浮かぶものなのです。
何かテーマを決めてじっくりと集中して考える訓練を普段からしておけば、イザというときにきっと役に立つでしょう。