「跋扈」は難しい文字が使われている割に、よく知られている言葉です。四字熟語の「跳梁跋扈」は、アニメやゲームなどにも登場しています。この記事は「跋扈」の由来・語源のほか、さまざまな四字熟語・類語なども交えて紹介しており、語句の意味を理解するために役立つ内容となっています。
「跋扈」とは?
「跋扈」の意味は”ほしいままに振る舞うこと”
「跋扈」の意味は、“思うがままに振る舞うことで、そのような行動が横行している様子も指すもの”です。
「ほしいまま・横行」という説明が示すように、「跋扈」するのは良くないものであることがわかります。
「跋扈」の読み方は”ばっこ”
「跋扈」の読み方は、“ばっこ”です。
「跋扈」の由来は”後漢書”
「跋扈」は、中国の「後漢朝」に由来する言葉です。南朝宋の時代に成立し、二十四史の一つでもある「後漢書」のなかで、「梁冀(りょうき)」という人物についての記述に「跋扈」が見られます。
「梁冀」は外戚として横暴の限りを尽くしていましたが、それを不満に思った質帝が「梁冀」のことを「跋扈将軍」と揶揄したため、梁冀に毒殺されてしまったのです。
「跋扈」の語源は暴れる魚
「跋扈」という熟語に用いられている「跋」には”踏みにじる・踏み越える”という意味があり、「扈」は魚を獲るための竹でできた道具を指しています。
つまり「扈」を越えて飛び跳ねる魚ということから、ほしいままに振る舞うという意味を表す「跋扈」が成り立っているのです。皇帝にまで手を掛ける「梁冀」に、「跋扈将軍」はぴったりのあだ名です。
「跋扈」の使い方がわかる例文とは?
「跋扈」を使った例文
「跋扈」を使った例文をご紹介しましょう。
- 社会に不安や不信が広がる中、それらを利用した悪辣な勢力が跋扈し始めているようだ。
- 目先の利益しか考えない経営者が跋扈していることが、長引く不況の遠因かもしれない。
- 不正受給者が跋扈するような制度では、本当に困っている人を助けることはできないだろう。
「跋扈」を使った四字熟語とは?
「跳梁跋扈」とは悪者が勢力を持ち好き勝手に振る舞うこと
「跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)」とは、悪者が活発に活動して好き勝手に振る舞うことを指す言葉です。
「跳梁」には自由自在に跳ね回るという意味がありますが、「梁」が魚を獲る仕掛けのことも指していることから、「跋扈」と同じような意味合いを持つ熟語といえます。
したがって「跳梁跋扈」は同じ意味を持つ熟語が重なって意味合いを強調している四字熟語で、「跋扈」よりさらに荒れている状態を示すものです。
「飛揚跋扈」とは思いのままに振る舞うこと
「飛揚跋扈(ひようばっこ)」とは、思いのまま振る舞いのさばることです。「飛揚」とは空高く舞い上がることを指しており、規制や拘束などを意に介することなく好き勝手に振る舞う様子を表しています。
また「飛揚」には高い地位に上るという意味もあることから、「飛揚跋扈」は臣下が君主をしのぐ権勢を持ち、ほしいままに振る舞うことを指しても用いられる言葉です。
この意味での類語としては、先の章で紹介した「梁冀」の振る舞いから生じた「梁冀跋扈(りょうきばっこ)」という四字熟語もあります。
「横行跋扈」とはのさばり歩き横暴に振る舞うこと
「横行跋扈(おうこうばっこ)」とは、我が物顔でのさばり歩き横暴に振る舞うことを表した言葉です。
「横行」とは悪事がしばしば行われている様子や自由気ままに歩き回ることを指した言葉で、悪者や強者が好き勝手な振る舞いを続けている状態を示しています。
「跋扈」の類語とは?
類語①「氾濫」は好ましくないものが出回ること
「氾濫(はんらん)」は、豪雨などによって川の水があふれ出すことを指す言葉です。熟語に用いられている漢字の「氾」「濫」はともに、「広がる・あふれる」ことを示しています。
ここから転じて「氾濫」は、良くないものが大量に出回ることを表すときにも用いられています。
類語②「蔓延」は良くないものがはびこること
「蔓延(まんえん)」の意味は蔦や葛などのような蔓性の植物があたり一面に広がってはびこることです。
一般的には病気や良くない習慣・思想などが、とめどなく広がることを指します。なお「蔓延」に送り仮名の「る」を加えて、「はびこる」と読みます。
類語③「弥漫」は良くないものが広がっていること
「弥漫(びまん)」は、広く行き渡ることを指した言葉です。熟語に使われている漢字の「弥」「漫」は、ともに広がり満ちることを表していますが、好ましくない状態や風潮などが広がっているときに用いられます。
疾患が広範囲に広がっており患部を限定できない状態を「弥漫性」といいますが、「弥漫」という言葉が持つニュアンスをよく表しています。
類語④「跳梁」は良くないものが幅を利かせていること
四字熟語の「跳梁跋扈」で紹介したように、「跳梁」は「跋扈」の類語にあたる言葉です。ここまでに紹介した「氾濫」「蔓延」「弥漫」に比べると、「跳梁」は気ままに動き回っている「動的」な様子が強く表れており、「跋扈」に最も近い類語といえます。
まとめ
「跋扈」の意味・語源と使い方のほか、「跳梁跋扈」をはじめとする四字熟語や類語も紹介しました。「跋扈」は良くないものが規範などを意に介さず、勢いよく飛び越える様を表しており、良いものや静かにゆったりと広がる様に対しては用いられません。
したがって「〇〇が跋扈する」とした場合、否定的な意味合いを持つことになる点に注意が必要です。