「社交辞令」は、多くの社会人にとって避けて通れないものです。嘘っぽくて嫌い・めんどくさいなど否定的な声もよく聞かれますが、知っておくと人間関係の潤滑油として役立てることができます。この記事では「社交辞令」の意味のほか、挨拶としての使い方や「お世辞」との違いについても解説しています。
「社交辞令」とは?
「社交辞令」の意味は”人付き合いで用いる決まり文句”
「社交辞令」の意味は、“スムーズな人付き合いを行うために使われる決まり文句”です。「外交辞令」とも呼ばれ、ほめ言葉が多く、ビジネスから友達同士などにおいても用いられます。
「辞令」という言葉は、官職や役職の任免で受け渡される文書を指すことが一般的ですが、”応対の言葉”という意味もあり、「社交辞令」は人との関りで交わされる言葉のことを表したものです。
相手と良い関係を作るために「社交辞令」を用いますが、行き過ぎるとかえって不信感や不快感を持たれてしまうこともありえます。
関係の維持に役立つ「社交辞令」
何かを勧められたり誘われたりした場合、相手と良好な関係を続けたいのであれば快く応じることが得策です。
しかし、都合が悪かったり気乗りしなかったりなどの理由で断るときに、「またの機会にぜひお願いします」といった一言を付け加えるケースがよくみられます。
この一言で「残念ながら今回は見送りますが、本当はお受けしたかったのです」「気を悪くなさらずに、また声を掛けてください」といったことを相手に伝えることができるのです。
このように「社交辞令」は、今後もお付き合いしたい相手との関係を維持するために大変役立ちます。
挨拶はもともと「社交辞令」
挨拶と聞いてまず思い浮かぶのは、「おはようございます」や「おかえりなさい」などの言葉ではないでしょうか。
挨拶とは、人と会ったときや別れ際などに取り交わす儀礼的な動作や言葉とされているもの。つまり挨拶はもともと儀礼的・定型的なものであるため、「社交辞令」の一種といえます。
「社交辞令」の挨拶での使い方・例文とは?
「社交辞令」はマナーの一種
「社交辞令」はマナーに近いもので、人間関係を良好に保ちたいという気持ちの表れです。
したがって、交わされる言葉の意味を深読みしたり、相手の本意を探ったりする必要はなく、定型通りの受け答えを行っておけば問題ありません。
挨拶での「社交辞令」の例文
社交辞令を挨拶で使う場合に知っておくと便利な、”相手に会う際”と”別れ際”に使える社交辞令をそれぞれご紹介します。
・ぜひご一緒させてください
・大変勉強になりました
・またおいでください
・いつでもお立ち寄りください
おすすめはフレーズで覚えて使うこと
挨拶として使う「社交辞令」には、TPOに対応した定型的な言い回しが数多くあります。いわば決め台詞のようなもので、フレーズをそのまま覚えて使えば問題ありません。
たとえばお店に行くと、「毎度ありがとうございます」と声を掛けられることがありますが、ほとんとの人は「初めて来たんだけど」などとは思わないでしょう。難しく考えがちな「社交辞令」ですが、このような挨拶も「社交辞令」なのです。
「社交辞令」を真に受けてはいけない
「社交辞令」には定型的なパターンがあります。例をあげると、かつての京都でよく聞かれた「ぶぶ漬けでもどうどす(お茶漬けでもいかがですか)」は、「そろそろお引き取りいただきたい」という意味です。言葉を真に受けてしまうと「困った人」になってしまうので、早々に退散しましょう。
また「いつでもいらしてください」といわれても、アポなしで訪問してはいけません。「社交辞令」はめんどくさいようですが、「型」を知ってさえいれば悩まずにすむともいえます。
「社交辞令」と「お世辞」との違いとは?
「お世辞」とはご機嫌取りのためのほめ言葉
「お世辞」は「世辞」に丁寧さを表す接頭辞の「お-」を付けたものです。”相手を機嫌よくさせるための過度な褒め言葉”のことで、「世」は世の中のことを、「辞」は言葉のことを指しています。
「世辞」の由来は「世事」ですが、世間のことがらということと相手に取り入るための言葉という意味があり、後者の意味合いが「世辞」に転じていったようです。
「お世辞」にも理はある
「社交辞令」も「お世辞」も、本音を語るものではないという点で似ていますが、「お世辞」は、言っている人自身の利益や保身を目的とすることが一般的です。よく「歯が浮くようなお世辞」といいますが、返答に困るようなほめ言葉が使わるケースも見受けられます。
しかし、「お世辞」は一概に悪いものと決めつけられるものではなく、ビジネスシーンやフォーマルな場所で大人のたしなみとして必要な場合もあります。
「社交辞令」の類語とは?
「社交辞令」の類語は”巧言令色”
「社交辞令」と似た意味合いの言葉としては、“巧言令色(こうげんれいしょく)”があげられます。「巧言」は巧みに飾り立てた言葉、「令色」は取りつくろった顔という意味で、他人に媚びへつらう様子を表しています。
出典は『論語』の「巧言令色鮮(すく)なし仁」で、口先だけの言葉やうわべだけの愛想良さを振りまく者には誠実な人間が少なく、人として大切にすべき徳である仁の心は持ち合わせていないものだという意味です。
人間関係の潤滑油として役立つ「社交辞令」ですが、行き過ぎてしまえば「巧言令色」と受け取られかねません。
まとめ
「社交辞令」の意味のほか、挨拶での使い方や「お世辞」との違いについて解説しました。正直さは美徳とされていますが、相手が気を悪くするようなまで正直に伝えるのはいかがなものでしょうか。
人間関係の潤滑油として役立つ「社交辞令」の使い方を身に着けて、無用な軋轢を避けていただければと思います。
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