「安堵」の意味とは?「安心」との違いや使い方・類語を例文で解説

「安堵」は正確に書くことが難しい言葉ですが、「堵」という文字から言葉の意味合いを連想できないことが一因と思われます。この記事では、「安堵」の意味と読み方のほか、使い方と類義語・対義語も紹介しており、熟語の用法や漢字の由来なども理解できる内容となっています。

「安堵」の意味とは?

「安堵(あんど)」とはほっとすること

「安堵」は「あんど」と読み、気掛かりなことがなくなって安心することを表した言葉です。熟語を形成している「安」という文字には「やすらか」「やすんじる」という意味があり、心穏やかなさまを指しています。もうひとつの文字である「堵」は「かきね」「すまい」を表したものです。

「安堵」本来の意味は安住の場所

「安堵」は「堵の中に安んずる」ということを指し、垣根のなかで心穏やかに暮らすことやその場所のことです。このことから、「安堵」という言葉が気掛かりなことがなく安心した状態のことを表すようになりました。

元々は先祖伝来の土地を守ることに大きな意味がありましたが、近代以降は意味合いが精神面の安らかさに重きを置くように変わっていったのです。

「安堵」には土地の権利が公認されるという意味も

「安堵」のもうひとつ別の意味は、日本の封建時代、土地の所有権や知行権を幕府や領主から公認されることです。

鎌倉時代から室町時代のはじめのころ、それまで先祖から受け継いだ領地をそれぞれの武士が所有していた形態から、忠誠を誓った幕府や領主から所有権を認めてもらう形態に変化していきました。封建制度における主従関係の維持に、「安堵」が果たした役割は大きなものだったのです。

「安堵」と「不安」の違い

「安心」とは不安がない状態

「安心」は、気掛かりなことがなくなったという意味での「安堵」の類義語です。「安堵」の「堵」という文字が常用漢字表の表外字であることから、言い換えとして「安心」をあてているケースが多くみられます。

しかし、「安堵」には不安がないことを指す意味はありません。「安心」を用いた言い回しのすべてを「安堵」に置き換えることはできないため、言い換えには注意しましょう。

「安堵」の使い方と例文

安心という意味での使い方が一般的

3つの意味を持つ「安堵」ですが、現在では心穏やかなことを指すことが一般的です。以下に定型的な用法と例文を紹介しましょう。

  • 安堵のため息をつく
    放火犯が逮捕されたというニュースに、思わず安堵のため息をついた。
  • 安堵の息を漏らす
    祖父の手術が無事終了し、待機していた家族はみな安堵の息を漏らした。
  • 安堵の声があがる
    勝訴の知らせを受け、原告たちからは安堵の声があがった。
  • 安堵の胸をなでおろす
    行方不明になった児童が発見され、関係者たちは安堵の胸をなでおろした
  • 安堵の表情が浮かぶ
    不発弾の処理が無事完了し、地域住民に安堵の表情が浮かんだ。

「安堵」の類語

「人心地」はほっとした気持ち

「人心地」は「ひとごこち」と読みます。緊張が解けてほっとした気持ちのことを表した言葉で、「安堵」の類義語といえるものです。

「やっと人心地がついた」「恐ろしくて人心地もなかった」というように使います。なお、「人心地」には人としての平常な心という意味もあり、この用法は「安堵」とは別のものです。

「安堵」の対義語

「危惧」とはあやぶみ恐れること

「危惧」は「きぐ」と読み、良くない結果になりはしないかと心配し恐れるという意味があります。ともに「恐れる」という意味を持つ文字である「危」と「惧」を重ねて、意味を強調したものです。

この先に起こることに対して不安を感じたり、良くない結果になるのではと恐れたりしている状態のとき、「そのトンネルは、経年劣化による崩落が危惧されている」というように用います。

「懸念」とは気掛かりで心配なこと

「懸念」は「けねん」と読み、これからのことが気掛かりで心配や不安が心から離れないことを表した語句です。「懸」はぶらさがることを、「念」は思いのことを表した漢字で、両方があわさった「懸念」は、思いが胸から離れない状態を表しています。

「中東問題による原油価格の高騰が懸念される」というように用いますが、「懸念材料」というように、気掛かりな事柄そのもののことを指す場合にも使うことができる言葉です。

「憂慮」は非常に心配すること

「憂慮」は「ゆうりょ」と読みます。とても心配して思いを巡らせることを指した言葉で、「憂」は心配すること、「慮」はあれこれと考えや思いを巡らすことを表した文字です。

「少子化の加速は、憂慮すべき問題だ」というように、「憂慮」は危機感を持つほどに大きな心配事に対して用いられます。

まとめ

「安堵」の意味と読み方のほか、使い方と類義語・対義語などを例文もふくめて紹介しました。心配事が解消されるのはよいことですが、はじめから気掛かりなことがないに越したことはありません。危惧されるようなことが起きそうな問題は早めに対処し、大きくしないことが必要です。