「恐れ入ります」の意味とは?電話・メールでの使い方や言い換えも

「恐れ入ります」は、ビジネスシーンでよく見聞きされる敬語です。しかし、時折誤った用法も見受けられるため、正しい使い方を確認しておくことが大切です。

この記事では、「恐れ入ります」の意味のほか、「ありがとうございます」との違いや電話・メールでの使い方、「恐縮です」など言い替えに使うことができる類語も紹介しています。

「恐れ入ります」とは?

「恐れ入ります」の意味は”伏しておし戴くこと”

「恐れ入ります」の意味は、“伏しておし戴くこと”です。もともと「畏れ入ります」と書いていました。

「畏れ」は”畏怖”という熟語からもわかるように、相手の尊さに対してかしこまるという意味合いがある言葉で、「恐れ入ります」を「恐怖」と同義に受け取ると、正しい言葉の意味が理解しづらくなります。

つまり「恐れ入ります」の基本的な意味は、自分を低く置き相手の行為を伏しておし戴くことです。ここから、身に余る感謝や畏れ多くて申し訳ないという気持ちを表すようになりました。

「ありがとうございます」よりもかしこまった丁寧な言い回し

「恐れ入ります」には感謝の気持ちを表す意味があり、お世話になった相手に対して「ご厚情を賜り、誠に恐れ入ります」などというように使うことができます。

単に「ありがとうございます」というより、そこまでしていただいて申し訳ございませんという、かしこまっておし戴くようなニュアンスを含んだ丁寧な言い回しです。

加えて「恐れ入ります」は謙譲の意味も含んでいるため、目上の方やお客様からお褒めの言葉をいただいたときにも使うことができます。

「恐れ入ります」は相手への配慮を表す言葉でもある

「恐れ入ります」は、相手に対して申し訳ないという配慮を表すこともできる言葉です。相手に何かしていただく際に、「恐れ入りますが」という形で前置きして使います。

たとえば「恐れ入りますが、こちらをご覧いただけますか」というように、言いたいことの前に置くことで相手に不躾なイメージを与えずにお願いすることができるのです。

また、「恐れ入りますが、御用件をお伺いしてよろしいでしょうか」というように、相手に何かを尋ねるときにも「恐れ入りますが」と前置きすることで、丁寧でやわらかい言い回しにすることができます。

「恐れ入ります」の電話やメールでの使い方とは?

電話では「恐れ入ります」の連発に注意

「恐れ入ります」は、さまざまなケースで前置きとして使えるため、常套句になってしまう危険性があります。相手が何か言うたびに「恐れ入ります」と返すのではなく、「ありがとうございます」や「かしこまりました」など、他の言葉を織り交ぜながら話を進めるように心掛けましょう。

メールで重宝する「お忙しいところ恐れ入りますが」

ビジネスメールでは、「お忙しいところ恐れ入りますが」という言い回しがよく登場します。相手に何らかの労を取っていただく場合には、「お忙しいところ恐れ入りますが」と前置きしてから用件を続けると、相手への気遣いとこちらの謙虚な気持ちを示すことができます。

なお「お忙しいところ恐れ入りますが」は一種の社交辞令で、相手が忙しいかどうかに関係なく使うことができる言葉です。

申し訳ないという意味では、自分の言動には使えない

申し訳ないという意味で「恐れ入ります」を使う場合、自分の言動について述べるときには使えません。たとえば電話を保留するようなケースでは、「お待たせいたしまして恐れ入ります」は、自分が相手を待たせているので誤りとなり、「お待たせいたしまして申し訳ありません」が正解です。

「恐れ入ります」を使うなら、「恐れ入りますが、お待ちいただいてよろしいでしょうか」とするべきで、この用法なら相手に待ってもらうようお願いしているので正解となります。

「恐れ入ります」を使った例文

「恐れ入ります」を使った例文をご紹介しましょう。

  • お忙しいところ恐れ入りますが、書類をご確認いただいてもよろしいでしょうか。
  • 先生には日頃からご指南いただき、まことに恐れ入ります。

「恐れ入ります」の類語・言い換えとは?

「恐れ入ります」の類語①恐縮です

「恐縮です」は、”恐れ入ります”の表現を固くしたものです。「恐縮」は相手に申し訳なく思うことを指す言葉ですが、話し言葉でひんぱんに使うと相手に慇懃過ぎる印象を与えてしまうことがあります。

なお、ときおり「恐縮に存じます」という言い回しを見聞きしますが、これは誤りです。「存じます」は”~と思います”という意味があるため、申し訳なく思うということを指す「恐縮」に続けると意味が重複してしまうからです。

「恐れ入ります」の類語②痛み入ります

「痛み入ります」は”恐れ入ります”の類語として使うことができる敬語です。「痛」という文字には、「痛快」という熟語からもわかるように、「甚だしい・非常に」という意味もあります。

つまり「痛み入ります」には”痛い”という意味はなく、相手の好意や親切に対して大きな感謝や申し訳なさを感じていることを表しているのです。なお、「痛み入ります」を「恐れ入りますが」のように前置きとして使うことはないので、注意してください。

「恐れ入ります」の関連語とは?

「恐れ入りました」は相手をたたえる意味合いの言葉

「恐れ入ります」が完了形の「恐れ入りました」になると、相手の技量や実力などをたたえるという意味に変わります。

たとえば「〇〇様のご慧眼に改めて恐れ入りました」といえば、自分とはとても比較できないほど、相手の眼力が優れていることをほめたたえる気持ちを伝えることができます。

まとめ

「恐れ入ります」の意味のほか、電話やメールでの使い方と類語もあわせて紹介しました。「恐れ入ります」は使いやす言葉であるため、安易に多用すると慇懃無礼な印象を相手に与えてしまうことがあります。

何でも「恐れ入ります」ですませてしまうのではなく、違った言い回しで表現できるようにしておくことも、社会人として必要な素養でしょう。