「少年老い易く学成り難し」は、比較的よく知られていることわざで、書道や漢文の授業で習ったという方も多いようです。この記事は「少年老い易く学成り難し」の意味だけでなく、漢文の作者や類語・英語表現などを紹介しており、ことわざの意味を多角的に理解できる内容となっています。
「少年老い易く学成り難し」の意味とは?
ことわざは「時間を惜しんで学問すべきだ」という戒め
「少年老い易く学成り難し」ということわざの直訳は、「若い日々はあっという間に過ぎ去って年老いてしまうため、学問を成就させることは難しい」というものです。
若いうちは時間がいくらでもあるように感じ、無為に過ごしてしまいがちですが、年月はすぐに過ぎ去って何も学べないうちに年老いてしまいます。だからこそ、若いうちから時間を惜しんで勉学に励むべきだという戒めのことわざとして用いられるようになりました。
ことわざの由来は漢詩
「少年老い易く学成り難し」の由来は漢詩の「偶成」といわれており、元の漢文と読み下し文は以下のとおりです。
「一寸の光陰軽んずべからず」はことわざの同義語
「少年老い易く学成り難し」に続く「一寸の光陰軽んずべからず」は、「少年老い易く学成り難し」と同じ意味合いを表しています。若い時期は短いのだから、わずかな時間といえども軽んじることなく大切にしなければいけないという戒めです。
「一寸」とは約3cmのことで、ごく短いもののたとえとして用いられている言葉、「光陰」は光が昼または太陽、陰が夜または月をたとえたもので、時間や月日のことを指しています。
「少年老い易く学成り難し」の作者
漢詞の作者は朱熹(朱子)
「少年老い易く学成り難し」の作者は、南宋の儒学者・朱熹(しゅき)とされており、朱子学を成した人物として尊称の「朱子」という呼び名でよく知られています。
日本では江戸時代、朱子学の礼節・秩序を重んじる思想が封建制度の維持に役立つため、官学として保護・奨励されました。
漢詩の作者は日本の禅僧という説も
「少年老い易く学成り難し」を含む漢詩の作者は通説の朱熹ではなく、日本の禅僧ではないかという説もあります。「偶成」に、肝心の「少年老い易く学成り難し」のくだりがみられないためのようです。
ひとつは、江戸時代に五山派の禅僧が作った詩を集めた『翰林五鳳集(かんりんごほうしゅう)』にある、室町時代の禅僧・惟肖得巖(いしょうとくがん)の作ではないかという説です。
もうひとつは、京都の相国寺(しょうこくじ)の住持・観中中諦(かんちゅうちゅうたい)の詩文集『青嶂集』に「少年老い易く学成り難し」がみられるため、観中中諦こそが作者ではないかという説が浮上しています。
「少年老い易く学成り難し」の類語
「光陰矢の如し」とは時間の流れは矢のように早いということ
「光陰」は「一寸の光陰軽んずべからず」の項にあるように、「時間」「月日」を指したものです。「光陰矢の如し」とは、時間は放たれた矢が飛んでいくようで瞬く間に過ぎてしまうということを表しています。
加えて、放たれた矢はもう戻っては来ないことから、後から取り戻すことができない時間は大切にしなければならないという教訓的な意味もあわせ持ったことわざです。
「歳月人を待たず」とは時間は待ってくれないという意味
「歳月人を待たず」は、「少年老い易く学成り難し」と同じ意味合いを持ったことわざです。陶潜の『雑詩』のなかの一文で、時間は人間の事情に関係なく過ぎ去っていき、人を待ってはくれないものだということを表しています。
つまり、人はすぐに年をとってしまうのだから、時間を無駄にしてはいけないという戒めの言葉です。なお「光陰人を待たず」も、「歳月人を待たず」と同じ意味です。
「少年老い易く学成り難し」の英語表現
「Art is long, and life is short.」はことわざと同義
「少年老い易く学成り難し」と同じ意味合いを持つ英語の言い回しとしては、「Art is long, and life is short.」をあげることができます。
「芸術の道は長く、人生は短い」という内容で、芸術の完成には長い時間が必要だが、それに比べると人生は短いものであるということから、時間を惜しんで精進せよという教訓として用いられています。
「The day is short, and works is much.」は「日暮れて道遠し」
「The day is short, and works is much.」を直訳すると「1日は短く、仕事は膨大だ」という意味です。この場合の「work」は日常の仕事だけでなく、人生において達成したい目標という意味合いもあり、到達点はまだまだ遠いということを表しています。
また、年をとって振り返ったときにまだ目標に届いていないことを実感するという意味もあり、いずれも時間を無駄にしはいけないという教訓的な言葉として使われるものです。
まとめ
「少年老い易く学成り難し」の意味や漢文の作者、類語・英語表現などを紹介しました。ことわざの意味合いは年を経るごとに実感されるものです。
しかし寿命が延びた現在においては、学びの時期を若い時期に限定することに無理が生じています。「壮にして学べば、則ち老いて衰えず」ということわざもあるように、学びに遅すぎるということはありません。いくつになっても時間を惜しんで学び続けることが大切でしょう。
一寸光陰不可軽(一寸の光陰 軽んず可からず)
未覚池塘春草夢(未だ覚めず池塘 春草の夢)
階前梧葉已秋声(階前の梧葉 已に秋声)