「科料」は罰金と同様に金銭を徴収される刑罰ですが、両者の違いはどこにあるのでしょうか。また、「科料」とはいくらなのか、「科料」と似ている「過料」との違いや、支払った場合の勘定科目はどうすればよいかについても気になります。
この記事では「科料」の意味や似ている言葉との違いのほか、前科になるかどうかについても紹介しています。
「科料」の意味とは?
「科料」とは金銭を徴収される財産刑
「科料(かりょう)」とは「とがりょう」とも呼ばれ、強制的に金銭を徴収される刑罰(財産刑)のひとつ、または徴収される金銭のことです。
徴収される金額は「1,000円以上1万円未満」
現在の日本の刑法における主刑のなかで「科料」は最も軽いもので、徴収される金額は1,000円以上1万円未満となっています。なお、「科料」と同様に金銭を徴収される刑罰である「罰金」の金額は、1万円以上です。
「科料」は軽微な犯罪に適用される
「科料」は刑法のなかで最も軽いものであることから、軽微な犯罪に適用されるものです。法定刑として科料がある罪としては、以下のようなものがあります。
- 暴行罪
- 侮辱罪
- 遺失物等横領罪
- 道路交通法第121条違反の罪
- 軽犯罪法違反の罪
具体的でわかりやすい事例としては「免許不携帯」があり、反則金は3,000円であることから「科料」に該当します。
「科料」は前科になる?
「科料」は「前科調書」に記録される刑罰
「科料」は軽微な犯罪に適用され、徴収される金額も少ないものです。そのため、一般的に「科料」は前科にならないとみられています。
しかし、検察庁で作成される「前科調書」には「科料」であっても記録され、再犯の場合の刑罰で罪が重くなることもあるのです。したがって、「科料」は前科になるものとみるのが正解です。
「科料」とは有罪判決で科せられた刑罰
「前科」として扱われるものは、有罪判決を受けて科せられた刑罰です。このときの刑罰は実刑だけでなく執行猶予も含まれており、具体的には懲役や禁固だけでなく、罰金・科料も対象となっています。
したがって、「科料」は前科になるといえるものです。なお、同じ財産刑で「科料」より重い罪である「罰金」の場合、50万円以下の罰金は執行猶予がつく可能性がありますが、「科料」には執行猶予はつきません。
「科料」では「犯罪人名簿」に載らない
「犯罪人名簿」とは、市区町村が前科のある人の戸籍を管掌する目的で保管する名簿のことで、前科のある人に対する各種資格を制限するために用いられるものです。
厳密にいえば前科となる「科料」ですが、「犯罪人名簿」に名前が記載されないため、前科にはあたらないとする考えもあります。
ここまで述べたことを鑑みて、「科料」は厳密にいえば前科となるものの、「犯罪人名簿」に載らないことや再犯がなければ大きな問題となることがないことから、前科にあたらないとして差し支えないといえるものです。
「科料」と「過料」の違い
「過料」は刑罰ではない
「科料」と同じ読み方をする「過料」は、国または地方公共団体が科す金銭罰を指したものです。「科料」と区別するために「あやまちりょう」と呼ぶこともあります。
「科料」や「罰金」と違って刑罰ではなく、禁止区域での喫煙や空き家の放置など、市区町村の条例違反のような軽い禁令を犯した場合に科せられることが多いようです。
「過料」の支払い額は「科料」より高いことも
「過料」は刑罰ではないため、前科にはなりません。しかし罰として科せられる金額は、「科料」より高額となることがあります。
たとえば出生届や転出・転入届の届出を期間内に行わなかった場合、科せられる「過料」は5万円以下となっているため、上限が1万円未満とされている「科料」より高額です。
また、会社の登記を怠った場合には最大100万円の過料が科せられることもあるため、注意が必要です。
「科料」を支払った場合の勘定科目
「科料」は所得税法の経費にはあたらない
個人事業主が支払った「科料」を、必要経費として算入することはできません。したがって事業用資金から「科料」を支払った場合の勘定科目は、「事業主貸勘定」あるいは「資本金」「引出金勘定」で処理する必要があります。一方、個人専用口座や個人の金銭で支払った場合なら仕訳は不要となります。
登記で科せられた「過料」も費用処理できない
会社の登記を怠った場合の「過料」の通知は、会社の代表者宛てに届きます。そのため、会社の費用として処理できるように思われるかもしれませんが、「過料」も「科料」と同様に会計上での費用処理はできません。
「過料」を事業用の資金から支払った場合の勘定科目は「科料」と同様に、「事業主貸勘定」あるいは「資本金」「引出金勘定」で処理します。なお、個人専用口座や個人の金銭で支払った場合、仕訳は不要です。
まとめ
「科料」の意味のほか、「罰金」や「過料」との違いと勘定科目の選択などについて紹介しました。「科料」は刑罰のなかで最も軽いもので、徴収される金額も少額です。しかし刑罰であることには変わりなく、執行猶予もつきません。
ついうっかり法を犯してしまうことは誰にでもあり得ることですが、できるだけ刑罰を科せられないように日々過ごしたいものです。