「風説の流布」の意味と使い方とは?「デマ」との違いや類語も

「風説の流布」とは金融用語ですが、M&Aに絡む有名なIT関連企業が引き起こした事件によって、一般の人にも知られるようになりました。この記事では、「風説の流布」の意味と処罰の対象となる要件、語句の使い方のほか、「デマ」との違いや類語についても紹介しています。

「風説の流布」の意味とは?

「風説の流布」の意味は”株価の変動を意図して偽情報を流すこと”

「風説の流布(ふうせつのるふ)」の意味は、“株価の変動を意図して虚偽の情報を流すこと”です。

投資家の判断を誤らせないようにするため、金融商品取引法では、企業に対するディスクロージャー(企業内容開示制度)が定められています。これにより企業は財務諸表だけでなく、株価に影響を及ぼすことが考えられる情報についても適宜開示しなければなりません。

また、投資家の判断を誤らせることを意図した偽情報を流すことは金融商品取引法に違反する不正行為となります。

「風説の流布」とは”根拠のないうわさを広めること”

「風説」とは、世間に広まっているうわさのことで、嘘や大げさな表現が根拠のないまま言いふらされているものです。もしその内容がたまたま事実だった場合でも、合理的な根拠がないままに広められたものであれば、「風説」にあたります。

「流布」は、ある説や情報などが広く世間に行き渡っていることを指す言葉です。「流布」という言葉そのものは単に「広がっていく」ということを表しているものであり、ネガティブな意味はありません。なお「流布」を”りゅうふ”と読み誤らないよう、ご注意ください。

「風説の流布」の要件とは?

「風説の流布」の要件は主に3つ

「風説の流布」で処罰の対象となる要件は、主に以下の3つです。

  1. 相場の変動を図る目的を持ち
  2. 根拠のない情報やうわさを
  3. 不特定多数の人々に広まる状態にする

「風説の流布」は「目的犯」であるため、相場の変動を図るという目的がなければ処罰の対象にはなりません。しかし相場が変動しなくても、何らかの影響を与えたという事実があれば課徴金を課すことができるように法改正が加えられました。

メールや口頭の場合でも「風説の流布」になることも

「流布」とは本来、不特定多数の人々に伝わるようにすることを指します。しかし、特定の人へのメールや少人数との会話であっても、内容が外部に漏れ伝わる可能性があれば「風説の流布」に該当するものとみなされるのです。

明白に意図した虚偽ではなくても、流した情報が合理的な根拠がない場合には「風説の流布」にあたり、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せれられます。

悪評の書き込みも危険

SNSやネットへの書き込みは、誰でも簡単に行うことができます。しかし、軽い気持ちで書き込んだ悪評が、予想を超えて拡散してしまうこともありえるのです。

このような株価の変動を目的とするものではないケースでも、刑法の「業務妨害罪」や「信用毀損罪」などで逮捕される危険性があり、注意が必要です。

「風説の流布」の使い方と例文とは?

「風説の流布」は金融の業界用語

「風説の流布」は金融用語として用いられることがほとんどです。新聞やニュースでときおり見聞きする機会がある程度で、金融業界の関係者でない一般の人にはややなじみが薄い言葉といえます。

「風説の流布」を使った例文

「風説の流布」を使った例文
  • 彼が流した偽情報は株価に影響を与えないとされたため、風説の流布とはみなされなかった。
  • SNSへ何気なく投稿した記事であっても、風説の流布に該当すれば罪に問われるだろう。
  • 風説の流布を監視する証券取引等監視委員会(SEC)には、残念ながら捜査の権限はない。
  • M&Aに絡む風説の流布の疑いでIT関連企業の社長らが逮捕されたことは、記憶に新しい。

「風説の流布」と「デマ」との違いとは?

「デマ」とは”フェイクニュース”のこと

「デマ」とは”フェイクニュース”のことで、本来は政治的な意図をもって流す情報を指していました。しかし現在では政治的な意図は問わず、根拠のないうわさを指して用いられる事例が多くみられます。

扇動行為や扇動的な情報を意味するドイツ語の「Demagogie(デマゴギー)」や、英語の「demagogy」を短縮した言葉です。

「デマ」は金融に限らず用いられる

偽情報という意味での「デマ」は、「風説の流布」における「風説」にあたるといえるものです。しかし「デマ」は情報そのものを指しており、「風説の流布」のように”広める”という意味は含みません。

また、金融用語としての用法が一般的である「風説の流布」とはちがい、「デマ」は政治から日常生活まで幅広いシチュエーションで用いられています。

「風説の流布」の類語とは?

類語①「風評被害」とは世間の評判によって受ける被害のこと

「風評被害(ふうひょうひがい)」とは、世の中に広まった根拠のないうわさや評判によって受ける被害のことです。

「風評」とは世間の評判やうわさのことで、明確な根拠はありません。しかし、事故や事件の報道が不適切だった場合など、無関係な団体や個人に責任や問題があるかのようなうわさが広がったり、商品の売れ行きに影響が及んだりします。

類語②「流言飛語」とは口伝で広がる根拠のない情報

「流言飛語(りゅうげんひご)」とは、事実ではない伝聞や根も葉もないうわさ話のような、口伝で広がる根拠のない情報のことです。

口から口へと伝わる間に尾ひれがつくことにより、時間の経過とともに事実との乖離が大きくなる傾向がみられます。

まとめ

「風説の流布」の意味と使い方について、「デマ」との違いや類語もふくめながら紹介しました。ネットで気軽に証券取引を行えるようになったことから、相場の世界でも「風説の流布」が起きやすくなっています。

誰もが事件の当事者になりかねないというリスクが高まっていることから、社会的信用を失わないためにもSNSなどに不用意な書き込みをしないよう心掛けることが大切です。