「案件」という言葉は、ビジネスシーンでよく使われていますが、「問題」や「業務」などさまざまな意味合いで理解されています。この記事は「案件」の意味と使い方のほか、「仕事」や「事案」との違いや類語も紹介しており、用法について理解を深めることができる内容となっています。
「案件」とは?
「案件」の意味は”対処すべき事柄のこと”
「案件(あんけん)」の意味は、“対処すべき事柄のこと”です。今現在取り掛かる必要がある事柄で、検討や調査などの対象となっているものを示しています。
「案件」に使われている「案」という文字には”かんがえる・しらべる”という意味があり、「ものごと・ことがら」を指す「件」をともなって、”考えたり調べたりする対象となる事柄”のことを表す熟語の意味合いを作っています。
「案件」は英語の”matter”に該当
「案件」は、英語の”matter”に該当する言葉です。「matter」は”材料”という意味の「material」と同じ語源の単語で、”物事の根源”という大意を持っています。
ほかの英訳としては、「issue(論点)」や「topic(テーマ)」などがあり、いずれも取り扱いの対象となっているもののことを指すものです。
「案件」のビジネスやネットでの使い方と例文とは?
ビジネスでの「案件」は商談や企画などの単位のこと
ビジネスシーンで用いられる「案件」とは、商談や企画など業務で取り扱う個々の事柄のことで、「会議であがった案件を再検討する」というように使います。
また営業活動における受注する業務という意味合いもあり、「取引先開拓につながる案件をみつけたい」というように使うことができます。
具体的には「課題・業務・プロジェクト」などを指しますが、法律や警察関係では「訴訟事件」という意味でも使われています。
ネットの「〇〇案件」は”〇〇するような事柄”
ネット上で「スクショ案件」「ブチ切れ案件」という言い回しを見掛けます。これは「スクリーンショットしたい画像や情報」「堪忍袋の緒が切れるようなできごと」という意味合いです。
ネットスラングやオタク用語にあたるもので、公的な場面で使われる場合の「案件」とは、趣が異なる用法といえます。
「案件」を使った例文
「案件」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
- 目下複数の案件を抱えているため、落ち着くまで我々の休暇はお預けになるだろう。
- 会長の肝煎りでスタートしたこの案件だが、軌道に乗るまでにはもうしばらく掛かりそうだ。
- 非公開の求人案件にアクセスするために、エージェントを活用することも考えたい。
- 案件管理ツールを導入したことで営業活動に専念できるようになり、成約率が大幅に向上した。
- SNSにあげられたブチ切れ案件で、あり得ないと思えるほどとんでもない話を見つけた。
「案件」と「仕事」との違いとは?
「仕事」とは”職業”のこと
「仕事」は、”生計を立てるために従事する活動・職業”という意味合いで最もよく使われていますが、「何かを成し遂げるための行動」や「行動した結果・業績」などの意味もあります。
「やりがいのある仕事」は職業そのものにやりがいを感じているケースと、仕事の一環として行う活動のひとつを指しているケースの両方の意味を持つものです。
「案件」は”仕事”のなかのひとつ
「仕事」は、さまざまな「業務」で成り立っており、その「業務」のなかにいくつかの「案件」があります。つまり「案件」は「仕事」のなかに含まれるもので、「案件」も「仕事」といってよいものなのです。
フリーランスの方で「案件」ごとに「仕事」を請け負うという働き方をされている場合、「案件」=「仕事」となります。
「案件」と「事案」との違いとは?
「事案」とは問題となっている事柄のこと
「事案(じあん)」とは、問題となっている事柄や今後問題になると思われる事柄のことを指した言葉です。
一例としては「声かけ事案」「不審者事案」のように「〇〇事案」という形で見聞きされるものがあげられ、犯罪につながりかねない怪しい出来事への注意や対策の検討を喚起するときに用いられています。
「事案」は政治や法律的な事柄
「事案」は、もともと法律用語です。政治や法律にかかわる事柄に対して用いられており、現在でも行政関連の文書でよく見受けられます。
問題が顕在化していていたり、今後そうなるであろうと思われたりすることに用いられる言葉ですが、どう対処すべきかを検討する段階に入っているものです。
一方の「案件」の対象は問題に限らず、業務そのものや業務上の課題などに対しても用いられます。
「案件」の類語とは?
類語①「課題」とは問題解決のためのテーマ
「課題(かだい)」とは、問題を解決するために設定されるテーマのことです。「案件」と「課題」は同義語的に用いられていますが、「案件」を細分化して抽出したものが「課題」という意味合いもあります。
たとえばプロジェクトAという「案件」のなかに、課題として「a」「b」「c」があるといったニュアンスです。
類語②「事例」とは具体例として示すことができる事柄
「事例(じれい)」とは具体例として示すことができる事柄のことで、すでに起きている出来事です。「案件」は、進行中またはこれから取り掛かることがらのことを表します。
それに対し「事例」は、過去において実際にあった事柄・出来事を指しているという違いがあります。つまり、対処が完了した「案件」が「事例」となるのです。
類語③「タスク」とは遂行すべき仕事や作業のこと
「タスク」とは、課せられた仕事や職務のことです。「作業・職務」という意味の英単語「task」をカタカナ表記した言葉で、IT分野ではコンピューターで処理される仕事の最小単位を指しています。
「案件」と似た意味合いで使われている言葉ですが、「タスク」はジョブを細分化したものと位置づけされていることから、比較的短期間で完了するものに対して用いられるものです。
まとめ
「案件」の意味と使い方について、「仕事」「事案」との違いや類語もふくめながら紹介しました。「案件」は一大プロジェクトや重大なクレームから個々の課題や事柄に対しても使うことができる言葉です。
隠語的に周知の問題を指すこともありますが、背景を理解していない人に対して用いると誤解を招きかねないため、注意する必要があります。