「係る」は契約書類や申請書類などでよく目にする文字で、日常生活に登場する機会は多くありません。また「係わる・関わる」などの似た言葉や「掛かる」などの同訓異字語もあり、自信を持って使い分けることが難しい言葉でもあります。そこで「係る」の意味と使い方の理解がより深まるよう、多角的に解説してみました。
「係る」の意味と読み方とは?
「係る」の意味は”~のための”
「係る」の意味は、“~のための”です。「申請に係る事務」などのように法律や官公庁などが絡む文章でよく見受けられるやや硬い言葉です。「申請に係る事務」は”申請のための事務”と言い替えると分かりやすくなります。
「係」という文字には”かかわる・つなぐ・むすぶ”という意味があり、「係る(かかる)」とする場合には「かかわる」より密接な関係となる”つなぐ・むすぶ”ということを指すのです。
「係る」の読み方は”かかる・かかわる”
「係る」には、“かかる”以外に“かかわる”という表外読み(常用漢字表にない読み方)もあり、この場合には「関係がある・関連する」という意味合いになります。
「かかる」と読むときより弱く広い関係を指すので、「かかわる」とするときには「係る」ではなく「係わる」と書くことが一般的です。「係る」と「係わる」の違いについての詳細は、後の章で述べます。
「係る」の使い方と例文とは?
「係る(かかる)」の後に来るものは目的語
「〇〇に係る△△」とするとき、△△は〇〇の目的語にあたります。具体的には「契約に係る書類」というように、「係る」の後には前にあるものの目的語が置かれるのです。この点を押さえておけば、使い方を誤ったり文章の意味を取り違えたりすることはなくなるでしょう。
「係る」は同訓異字語に注意
「係る」には読み方が同じで文字が異なる同訓異字語が複数ありますが、使い分けのポイントは以下のようになっています。
- 掛かる:ぶら下がる・影響が及ぶ
- 懸かる:高いところにある・結果が左右される
- 繋る:船をつなぐ
- 架かる:かけ渡す
- 罹る:病気になる
「係る」の使い方がわかる例文
「係る」の使い方がわかる例文をいくつかご紹介しましょう。
- 南海トラフ地震に係る防災対策は、関西地方より東海地方のほうが進んでいるようだ。
- 緊急事態措置に係る各自治体の実施方針には、違いがあって当然だろう。
- 登録商標の出願に係る手続きに必要な書類の作成に、頭を痛めている。
- 業務委託に係る法律をクリアするより、自社で片づけたほうが早いようだ。
- 修飾語と被修飾語には、前者が「係る」後者が「受ける」という関係がある。
「係る」と「係わる」との違いとは?
「係わる」との違いは関係性の強さと広さ
「係る」も「係わる」も、大きくとらえると”関係がある”ということを指す言葉ですが、両者の違いは関係性の強さと広さにあります。
「係る」は深いけれど狭い、「係わる」はやや浅いけれど広い関係性を示すものです。たとえば、「当該事業に係る方針」という場合にはその事業に直接関係する方針を指しますが、「当該事業に係わる方針」という場合なら、該当事業だけでなく関連するもの全般に対する方針も含まれます。
「係る」は口語ではあまり使わない
「係る」は法律や官公庁などで使われる語句であることや、「掛かる・懸かる」など同じ読みの言葉が多くあることから、日常生活や会話で用いる場面は少ないようです。
そのため一般の人の場合には、「係る」ではなく”係わる”や”関する”などを使うケースが多くみられます。
「係わる」は公的文書に用いられない
「係わる」は常用漢字表にはない表外読みであることから、公文書や出版物などのような公的文書には用いられません。
表外読みであっても私的な場面で用いる場合なら問題はないのですが、公的な文書で「かかわる」と表記したい場合には、「係わる」ではなく「関わる」を使うことが適切です。
「係わる」と「関わる」との違いとは?
「係わる」と「関わる」に大きな違いはない
「係わる」と「関わる」に大きな意味の違いはありません。漢字の「関」には「かかわる」「出入口」「つなぎめ」という意味があり、「係」という文字が持つ「むすぶ」よりやや接し方が幅広いイメージを持っています。
両者があわさった「関係」という熟語には間柄やかかわり合いという意味があり、それぞれの文字が持つ薄くて広いつながりから濃くて狭い間柄までを網羅したものです。
使い方・用法に迷ったら「関わる」
「かかわる」を文字で表すときの用法に迷ったら、「関わる」を選んでおけばまちがいありません。先に述べたように「係わる」は表外読みであるため、公文書や提出書類などでは「関わる」が適切であるためです。
なお出版物であっても小説や詩編などの場合には、文字が持つ微妙なニュアンスを重視するため「係わる」が用いられることもあります。
まとめ
「係る」の意味と使い方について、同訓異字語や「係わる・関わる」との違いも含めながら解説しました。
簡単な文字で表記された「係る」ですが、硬い文書でしか目にする機会がないため意味の理解は明確でなかったかもしれません。普段接しない語句については、意識的に意味をきちんと確認する機会を設けたいものです。