「故事成語」の意味とは?ことわざや四字熟語との違いや覚え方も

「故事成語」は日常よく見聞きするもので、通常の熟語や言い回しとして無意識に使っていることもよくあります。しかし、ことわざや四字熟語と混同していることも多くみられ、正しく覚えることは意外と難しいものです。この記事では「故事成語」の意味と使い方のほか、ことわざや四字熟語との違いや覚え方も紹介しています。

「故事成語」の意味とは?

「故事成語」とは中国由来の教訓

「故事成語」は、中国の古典に記された内容が元になってできた教訓の言葉という意味です。「昔あった事柄」あるいは「昔から伝わるいわれ」を指す「故事」と、「古くから慣用的に用いられる言葉」という意味の「成語」があわさって四字熟語となっています。

「故事成語」は現在も使われている言葉

「故事成語」の由来は大昔に書かれた中国の古典ですが、現在でも座右の銘やスピーチなどをはじめ日常生活において広く用いられています。

「故事成語」の内容は古くなるどころか現在でも充分に通用しており、時代を超える普遍性を持っているといえるものなのです。

「故事成語」の使い方

一般的になじみが薄いものは避けたほうが無難

「故事成語」の多くは、日常的によく見聞きするものですが反面、手垢が付いた感もあります。そのためスピーチを頼まれたときなど気負ってしまい、ちょっと珍しい「故事成語」を試みたくなるかもしれません。

しかし、聞く人に伝わらなければスピーチを行う意味がないため、誰もが知っているものを用いたほうが無難でしょう。

「故事成語」を目上の方に使うのは注意が必要

「故事成語」には、深い意味を持ったものもあります。たとえば『晋書』が由来の「竹馬の友」は「幼馴染み」という意味でよく知られていますが、競い合うライバルという意味もあるなど、生半可な知識で用いると誤解を招くことさえあるのです。

このように「故事成語」を目上の方に対して使う場合は失礼にあたることも考えられるので、注意が必要です。

「故事成語」の例

面白い「故事成語」

「石に漱ぎ(くちすすぎ)流れに枕す」

負け惜しみが強いことを表したものです。「石に枕し、流れに漱ぐ」を言い間違った人が、石で漱いで歯を磨き、流れに枕して耳を洗うのだとこじつけて自分の間違いを認めなかったことが書かれた『晋書』が出典です。負けず嫌いな性格だった夏目漱石の、ペンネームの由来でもあります。

「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」

失敗に懲りて必要以上に用心することを表したものです。熱い羹を食べてヤケドをしたことに懲りた人が、冷たい膾を食べるときにも口で吹いて冷ましてから食べるようになったことが書かれた『楚辞』が出典です。

四字熟語の「故事成語」

「画竜点睛(がりょうてんせい)」

物事の最も重要なところのことです。瞳を描かないでおいた四頭の竜の絵のうちの二頭に瞳を描きいれると、たちまち天に昇っていってしまったことが書かれた『歴代名画記』が出典です。

「画竜点睛を欠く」として、詰めが甘いことを表す用例がよくみられます。なお、瞳を意味する「睛」を「晴」と書き誤らないように注意してください。

「切磋琢磨(せっさたくま)」

学問や人徳を磨き上げることや、互いに励まし合い競争し合って向上することを意味していますが、本来は、素質のあるものが修養を重ねて偉大な君子になることを指していました。

『詩経』が出典で、「切磋」は骨や玉などを刻み磨くことを、「琢磨」は玉や石などを削って磨くことを表す言葉です。

「故事成語」と「ことわざ」との違い

「ことわざ」とは教訓や風刺を含んだ言葉

「故事成語」は教訓を表した四字熟語ですが、「ことわざ」の内容は教訓だけでなく皮肉や風刺なども含んでいます。

たとえば「出る杭は打たれる」のように比喩的な表現で人を戒めたものや、「長いものには巻かれろ」のような処世術を教えるものなど、「ことわざ」は大変幅広い意味合いを持つものです。

「ことわざ」は古くからの言い伝え

「故事成語」には出典となる書籍が存在します。しかし「ことわざ」の多くは、人々の暮らしから発生したものが言い伝えによって現在まで残ったものです。「稲光は豊年の兆し」や農業などに関する知識を伝えるものも多く、技術の継承にも役立っていました。

ほかにも「戌(いぬ)の日に岩田帯」や「急がば回れ」のように、知っていると役に立つ教えを含んだ「ことわざ」も多く残っています。

「故事成語」と「四字熟語」との違い

「四字熟語」とは漢字四文字から成る熟語

熟語とは二文字以上の漢字が結合して一つの意味を表すものです。そのなかで四文字の漢字で構成された熟語のことを「四字熟語」と呼ぶことができますが、一般的には慣用句的に用いられるものを指しています。

たとえば漢字四文字から成っていても、「本日開店」は「四字熟語」として認識されにくいものといえるのです。

「故事成語」には「四字熟語」もある

「四字熟語」のなかには、『列子』を由来とする「朝三暮四」や、『孫子』に見られる「呉越同舟」のような「故事成語」もあります。

しかし、「諸行無常」「他力本願」のような仏教が由来のものや、「一石二鳥」「三位一体」のような西欧由来のものまであり、この点において中国の古典を由来とする「故事成語」とは異なっています。

加えて、「矛盾」「圧巻」のような熟語や「雨垂れ石を穿つ」「泣いて馬謖を斬る」のような文の形を取ったものもあるのです。

つまり「故事成語」の条件は、中国の古典に由来する教訓的な言葉というもので、熟語の形を取っていないものもたくさんあるのです。

「故事成語」の覚え方

「故事成語」の由来を押さえる

「故事成語」は、中国の古典が由来です。たとえば孤立無援の状態を指す「四面楚歌」は、中国の代表的古典である司馬遷の『史記』が由来となっています。

漢軍に包囲された項羽が夜更けに楚の歌を聞き、自らの敗北を悟り絶望したというストーリーを押さえておけば、すぐに覚えられます。このように由来となったストーリーを知ることは、「故事成語」を覚える上で有効なものです。

「漢字」の意味を知っておく

「故事成語」の覚え方として、使われている漢字の意味を知っておくこともおすすめです。たとえば「璧」を「壁」と書き誤りがちな「完璧」ですが、「璧」が「かべ」でなく中央に穴の開いた平らな「宝玉」を指すものであることを知っておけば、書き間違えることはなくなります。

まとめ

「故事成語」の意味と使い方のほか、ことわざや四字熟語との違いや覚え方も紹介しました。由来となる中国の古典は今から数千年以上も前に著されたものです。

中国古典が現代においても通用する普遍性を持っているのか、それとも時代が変わっても人間はさほど変わらないものなのか、いずれにしても「故事成語」は知っておいて損のないものと言えそうです。