「宰相」の意味とは?中国での地位や「丞相」との違いも紹介

第99代内閣総理大臣は令和の「平民宰相」と呼ばれていますが、「宰相」とは日本だけで使われる言葉でなく中国発祥の言葉です。また、世界史にも「宰相」と呼ばれる人物が登場しています。この記事では「宰相」の意味をはじめ、中国での地位や「丞相」との違いのほか、世界史における使われ方についても紹介しています。

「宰相」の意味とは?

「宰相」とは中国で天子を補佐した者のこと

「宰相(さいしょう)」とは、古代中国において君主を補佐し、政治を行った者を指す言葉です。熟語に使われている「宰」という文字には、「つかさどる」「長・頭」という意味があり、ここに補佐することを表した「相」という文字が加わって「宰相」という言葉が成り立っています。

「宰相」とは「参議」の中国風の呼び方

「宰相」とは、「参議」のことを中国風に読んだものでもあります。「参議」は現在、国政上の議事に参与する人のことをいいますが、元は律令制で設けられた朝廷の官職名で、「三木」とも書かれていたものです。

明治2年(1869)には太政官に置かれた官名として復活し、維新三傑として知られる木戸孝允・大久保利通・西郷隆盛らが任命されました。

「宰相」とは内閣総理大臣のこと

「宰相(さいしょう)」は、日本の総理大臣のことを指しており、これが現在よく見受けられる用法です。総理大臣の正式名称は「内閣総理大臣」で、国家では略称の「総理」がよく用いられていますが、新聞やニュースでよく見聞きする「首相」は「首席宰相」を縮めたもので通称にあたります。

「相」は大臣のことを表し、大臣のトップということで「首相」と呼ばれているもので、「宰相」は「首相」と同様に正式名称ではなく、「首相」を装飾的に表現した言葉といえます。

なお、外国の「首相」を指して「宰相」を用いることはありますが、「総理大臣」は日本の「首相」以外には使いません。

「小宰相」は日本の女性名

「小宰相」は政治上の役職ではなく、平安時代に平通盛の妻であった小宰相(こざいしょう)と、鎌倉時代の女流歌人・土御門院小宰相(つちみかどのいんのこさいしょう)のことです。

小宰相は一の谷で討ち死にした夫を追って入水した女性で、このエピソードは「平家物語」にも記されています。土御門院小宰相は女房三十六歌仙のひとりで、「新勅撰和歌集」などに和歌が収められています。

「宰相」の中国での地位

中国王朝で「宰相」は最高の官職

歴代の中国王朝において、「宰相」は君主を補佐する最高地位の官職およびその通称を指すものです。王朝によって呼称はさまざまで、唐から北宋時代の呼称である「僕射(ぼくや)」は、日本では左大臣・右大臣を指すものとして用いられていました。

大坂冬の陣の発端となったとされる方広寺の鐘には、当時右大臣だった徳川家康を「右僕射源朝臣」と記しています。中国最後の王朝である清朝後期には、日本の制度に倣って「内閣総理大臣」と呼んでいました。

「宰相」と「丞相」との違い

「丞相」とは「宰相」の呼称のひとつ

「丞相(じょうしょう)」とは、歴代中国王朝における最高官位の名前の一つです。官職である「宰相」の呼称のひとつで、秦・漢および六朝(三国時代の呉、東晋、南朝の宋・斉・梁・陳)の時代、「宰相」にあたる官位は「丞相」という名称でした。

したがって「丞相」は「宰相」に含まれるものであり、今日の「首相」に相当するものと理解することができます。

「丞相」は大臣の別名

律令制が敷かれていたころの日本で創設された右大臣や左大臣は、右丞相や左丞相とも呼ばれていました。全国にある天満宮の祭神である菅原道真は、右大臣だったことから「菅丞相(かんじょうしょう)」とも呼ばれ、この呼び名は能楽の演目となって残っています。

世界史での「宰相」

ビスマルクは「鉄血宰相」

西洋でも「宰相」という言葉は「首相」を指して用いられており、世界史の教科書にも登場するビスマルクは「鉄血宰相」という異名とともによく知られています。

プロイセン首相となったビスマルクは、普墺戦争・普仏戦争を勝利に導きドイツ統一を実現後、ドイツ帝国の宰相となりました。

なお「鉄血宰相」という異名は、軍備拡張予算が否決された際に「問題解決は鉄と血によってなされる」という演説を行ったことに由来するものです。

「大宰相」はオスマン帝国最上位の官位

「大宰相」とは、スルタン(皇帝)の直下にある官位です。「大宰相」はスルタン以外から罷免されることはなく、オスマン帝国の実務を担う存在でした。宮廷内の御前会議がトプカプ宮殿の聖堂内であったことから、「聖堂宰相」とも呼ばれています。

「宰相」の英語訳

英語で「宰相」は「prime minister」

英語の「prime minister」は、「宰相」「日本や英国などの首相」「日本の総理大臣」と訳される語句です。「prime」は「最も重要な」「第一等の」、「minister」は「大臣」という意味で、両者があわさって大臣のトップである立場を意味する言葉となっています。

「chancellor」は連邦制の国の首相のこと

ドイツ語では「首相」を指して「kanzler」という言葉が用いられており、「chancellor」はそれを英語で表したものです。「chancellor」の語源はフランス語の「秘書官」や「宮廷の門衛」にあたる言葉でしたが、徐々に用法が変化していきました。

先に紹介したビスマルクは自らを「Bundeskanzler(連邦宰相・Bundes-は連邦のという意」と名乗りましたが、現在のドイツ首相は女性であるため「Bundeskanzlerin」と呼ばれています。

まとめ

「宰相」の意味について、中国での地位や「丞相」との違いのほか、世界史に登場する人物に関する話題も紹介しました。

「宰相」は「総理大臣」や「首相」を指した言葉で、海外の行政機関のトップに対しても使うことができるものです。なお、「丞相」は「宰相」の呼称のひとつですが古い言葉であり、使われることは少なくなっています。記事の内容が、語句の理解に役立てば幸いです。