「事例」の意味と使い方とは?類語や「実例」「事案」との違いも

「事例」はよく見聞きする言葉で、似た意味合いの類語も多くあります。多くの語句が互換性を持っているようですが、言い換えに使えないものもあるので注意が必要です。この記事では「事例」の意味と使い方のほか、類語や「実例」「事案」との違いについて紹介しており、用法に迷ったときに役立つ内容となっています。

「事例」の意味とは?

「事例」の意味は”すでに起きた参照可能なことがら”

「事例」の意味は、“すでに起きた参照可能なことがら”です。「事」は”ことがら・できごと”を、「例」は”たとえ・たぐい”を表しています。

つまり、「事例」とはこれまでに実際に起きた”事”を”例”として示すもので、「同じようなことがら」や「たとえとしてあげられるできごと」という意味合いを持つ熟語です。

「事例」とは前例となる事柄のこと

「事例」とは、過去において実際に起きた事件や事実のことで、それ以降に発生することの前例となりうるものです。

たとえば、事件が発生したときに過去の「事例」を検証します。これは今までに起きた事件をつぶさに調べることによって、今回の事件との共通点などを引き比べながら早期解決を目指すものです。

「事例」とは”ケース”のこと

「事例」を表すわかりやすい言葉として、”ケース”があげられます。英単語の「case」の読みが日本語化した言葉で、語源である「落ちてきたもの」が、できごとや身の上に起きた事という意味合いに発展したものです。

なお「ケーススタディ」は”事例研究”のことで、実際に起きた出来事を対象に行う研究のことを指しています。

「事例」の使い方と例文とは?

「事例」は具体的に例をあげるときに使う

先の章で紹介したように、「事例」は具体的に例をあげるときに用いますが、それ以外にも用法があります。

以下にあげる例文のような「〇〇事例」というもので、「〇〇」に直接「事例」を付けて慣用句のように使うことは、よく見聞きされる「事例」です。

「事例」を使った例文

「事例」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。

  • 問題事例を検証して発生原因を明らかにすれば、再発を防止できるはずだ。
  • ウイルス感染の発生事例を公表する際には、個人情報の保護に留意しなければならない。
  • 幼児への英語教育の導入にあたって、先行事例を集めてほしいとの要望があった
  • わが部門における製造工程の改善事例は、工場全体の効率化へ大きく寄与するものだ。
  • 成功事例にとらわれ過ぎると時流を見誤り、トレンドから外れてしまうことになる。

「事例」の類語とは?

類語①「先例」とは”将来の基準となる例”という意味

「先例」とは以前にあった同様の例という意味で、これから先に似たようなことがあったときに基準となる例とされています。

「先」という文字には時間的・位置的に前にあることのほか、”第一に・はじめに”という肯定的な意味合いがあるためで、「先例に倣えば、きっとうまくいく」というように用いられます。

類語②「前例」とは”これまでにあった例”のこと

「前例」は、現在より以前にあった事柄や事件のことですが、「先例」のように基準としてあげられるのではなく、並列的に比較する対象として使われることがよくある語句です。

「前」という文字には”過去”という意味合いが強くあり、「前例と比較したうえで、今後の方針を検討したい」というように使うことができます。

類語③「類例」の意味は”似通っている例”

「類例」とは、よく似ている例や同じ種類の例を指す言葉です。「類」という文字には、”よく似たもの”という意味のほか、似ているものとそれ以外のものを区別するという意味もあります。

なお、「類例がない」というように否定形で用いる場合、抜きんでていて他の追随を許さない、あるいは他にはない独自のものといった肯定的な意味合いとなることが多いようです。

類語④「用例」とは”実際に使用されている例”のこと

「用例」は実際に使用されている例や、使い方の例という意味を持った語句で、「用」という文字には、”使う・役立たせる”という意味があります。

「用例採集」は、国語辞典を編纂するとき、書籍だけでなくテレビ・ラジオや街中の看板などから実際に使われている語句を集めることです。

「用例」は”使用例”と同じ意味合いですが、語句や表現などについて述べたいときに用いるケースが多いようです。

「事例」と「実例」との違いとは?

「実例」とは”本当にあったこと”

「実例」とは”実際にあった例”のことです。「実」という文字には、「事実・実験」という熟語からもわかるように本当にあったことや実際に行うことという意味合いがあります。

「例をあげると」という場合なら、仮定や空想を取り上げることができますが、「実例をあげると」とした場合には本当にあったことや行われたことを取り上げなければならないのです。

「事例」との違いは焦点となる部分

「事例」と「実例」に決定的な違いはなく、お互いに言い替えとして用いることがでるものです。「事例」との違いは、「実例」では”実際にあった”という点に重きが置かれているということにあります。

したがって、「これは本当にあったことです」ということを強調したいときには、「事例」より「実例」が適しているのです。

「事例」と「事案」との違いとは?

「事案」とは”対処すべきことがら”のこと

「事案」とは、対処すべき問題やことがらのことです。「案」という文字には、”考える”のほかに”心配する”という意味もあることから、現在すでに問題となっているものだけでなく、今後問題となりそうな事柄も「事案」の対象として含みます。

また、政治や法律に関わる問題をはじめ、問題というほどではないが対応を検討すべき課題なども対象となるものです。

「事案」は「事例」の言い替えには使えない

「事案」は「事例」と一字違いの言葉ですが、意味合いが異なるため言い替えに使うことはできません。

「事案」は現在進行中または未来に起こり得るものが対象となりますが、「事例」は例としてあげることができる過去のできごとが対象となるからです。

まとめ

「事例」の意味と使い方について、類語や「実例・事案」との違いもふくめながら紹介しました。今回紹介した言葉のうち、意味合いが異なるものは「事案」だけですが、他の語句にもそれぞれ微妙な違いがあるため、言いたいことにより適した語句を選んで使い分けたいものです。