「四書五経」の意味とは?書物の内容や歴史をわかりやすく解説

東洋哲学の古典として「四書五経」の名が挙がることがあります。「四書五経」とはどのような書物なのでしょうか?また、どのような内容が残されているのでしょう。

この記事では、東洋哲学を理解するのには欠かせない「四書五経」について、歴史的な成り立ちやそれぞれの書を解説します。

「四書五経」の意味と読み方とは?

「四書五経」の意味は”儒教・朱子学を代表する9つの書物のこと”

「四書五経」の意味は、“中国の儒教(じゅきょう)および朱子学(しゅしがく)における代表的な9つの書物”のことです。「四書」とは”論語・大学・中庸・孟子”の4つ、「五経」とは”易経・書経・詩経・礼記・春秋”の5つです。

「四書五経」の読み方は”ししょごきょう”

「四書五経」の読み方は“ししょごきょう”です。4つの書物(しょもつ)と5つの経典(きょうてん)と覚えると読み方を間違えません。

「四書」とはどんな内容?

「四書」は朱子が儒教の経典から選んだ4つの書物

『大学・中庸・論語・孟子』の4つの書物を指す「四書」は、朱子学を創始した南宋の朱熹(朱子)が、孔子の思想をより強調するために儒教の主要な経典から選んだものです。それぞれについて詳しく紹介します。

『大学』『中庸』は儒教の経典『礼記』から抜粋された

『大学』『中庸』は孔子がまとめたとされる『礼記(らいき)』から朱子が抜粋して独立させたものです。『大学』は、優れた人物となるための修養のあり方や徳の大切さを説くもので、『中庸』は人間の本性とは何か、徳とは何かを論じる哲学的な書です。

現在でも、岩波文庫や角川ソフィア文庫から2篇をまとめた文庫が出版されています。

なお『礼記』とは、儒教の最も基本的な経典である「経書」のうちの一つで、礼に関する諸文献を系統立てずに集めたものです。全49篇があり、各篇の作者についてはわかっていませんが、一部については孔子が書いたという説もあります。

『論語』は孔子の言行録をまとめた書物

『論語』は孔子の言行録をまとめた書物です。孔子の死後に門弟たちがまとめたもので、人間における最高の徳とは何かが語られています。「論」は論議、「語」は答述という意味があり、孔子と弟子の論議と答述を記録する体裁になっています。

日本において『論語』は朱子学における最も重要な書物として江戸時代には武士の必読の書となりました。現代においてはリーダーシップ論として読む経営者も多く、東洋哲学におけるもっともポピュラーな書物として多くの出版社が関連書籍を出版しています。

『孟子』は孔子の思想を発展させた孟子の言行録

『孟子』は孔子の思想を発展させた孟子の言行録です。孟子とは、儒教の思想家に名前ですが、人物の名前が書物の名前にもなっています。『孟子』は当初から儒教の古典として重んじられていましたが、朱熹が朱子学の正典として四書に含めたことから、朱子学の正典ともなりました。

「五経」とはどんな内容?

「五経」とは儒教で尊重される5つの経典

「五経」とは、儒教で尊重される5つの経典です。漢の武帝の時代に定められていたものですが、のちに南宋の朱熹(朱子)が孔子の教えを強調する形でこれに「四書」を加え、「四書五経」となりました。

『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の5つ

「五経」を時代順に並べると『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』となります。『易経』は予言、『書経』は歴史、『詩経』は詩を論じています。

『礼記』は「四書」に挙げられた『大学』『中庸』が含まれていた書で、儒学者が最も多く研究を行った重要な書です。『春秋』は歴史と思想の書です。

古代中国には五経博士という官職もあったほど、儒学の経典として重要なものでした。日本においては、儒教の経典は朱子学に付随する形での受容にとどまっています。

「四書五経」と関係の深い「儒教」「朱子学」とは?

「儒教」とは孔子を始祖とする体系的思想のこと

儒教とは、紀元前6世紀頃の中国・春秋時代に「孔子」によって創始された体系的思想・宗教・学問のことです。孔子の前から、中国固有の原始思想として、祖先崇拝や儀礼的な意味を持つ「儒」の思想がありましたが、孔子は需を体系的な思想・学問に作り上げました。

儒教は古代より東アジア各国に広まり、強い影響力を持ってきました。儒教は宗教的側面がありますが、日本においては国家統治を目的とする学問として5世紀頃には受容されていたとされます。時の天皇が国家が推奨する学問として取り入れたり、官吏の養成に取り入れられたりしました。儒教は学問の側面においては儒学とも呼ばれます。

「朱子学」とは儒教の新しい学問・思想体系のこと

朱子学とは、中国・南宋の時代に朱熹(朱子)によってあらたに形成された儒学の新しい学問体系のことです。朱子学はその後の中国の主要な思想となり、官僚試験に採用されるなど、中国社会で欠かすことのできない国家教学となりました。

日本には鎌倉時代に中国に渡った禅僧から伝わり、研究と受容が進みました。江戸時代には江戸幕府が思想支配と統制のための学問として取り入れ、武士や学者の間に浸透しました。

その後の明治維新から近代化における大きな動きの中で、朱子学は過去の文化遺産として忘れられるようになりましたが、「四書五経」のうち、とくに『論語』や『中庸』などは、知識層の中で優れた東洋古典として読み継がれるに至っています。

まとめ

「四書五経」の中でも東洋哲学の古典として、現代日本において読み継がれているおすすめの書物といえば、『論語』が一番に挙げられます。また、『論語』ほどではないですが、『大学』『中庸』も隠れた名著として知識層や愛好家に読み継がれています。

また、これらの書は、特に優れたリーダー論や人生における哲学的な指南書として、ビジネスパーソンに向けた教養書として取り上げられることもあります。

『論語』『孟子』の名言は以下の記事にまとめていますので参考にしてください。
「孔子」の思想と論語の名言を解説!孔子の生涯や日本との関係も
「孟子」の思想とは?訳と書き下し文や名言も紹介!性善説も解説