「禁固刑」と聞いて一般の人が思い浮かべるのは、刑務所に入れられることでしょう。しかし、どんな罪を犯すと「禁固刑」になり、執行猶予がつくのはどのようなケースかについてはよく知られていません。この記事では、「禁固刑」の意味と執行猶予との関係に加え、刑務所の中では何をするのかなどについても紹介しています。
「禁固刑」の意味とは?
「禁固刑」の意味は刑務所に入れられる刑のこと
「禁固刑」とは刑法で定められている刑罰のひとつで、刑務所に拘置する刑を指すものです。「禁固」は「禁錮」とも書き、広義では室内にとじこめて外出させないことを表しますが、刑罰の「禁固刑」を意味することが一般的です。
なお、「禁固」と似ているものとして「勾留(こうりゅう)」があります。「勾留」とは逮捕された被疑者や被告人の逃亡や証拠隠蔽を防ぐ目的で刑務所などに身柄を拘束することを指すものです。つまり「勾留」それ自体は、刑罰ではないのです。
一方「勾留」と同じ読みをする「拘留」は短期間(1日以上30日未満)刑務所などに拘置される刑罰で、「禁固」の短期間版ともいえるものです。
「禁固刑」では労働の義務は科せられない
「禁固刑」では身柄を拘束されて刑務所に閉じ込められますが、「懲役刑」とは異なり刑務作業の義務はありません。つまり「禁固刑」は通常「懲役刑」より軽い刑罰とされるもので、主に政治犯や過失犯に適用されています。
しかし「禁固刑」でも本人が希望すれば労働に従事することができ、所定の賃金(作業報奨金)を受け取ることも可能です。
「禁固刑」の刑期には無限の場合も
「禁固刑」は比較的軽い罪のように受け取られがちです。しかし有期での拘置される期間は、一般的には最長20年(刑法13条1項)、他にも犯罪がある場合に加重されると30年(刑法14条2項)までとなっています。
加えて「禁固刑」には「無期」もあります。「終身刑」のように、一生刑務所から出られないことが確定したものではないものの、仮釈放が行われるのは通常収容後30年程度が経過してからです。また、仮釈放されても刑期自体は終身にわたるものであり、一生保護観察下に置かれます。
「禁固刑」と執行猶予の関係
執行猶予とは刑の執行を先送りすること
執行猶予とは有罪となった刑の執行を一時期間先送りすることで、猶予期間中に罪を犯さずに過ごせば、刑罰を受けなくてもよくなるという制度です。
もし、執行猶予期間中に有罪となる罪を犯してしまうと、その犯罪に対する刑罰に加え猶予となっていた刑罰もあわせて科せられることになります。
執行猶予が付けられる前科は「禁固刑」以下
執行猶予は「3年以下の懲役・禁固または50万円以下の罰金」に対してつけられる可能性があるものです。通常、執行猶予が勘案される条件として「これまでに禁固以上の刑に処せられていない者」があります。
そのため、前科が罰金や拘留(1日以上30日未満、刑事施設に収監される刑罰)、科料(1,000円以上1万円未満を強制徴収される財産刑)のような軽微なものであるときには、執行猶予がつくこともあるのです。
ほかにも、前科における懲役・禁錮ですでに執行猶予期間が経過している場合や、執行猶予の付かない懲役・禁錮の前科で出所日から5年以上が経過している場合なども、執行猶予がつく可能性が考えられます。
例外的なものとしては、今回の刑が1年以下の懲役・禁錮という軽微なものであるとき、懲役・禁錮の前科で執行猶予期間中であっても特に酌量すべき情状がある場合、再び執行猶予が認められるケースがあります。
「禁固刑」では刑務所で何をしているのか
「禁固刑」は刑務所で何もしなくていい
「禁固刑」の刑罰は、独房に拘置されるというものです。強制労働などは科せられませんが、狭い独房の中で何もせずにじっとしていることはかなり苦痛であることから、自ら願い出ることで軽作業を行うこともできます。
仕事をすれば気が紛れるだけでなく少額ながら作業報奨金も支払われるため、禁固受刑者の多くは何らかの労役を行っているようです。
「禁固刑」でも病気になれば入院できる
「禁固刑」の刑期中に病気になれば、病院で診察を受けることができます。そのうえで重症の場合には独房から病院へ移されるため、仮病を試みるケースもあるようです。しかし入院中であっても厳しい監視がつくため、独房より入院したほうが快適とはいえないのが実情です。
交通事故による「禁固刑」は交通刑務所へ
交通刑務所は、交通事故で懲役や禁錮の刑に処せられた人を収容している刑務所です。交通事故の場合「禁固刑」となるは主に「過失運転致死」によるもので、7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金に処せられます。
しかし、交通事故は過失によるものが多いため執行猶予が付くことが一般的で、交通刑務所に収監されることはあまりないようです。交通刑務所でも「禁固刑」には労役が科せられませんが、受刑者の多くは希望して何らかの作業に従事しています。
まとめ
「禁固刑」の意味と執行猶予との関係のほか、刑務所では何をして過ごすのかについても紹介しました。多くの人は刑罰など他人事と思っていますが、道路交通法違反は誰もが犯し勝ちである犯罪です。さらに執行猶予がついても無罪にはならないため、軽はずみな行動は慎むべきでしょう。