「ヴィシュヌ」とは?「シヴァ」や仏教との関係・化身について解説

「ヴィシュヌ」とはインド神話に登場する最高神の1柱です。人々に危機が訪れると、「アヴァターラ(化身)」の姿で地上に降り立つと言われています。

この記事では「ヴィシュヌ」と「シヴァ」「ブラフマー」との関係や、仏教での呼び名を紹介します。くわえて、「ラクシュミー」や「クリシュナ」との関係も解説しましょう。

「ヴィシュヌ」とは?

「ヴィシュヌ」とは”インド神話の神様”

「ヴィシュヌ」とは、“インド神話に登場する男神”です。最高神の1柱であるとともに、「維持」を司る神として信仰されています。青い肌に4本の腕をもつ姿で描かれることが多く、腕にはホラ貝や蓮華などヴィシュヌを象徴する物が持たされています。

「ヴィシュヌ」は蛇に寝そべる姿で描かれる

「ヴィシュヌ」を題材にした絵画や像では、蛇の上にヴィシュヌが寝そべる姿が多く見られます。蛇の名を「アナンタ」といい1,000の頭をもつと言われていますが、絵画や像では9や7の頭をもつ姿で描かれます。

物語の1つによると世界が創られる前、そこには原初の水とヴィシュヌ、アナンタのみが存在していました。ヴィシュヌから創造を司る神「ブラフマー」が誕生し、様々なものが創られます。そして、世界に終わりが訪れるとき、全てが破壊されてもヴィシュヌとアナンタが残ると言われています。

「ラクシュミー」はヴィシュヌの妻

「ラクシュミー」はヴィシュヌの妻となった女神です。「美」や「豊穣」を司る女神で、ヴィシュヌと同様に4本の腕を持ちます。絵画や像では大きな蓮華に乗っており、手には水連をもつ姿で描かれます。また、ラクシュミーが「富」と「幸運」を司る女神でもあることから「貯金箱」や「金貨」と一緒に描かれることもあるようです。

神話のなかでは天地創造にともなって生まれたという話や、神の敵「アスラ」に連れ去られそうになる話があります。

ヴィシュヌ・シヴァ・ブラフマーの関係とは?

ヴィシュヌとシヴァ・ブラフマーは同一である

「ヴィシュヌ」と同じ最高神である「シヴァ」と「ブラフマー」は同一の神であり、3柱で1つの存在です。「ヴィシュヌ」と「シヴァ・ブラフマー」を同一神とするのは、ヒンドュー教の「三神一体(さんしんいったい)」という教えにもとづきます。

1つの存在から「創造」を司るブラフマー、「維持」を司るヴィシュヌ、「破壊」を司るシヴァが生まれ、同一の神であることから3柱の力関係は同等とされています。

■関連記事
「シヴァ神」とは?「ヴィシュヌ神」との関係や日本での名前も解説
「ブラフマー(梵天)」とは?ヴィシュヌ・シヴァとの関係も解説

現代ではヴィシュヌとシヴァが多く信仰される

3柱で1つの存在とされる「ヴィシュヌ・シヴァ・ブラフマー」ですが、現代では「ヴィシュヌ」と「シヴァ」が主に信仰されています。ヒンドュー教の大半をヴィシュヌ派とシヴァ派が占める一方で、宇宙そのものとされるブラフマーは抽象的であるとして信仰が薄れました。

「ヴィシュヌ」の化身とは?

アヴァターラはヴィシュヌの化身を指す

「ヴィシュヌ」は世界が危機にさらされたとき、化身の姿で地上に現れると言われています。ヒンドュー教ではヴィシュヌの化身を「アヴァターラ」と言い、とくに偉大な10の化身を「ダシャーヴァターラ」と言います。

大きな魚の姿で大洪水から人々を救ったり、猪の姿で水につかった大地を引き上げたりと、ヴィシュヌは様々な姿の化身「アヴァターラ」として人々を助けました。

「クリシュナ」はヴィシュヌの8番目の化身

ヒンドュー教で最も人気があると言われる神「クリシュナ」も、ヴィシュヌのアヴァターラです。クリシュナは8番目の化身であり、武勇に長けた英雄として描かれています。インド神話では悪王「カンサ」を倒す物語が有名です。

また、神話のなかでは最後を迎えたクリシュナが、ヴィシュヌの姿に戻って天へ帰ったと言われています。

仏教における「ヴィシュヌ」とは?

仏教では「那羅延天」と呼ばれる

「那羅延天(ならえんてん)」とは仏教での”ヴィシュヌ”の呼び名です。「那羅延天」は「ヴィシュヌ」の別名である「ナーラーヤナ」に由来しており、仏教を守護する神として強大な力を持ちます。

また、仏教の教えを記した経典では「ヴィシュヌ」のことを「毘紐天(びちゅうてん)」とも表しています。

「ブッダ」はヴィシュヌの9番目の化身

仏教を開いた「ブッダ」は、ヴィシュヌの9番目の化身だと言われています。ヴィシュヌは神々の敵である「アスラ」を惑わせるため、ブッダとして仏教を開きます。仏教はヒンドュー教の教えである「ヴェーダ」を否定する教えであるため、アスラを地獄へ落とせると考えたのです。

まとめ

「ヴィシュヌ」とはインド神話に登場する神様で、最高神の1柱です。同じ最高神の「シヴァ」「ブラフマー」とは同一の神であり、ブラフマーが「創造」を、ヴィシュヌが「維持」を、シヴァが「破壊」を司ります。

ヴィシュヌは世界の危機に化身(アヴァターラ)をつかって地上に降り立つとされ、インド神話で有名な「クリシュナ」や仏教を開いた「ブッダ」もヴィシュヌの化身だと言われています。

ABOUT US
hana
大阪在住の新人ライターです。学生時代にビジネスマナーや医療事務・秘書などの検定を取得し、前職は医療秘書として医院勤めでした。料理とスポーツが得意なので、いつか記事にできたらなと思っています。よろしくお願いします。