「奉公」の意味と種類別の使い方とは?四字熟語や類語も紹介

「奉公」は時代劇に登場しそうな古めかしいイメージがありますが、現代でも使われている言葉です。また、四字熟語にも登場していることから、用法や意味合いを知っておく必要があります。この記事は、「奉公」の意味と種類別の使い方のほか四字熟語や類語も紹介しており、実生活に役立つ内容となっています。

「奉公」の意味と読み方とは?

「奉公」の意味①封建社会での家来の義務

「奉公」の意味は、“封建社会においては家来が主君に尽くすという一種の契約関係があり、この関係における家来の義務”のことです。

主君から与えられる「御恩(地位や財産を保証したり、褒美として与えたりすること)」に報いるために、家来は「奉公」が義務付けられ、戦になれば命を懸けて戦いました。

しかし「御恩」がなくなれば契約解除となり、「奉公」の義務もなくなります。封建社会の「奉公」は、意外とドライなものだったようです。

「奉公」の意味②雇われて働くこと

「奉公」とは、“雇われて働くこと”も指します。元々は武家の主従関係における家来の義務を表した言葉が、庶民間の雇用関係にも用いられるようになったものです。

奉公する人のことを奉公人と呼び、奉公の期間によって終身奉公や、年数を限って奉公する年季奉公などと区別されていました

年季奉公は、徒弟奉公でも採用されていたスタイルです。多くは住み込みで食事・日用品などが与えられていましたが、ほぼ無給で働く代わりに職業技能を身に付けることができるというものでした。

「奉公」の読み方は”ほうこう”

「奉公」の読み方は、“ほうこう”です。

「奉公」の種類別の使い方とは?

「奉公」は現代の従業員の仕事

「奉公」をわかりやすく説明すると、現代の従業員が行っている仕事にあたります。つまり会社などに雇われており、雇用主の指揮・命令に従う義務がある人のことです。「奉公」の種類は雇用主が誰であるか(主君/雇用主)によって大別され、使い方における注意点もそこにあります。

「奉公」の使い方がわかる例文

「奉公」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 封建社会の「奉公」
    • 謡曲「鉢木(はちのき)」は、鎌倉時代の御恩・奉公の様子がよく描かれている作品だ。
    • 赤穂浪士の討ち入りが評判を呼んだのは、主君の死後も奉公を貫いたことへの驚きが理由だろう。
  • 雇われる意味での「奉公」
    • 松下幸之助氏の商売の原点は、9歳で奉公に上がった大阪・船場での6年間にあったということだ。
    • かつての商家では、自分の息子ではなく奉公人にのれん分けを行う事例が少なくなかった。

「奉公」を使った四字熟語とは?

「滅私奉公」とは私心なく公に奉仕すること

「滅私奉公(めっしほうこう)」は、私心を捨てて公のために尽くすことを表した四字熟語です。封建社会における「奉公」では、いざとなれば命を捨てても主君に尽くすことが義務付けられていました。

昭和の高度成長期には、サラリーマンが会社のために私生活を省みず仕事に邁進していましたが、これも「滅私奉公」と呼ばれたものです。

「奉公守法」とは公務員の務め

「奉公守法(ほうこうしゅほう)」は公務を遂行し法を順守することで、公共・公衆のために働く公僕としてのあるべき姿を表している言葉です。

「滅私奉公」との違いは主に公務員に対して使われるという点にあることから、「奉公滅私」は公務員版の「滅私奉公」といえます。

「丁稚奉公」とは幼少の者が下働きすること

「丁稚奉公(でっちぼうこう)」とは、丁稚として働くことです。丁稚は商家で年季奉公する子どものことを指しており、下働きとして住み込みで働いていました。

基本的に無給でしたが食事や衣類は与えられ、礼儀作法や商人としてのノウハウを学ぶことができるなどのメリットもありました。また、有能であればのれん分けされて自前の店を持つこともできたのです。

「奉公」の類語とは?

類語①「忠勤」とは誠実に仕事をすること

「忠勤(ちゅうきん)」とは、誠実に仕事をすることを表した言葉です。「忠」という文字には”誠実・まじめ”という意味が、「勤」には”つとめ・仕事をする”という意味があり、両方の文字があわさって「忠勤」という熟語を構成しています。

雇われて働くことを指す「奉公」には勤務態度についての意味合いはありませんが、封建社会での「奉公」は「忠勤」であることが必須でした。

類語②「近侍」とは主君のそばにお仕えすること

「近侍(きんじ)」とは、主君のそば近くでお仕えすること・人のことです。「侍」には”貴人のそばに謹んで仕える”という意味があり、「近」を伴って熟語を構成しています。「近侍」の具体例としては、織田信長とともに本能寺で戦死した森蘭丸が有名です。

「近侍」は「奉公」に含まれるものですが、いざというときには盾となって主君を守らなければならないため、選りすぐられた家臣が務めるポジションといえます。

類語③「挺身」とは身を投げ打って物事にあたること

「挺身(ていしん)」とは自ら率先して身を投げ打ち、リスクを省みず物事にあたることを指した言葉です。「挺」という文字には”先に抜け出て前に進む”という意味があり、身体を表す「身」とあわさって熟語を構成しています。

「挺身」は「奉公」と違い、雇用や契約関係の有無に関係なく、困難で危険がともなう物事に対して用いられる言葉です。

まとめ

「奉公」の意味と種類別の使い方をはじめ、四字熟語や類語についても紹介しました。「奉公」は「滅私奉公」に代表されるように、前時代的な言葉と思われがちです。

しかし戦国時代の武将を見てもわかるように、奉公先が変わるとそれまでの主従関係も解消されます。つまり、「奉公」は契約に基づいた意外とドライなものなのです。