「被る」の意味や読み方とは?使い方の違いや類語・言い換えも

「被る」は中学校で習う言葉であり日常生活でもよく見掛けるものですが、読み方は複数あります。加えて読み方が違うと意味も違ってくるため、正しく使うことは意外と難しい言葉といえるものです。この記事では「被る」の読み方とそれぞれの意味のほか、使い方や言い換えに使える類語なども紹介しています。

「被る」の意味と読み方とは?

「被る」の意味は”恩恵や行為を受ける・頭に覆うものを載せる”

「被る」の意味は、“恩恵や行為を受ける・頭に覆うものを載せる”です。

「被る」には読み方が複数あり、それぞれの読み方によって意味が異なっています。「被」の部首である「ころもへん」は、「衣」のほか”おおう・包む・かぶせる”という意味合いを漢字に与えるものです。これらの点を「被る」のイメージとしてとらえておくと、理解しやすいでしょう。

「被る」の読み方は”こうむる・かぶる・かがふる”

「被る」の読み方は“こうむる・かぶる・かがふる”です。読み方別の意味は以下のとおりですが、「こうむる」以外は表外読みです。加えて「かがふる」という読み方は、一般的に用いられる機会が少なくなっています。

  • こうむる
    1. 恩恵や行為を受ける
    2. 災いが身におよぶ
  • かぶる
    1. 頭に覆うものを載せる
    2. 水などを頭から身体全体にかけて受ける
    3. 他人の罪や責任など引き受ける
    4. かさなる
  • かがふる
    1. かぶると同じ
    2. 仰せつかる・賜る

「被る」の読み方別の使い方とは?

「こうむる」の主な意味は”受ける”こと

「被る」を”こうむる”と読むときの主な意味は、「受ける」です。損害や迷惑などのようにネガティブなものが身に降りかかるときによく用いられますが、受けるものは必ずしも悪いもの悪いものだけではなく、「ご愛顧を被る」というように厚意や恩恵といったポジティブなものに対しても用いられます。

なお、「こうむる」は”蒙る”とも書きます。「蒙」という文字には、”おおう・かぶさる・身にうける”という意味があり、許しを得ることや断ることを指す「御免蒙る(ごめんこうむる)」という使い方がよく見られるものです。

「こうむる」は重言に注意が必要

ときおり被害に遭うことを「被害を被る(こうむる)」と表現している事例を見聞きしますが、これは同じ意味の語を重ねて使う重言にあたる誤った用法となります。なお、「あう」には同音異義語が多くありますが、好ましくないものにあうときに使えるのは「遭う」だけです。

「かぶる」の主な意味は”上から覆いかぶせる”こと

「被る」を”かぶる”と読むときのイメージは「上から何かが覆いかぶさる」ことで、「帽子を被る」「雪を被る」などがよく見られる用例です。

「かぶる」には自発的に身に受けるという意味合いがあり、自分のものではない罪や損な役割をあえて引き受けるという意味の慣用句、「泥を被る」が分かりやすい例としてあげられます。

なお「かぶる」は「冠る」とも書きますが、頭の上に載せるという意味合い以外の「かぶる」では用いられないようです。

「かぶる」には”かさなる”という意味も

「かぶる」は、”かさなる”という意味でも使われています。この用法は特定の状況で使われていたものが広まった新しいもので、「被る(かぶる)」の本来の意味である「上から掛けて覆う」から派生したものです。

話題や役わりのほか服装などが重複することや、画像・音声などの上に、さらに他の物が重なることを表します。

ほかにも「かぶる」は芝居や寄席の世界でも業界用語として使われており、公演が終わることや失敗すること、さらには大入りになることも指しています。

「かがふる」は畏まって頂戴すること

「かがふる」は「かぶる」と同じ意味で使われていましたが、もうひとつ別の用法を持っていました。

現代語でいえば”仰せつかる・賜る”という意味合いになり、目上の方からの恩恵や命令などを畏まって頂戴することを表す言葉です。

「被る」の類語とは?

「被る(こうむる)」の類語は”見舞われる・賜る”

「こうむる」の意味合いがネガティブなときの類語としては、”見舞われる・降りかかる・遭う・巻き込まれる”などがあります。

言い換えに使う場合には助詞を変えるケースがあり、たとえば「災難を被る」は”降りかかる”以外の言い換えでは「~に見舞われる」「~遭う」「~に巻き込まれる」とします。

なお、ポジティブな用例での「こうむる」の類語は”賜る・頂く”で、「ご恩顧を賜る・ご愛顧頂く」と言い換えることができます。

「被る(かぶる)」の類語は”着用する・負う”など

帽子を「かぶる」は、帽子を「着用する」と言い換えることができます。「泥をかぶる」という意味合いでの「かぶる」は”負う・引き受ける”が適切で、「責任を被る」は”責任を負う”、「罪を被る」は”罪を引き受ける”と言い換えるとよいでしょう。

話題が「被る(かぶる)」の類語は”重なる”

重複することを表す場合の「かぶる」は、”話題が重なる・会合が重なる”というように「重なる」で言い換えることができます。予約やスケジュールが「かぶる」には、「バッティング」や「ダブルブッキング」も利用が可能です。

まとめ

「被る」の読み方別の意味のほか、それぞれの使い方や言い換えとして利用できる類語についても紹介しました。「被る」は簡単な文字が使われていますが、それぞれ意味が異なる複数の読み方があるため誤った用法をしがちな言葉といえます。

なお、「かさなる」という意味や特定の業界で使われる意味は社会的認知度が低いことから、公的な場面で使用することは差し控えた方が無難でしょう。