「閲覧」は固い表現にみえる割に、身近でよく使われている言葉です。図書館へよく足を運ぶ方にとっては、特になじみが深いでしょう。しかし「閲覧」の細かい意味や類語との違いについてまでは、あまり知られていないようです。この記事では「閲覧」の意味と「観覧」との違いをはじめ、語句の使い方と例文も紹介しています。
「閲覧」の意味とは?
「閲覧」とは文書を読むこと
「閲覧(えつらん)」とは、書物や書類などの文書を読むことを指した語句です。熟語を構成している文字である「閲」には、「検閲」という熟語からもわかるように「よく調べる」「見て確かめる」という意味があります。
もうひとつの文字である「覧」は、「よく見る」「広く見わたす」という意味をもっており、「一覧」という熟語にもその意味合いを見て取ることができるでしょう。
「閲覧」の意味合いはじっくり読んで調べること
「閲覧」は文書を読むことを表した言葉ですが、ざっと目を通したり読み流したりするという意味合いではありません。
図書館には閲覧室と呼ばれる部屋があり、ここで図書館の利用者が貸し出し不可とされている書籍を読むことができるのです。また大学などの図書館では、学生がレポートの作成などのために資料を閲覧している光景も見受けられます。
これらの事例からもわかるように、「閲覧」とは文書をしっかり読み込んで内容を調べることを指しているのです。
「閲覧」の使い方と例文
「閲覧」はWebページにも使える
「閲覧」は紙でできたリアルな書物や書類だけでなく、Webサイトの文書に対しても使用が可能です。Webの場合も、資料として参照するときのように内容をしっかり確認して読むことを指します。
したがって、時間つぶしの気軽なネットサーフィンに対して「閲覧」を用いることは、本来であれば誤りです。しかし、単にWebサイトを見るだけのことに対しても、「閲覧」を使うケースが多くみられるようになっています。
「閲覧」の敬語表現は「ご高覧」
固い表現にみえる「閲覧」ですが、言葉そのものに敬語の意味合いはありません。しかし敬語を作る接頭辞の「ご(御)」を付けることで敬語表現にすることができます。なお言葉そのものに尊敬の意味を持たせたい場合には、「ご高覧」を用いるとよいでしょう。
「閲覧」を使った例文
- 大量の文書を閲覧するためには、まとまった時間が必要だ。
- 仕事中にWebサイトを閲覧していると、変な誤解を招く恐れがある。
- 新しい商品カタログの閲覧をお客様におすすめするよう、担当者に指示した。
「閲覧」の類語
「玩読」はよく味わって読むこと
「閲覧」の類語として、「玩読(がんどく)」をあげることができます。「玩読」とは、文章の意味をよく味わって読むことを表した語句です。
「玩」という文字には、「熟読玩味」という四字熟語からもわかるように「味わう」という意味があり、ただ読むのではなくじっくりと味わうように内容を考えながら読むことを指しています。
「閲読」とはよく調べながら読むこと
「閲読(えつどく)」とは、書物や書類などの文書の内容をよく調べながら読むことを指す言葉です。
「閲覧」の類語として使うことができる言葉ですが、対象となる文書の掲載内容が文字中心のものであれば「閲読」を、図表や画像が多ければ「閲覧」を用いるとよいでしょう。
「繙読」とは書物を繙くこと
「繙読(はんどく)」とは、書物を繙く(ひもとく)ことを表した言葉です。繙くには書物を開いて読むということのほかに、詳しく調べて真実を明らかにするという意味もあります。
したがって「繙読」は軽く読み流すのではなく、内容をしっかり理解しながら読むことを指しており、「閲覧」に近い意味合いがあるといえるものです。
「閲覧」と「観覧」との違い
「観覧」とは見物すること
「閲覧」と一字違いの言葉として、「観覧」をあげることができます。スポーツや演劇のほか芸術作品などを見物することを表しており、観客のために設けられた座席のことを「観覧席」といいます。
熟語に使われている「観」は、「観察」という語句からもわかるように「よく見る」「注意深く見る」という意味を持った文字です。しかし「観覧」においては、興味・関心を持って見るという意味合いで使われています。
「閲覧」する対象は文書
「閲覧」の対象となるものは、読むために作られた書物や書類などの文書です。図表や画像が含まれるケースやWebページも対象となりますが、それでも内容を理解するためには読む必要があるものを指しています。
一方「観覧」の対象は、読むものではなく鑑賞するものです。つまり、「閲覧」は理解するという目的があってなされるものであることに対し、「観覧」は見て楽しむためになされるものであるという点でも違いがみられます。
まとめ
「閲覧」の意味と「観覧」との違いのほか、語句の使い方と例文についても紹介しました。本来「閲覧」とは、レポートを作成できる程度まで内容をしっかり確認しながら読むことでしたが、徐々にWebページを見る場合にも使うことができるようになってきました。
とはいえ、ネットサーフィンやニュースの流し読みにまで「閲覧」を用いることには、やや無理があります。「閲覧」の使用は、文字が主体の文書をしっかり読み込む場合に用いることが適切でしょう。