「早急」という言葉は、ビジネスの現場でよく見聞きするものです。しかし読み方が二通りあるため、どちらを使えばよいのか悩ましい場面があるかもしれません。この記事は「早急」の正しい読み方と意味のほか、「至急」「迅速」との違いや他の類語についても紹介しており、語句の用法がよくわかる内容となっています。
「早急」とは?
「早急」の意味は”大変急なこと”
「早急」の意味は、“大変急なこと”です。非常に急ぐことやその様子を指す言葉です。きわめて差し迫っていて、急を要する場合に用います。
熟語に用いられている「早」という文字には、”すみやかに・すぐに”という意味を表しており、もう一つも文字である「急」には”いそぐ・差し迫っている”ということを表し、これらの文字があわさって「早急」の意味を構成しています。
「早急」を使った例文
「早急」を使った例文をご紹介しましょう。
- クレームへの対応を早急に行うことで、問題を早期に解決することができるだろう。
- この案件は早急に処理する必要があるので、今すぐ取り掛かってほしい。
- 早急な対応のおかげで父は心肺停止から蘇生でき、今はこうして元気に暮らせている。
「早急」の読み方とは?
「早急」の正しい読み方は”さっきゅう”
「早急」の正しい読み方は”さっきゅう”です。「早」には”早速(さっそく)”という熟語が示すように、「サッ」という読みもあります。「早」の読み方は「ソウ」が一般的ですが、NHKでも「さっきゅう」を正しい読み方としています。
「早急」を”そうきゅう”と読む人は9割
「さっきゅう」が正しい読み方であるにもかかわらず、「早急」を”そうきゅう”と読み人は9割にも上ります。つまり、ほとんどの人が誤った読み方をしていることになるのです。
正しい読み方より誤った読み方のほうが広まって一般化していくことは、「出生(〇しゅっしょう。×しゅっせい)」や「重複(〇ちょうふく・×じゅうふく)」などの事例にみられるようによくあることです。
「早急」の読みはどちらでも構わない
「そうきゅう」のように、誤読が標準化した読み方を「慣用読み」といいます。したがって「そうきゅう」という読み方も間違いにはあたらず、「さっきゅう」と同じ意味で使っても問題はありません。
正式な場面では正式な読みを用いた方が無難ですが、その場で慣用読みが一般化しているようであれば慣用読みを用いるというように、臨機応変な使い分けが必要です。
「早急」と「至急・迅速」との違いとは?
「至急」とはきわめて急ぐ必要があること
「至急(しきゅう)」とは、きわめて急ぐ必要があることやその様子を表した言葉です。「至」という文字には、”この上ない・きわめて”という意味があり、「至急」という熟語が持つ緊急さを示しています。
「至急」は「早急」より切羽つまった場面で用いられる言葉であり、最優先で対応しなければならないものです。したがってメールの件名に【至急】と書かれているものは、すぐに内容を確認しておく必要があります。
なお、「大至急」とすることでもっと緊急性を高めることもできますが、みだりに使わないように注意したいものです。
「迅速」とは物事の進み具合がとても速いこと
「迅速(じんそく)」とは、物事の進み具合や行動がとても速いことやその様子を指す言葉です。「迅」「速」のいずれの文字にも”すばやい・すみやか”という意味があり、重ねて用いることで熟語の意味を強めています。
「迅速」と「早急」には、いずれも”急ぐ・素早く”という意味合いがありますが、「迅速」は動きや変化の速度が速いことを表しています。しかし「早急」や「至急」は、早く取り掛かり急いで片付けるというニュアンスがあるのです。
たとえば、「迅速に対応する」という場合には処理速度が速いことを指し、「早急に対応する」という場合にはすぐに取り掛かることを指しています。
「早急」の他の類語とは?
類語①「緊急」とは”重大ですぐに対応する必要があること”
「緊急(きんきゅう)」とは、重大で即座に対応する必要があることやその様子を指した言葉です。「緊」という文字には、「差し迫る」という意味があり、「急ぐ」という意味の「急」をあわさって熟語を構成しているのです。
「緊急」は「早急」よりもっと重大で、何をおいても対応しなければならないような事態に対して用いられます。
類語②「火急」とは”火のついたような差し迫った状態にあること”
「火急(かきゅう)」とは、火が燃え広がるように差し迫って急を要する状態やその様子を表した言葉です。
火が燃え広がっているときには、一秒一分を争って消し止めなければなりません。そのような状態を指したものが「火急」で、「早急」より切羽つまった状態のときに用いられます。
類語③「即刻」とは”すぐさま”という意味
「即刻」は、”すぐさま・今すぐ”という意味の言葉です。「即」という文字は、”すぐに・ただちに”ということを表しており、時間のことを指す「刻」を伴って熟語を形成しています。
「即刻」は「早急」と同様に、すぐに取り掛かるという意味合いが強い言葉で、事の重大さは含まれていません。したがって、「早急に対応します」を「即刻対応します」と言い換えることが可能です。
まとめ
「早急」の正しい読みと意味のほか、「至急・迅速」との違いや他の類語についても紹介しました。「早急に」取り掛からなければならない仕事ばかりになると、何から手を付ければよいかわからなくなります。
優先順位を誤らないようにするとともに、仕事の前倒しなどを行うことで手持ちの案件をできるだけ減らしておくようにするなど、できるだけ余裕を持って仕事を行えるようにする工夫が必要でしょう。