「決壊」の意味と使い方とは?「崩壊」や「氾濫」との違いも解説

「決壊」は、台風シーズンによく見聞きされる言葉です。風水害に関連している言葉として「崩壊」や「氾濫」がありますが、「決壊」とは意味合いが少し違います。この記事では「決壊」の意味と使い方のほか、「崩壊」や「氾濫」との違い、そのほかの類語についても解説しています。

「決壊」の意味とは?

「決壊」の意味は”堤防やダムが切れて崩れること”

「決壊(けっかい)」の意味は、“堤防やダムなどが切れて崩れること”です。「決」という文字には”きれる・さける”という意味が、「壊」には”こわれる・やぶれる”という意味があります。

堤防決壊に至るメカニズムは1つではありません。上昇した河川の水が堤防を越えて流れ出すことにより、堤防の裏側が削れて崩れる「越水」。そのほか、水が染み込むことによる「浸透」や流水に削られることによる「浸食・洗堀」などがあり、いずれも大きな災害を引き起こします。

「決壊」には守りが崩れるという意味も

堤防は、河川の水や高潮があふれないようにするために、河川の左右岸や海岸に築造した建造物のことです。

堤防が「決壊」すると、流域を水害から守れなくなります。このことから「決壊」は比喩的に、守りが崩れることを表したいときにも使われるのです。

「決壊」の使い方と例文とは?

「堤防などが崩れる」という意味の使い方

「決壊」を”堤防などが崩れる”という意味で使った例文をご紹介しましょう。

  • 先日のゲリラ豪雨によって堤防が決壊したため、流域一帯は甚大な被害を受けてしまった。
  • 弘法大師が修築した満濃池は、決壊防止のためアーチ型の堤と余水吐きが工夫されている。

「守りが崩れる」という意味の使い方

「決壊」を”守りが崩れる”という意味で使った例文をご紹介しましょう。

  • 敵チームの凄まじい波状攻撃によって、鉄壁と謳われたディフェンスは遂に決壊した。
  • 理不尽なクレームに我慢を重ねてきた彼の心は、決壊寸前になっていたようだ。

「決壊」と「崩壊」の違いとは?

「崩壊」とはくずれてこわれること

「崩壊(ほうかい)」とは、くずれてこわれることを表した語句です。熟語に使われている文字「崩」と「壊」の訓読みがそのまま語句の意味を表しています。

ビルなどの建造物や氷山などの自然物のほか家庭や人間関係などに対しても、「崩壊」を用いることができます。

なお、放射性元素の原子核が、放射線(α線・β線・γ線)を出すことにより安定した原子核に変化する現象や、素粒子が他の素粒子に変化することも「崩壊」です。

「崩壊」とは崩れ落ちるイメージ

「決壊」も「崩壊」も壊れてしまうという点においては同じですが、両者の違いは熟語に使われている文字である「決」と「崩」の意味に由来します。

「決壊」は「決」が持つ「きれる」という意味合いのため、対象となるものの一部が切れることによって壊れることを表す言葉です。一方の「崩壊」は、対象となるものの全体が崩れ落ちて原型を留めない状態になることを指しています。

「決壊」と「氾濫」の違いとは?

「氾濫」とは水があふれかえること

「氾濫(はんらん)」とは、大雨などによって水があふれかえることを指しています。長雨や集中豪雨などにより大量の雨が河川やため池に集まったときに、水が堤を越えてあふれ出し周囲が水浸しになってしまうような現象です。

ともに「ひろがる・あふれる」という意味を持つ文字である「氾」「濫」があわさることで、「氾濫」という熟語を構成しています。

「良くないものが広がる」という意味もある

「氾濫」には水があふれることだけでなく、「情報の氾濫」や「偽物の氾濫」というような用法もあります。

熟語に使われている「濫」に”みだりに・はびこる”という意味もあることから、「氾濫」は好ましくないものがひろがっている様子を表したいときに使われることが一般的です。

「決壊」と「氾濫」の関係

ダムや堤防が「決壊」することにより、河川の「氾濫」が引き起こされることがよくあります。しかしダムなどが「決壊」しなくても、河川が「氾濫」することもあるのです。

ゲリラ豪雨などで排水しきれない水があふれ、道路が冠水するような状態を指す「内水氾濫」は、「決壊」によるものではありません。また、堤防が「決壊」していなくても河川が増水してあふれ出す「外水氾濫」のようなケースもみられます。

「決壊」の類語とは?

類語①「倒壊」とは建物が倒れること

「倒壊(とうかい)」とは、建物が災害などによって壊れ倒れることを表した言葉です。堤防やダムなどのような建造物が壊れて倒れる場合には「崩壊」がよく使われていますが、アメリカのWTC(ワールドトレードセンター)ビルについては、一般的に「倒壊」ではなく「崩壊」が用いられています。

類語②「崩落」とは建造物が崩れ落ちること

「崩落(ほうらく)」とは、建造物などが崩れ落ちることを指しています。石垣やトンネルなどに対して用いられますが、「崩落」の原因は地震などの天災のほか、構造の経年劣化や不適切な施工などさまざまです。なお、金融相場で値が崩れ落ちるかのように急落することも「崩落」といいます。

まとめ

「決壊」の意味と使い方のほか、「崩壊」や「氾濫」との違いや他の類語についても解説しました。「決壊」は災害や事故などによって建造物が壊れることを表した言葉のなかのひとつですが、主に堤防やダムのような堤状の建造物の一部が破れるように壊れることを指して用いられています。

つまり「決壊」は「崩壊」や「氾濫」と言い換えられますが、「崩壊」や「氾濫」を「決壊」と呼ぶことは誤りとなるのです。