「履行」の意味と使い方とは?「遂行」との違いや類語も紹介

「履行」という言葉を日常会話で耳にすることは、まれなものです。しかし、不動産や金銭貸借の契約ではしばしば登場するため、知っておいた方がよい言葉でもあります。この記事は「履行」の意味と使い方のほか、「遂行」との違いや類語などについて紹介しており、語句への理解を深めるために役立つ内容です。

「履行」の意味と使い方

「履行」とは実行すること

「履行(りこう)」とは、決めた事などを実際に行うことを指す言葉です。「履」という漢字は、「はきもの」や「道を移動する」ことを表した複数の漢字を組み合わせて作られた会意文字で、「ふみおこなう」つまり「実際に行う」という意味を持っています。

「履歴」や「履修」などの熟語は、「履」という文字が持つ「実際に行った」という意味合いが伺えるものです。

法律用語としての「履行」

「履行」は、債務者が債務の給付を実現することを指す法律用語としても用いられています。債務とは債権者に提供する義務がある特定の行為や給付のことです。債務の具体例としては金銭の支払いだけに限らず、物品の引き渡しや労力の提供などもあります。

「履行」は不動産用語にも

「履行」は不動産用語としてもしばしば登場する言葉ですが、「履行行為」といった場合には売買契約に基づいて物件の所有権の移転を行うことを指します。

「履行不能」は、売主の過失などにより建物などの物件が滅失し、引き渡しができなくなることです。この場合、契約の「履行」や強制を行うことはできないため、契約を解除して損害賠償を請求します。なお、金銭債務においては「履行不能」が認められることはなく「履行遅滞」となります。

「履行」を使った例文

  • 手続きに予想以上の時間が掛かってしまったので、履行期間の延期を申し込んだ。
  • 履行の期限を守ることは、債務者として怠ってはならない大切なことだ。
  • 支払い能力があるにも関わらず、履行の遅滞を長く続けているのは悪質だ。
  • 提案事項の履行が確認できなかったため、受注者にペナルティとして違約金を請求した。
  • 債務者の債務不履行によって債権者が損害を受けた場合には、賠償請求が可能だ。

「履行」の類語や言い換え表現

「遵守」とは法律などを守りしたがうこと

「遵守(じゅんしゅ)」とは、法律や道徳・習慣などを守りしたがうことを表した言葉です。「遵」には「のっとる・したがう」という意味があり、同じ意味を持った「守」をともなって「遵守」という熟語を形成しています。

「履行」は契約などの決まりを実行することを指していますが、「遵守」のように道徳や習慣は対象となっていません。「遵守」は自主的な意味合いが強く、「履行」より広くゆるやかな対象に用いられる語句といえます。

「弁済」とは借りた金品を返すこと

「弁済(べんさい)」とは債務の一種で、借りていた金品を返すことを指す言葉です。「履行」が債権の効力を表す言葉であることに対し、「弁済」は債権の消滅をとらえた言葉といえます。

つまり債務者によって債務が「履行」されることによって「弁済」となり、債権者の債権が消滅するのです。

「執行」とは実際に行うこと

「執行(しっこう)」とは、職務などを実際に行うことを表した言葉です。法律や命令のほか裁判や処分などの内容を実行することも「執行」と言います。債務者に対して強制的に給付義務を履行させる手続きを指す「強制執行」の略称も、「執行」です。

「実施」とは法律や計画などを実際に行うこと

「実施(じっし)」とは、法律や計画などを実際に行うことを指した言葉です。「実」は「本当に」、「施」は「実際に行う」という意味を持ち、あわさって「実際に行うこと」を指す熟語となっています。

なお「施」には「めぐみをあたえる」という意味もあることから、「実施」は何らかのよい効果が期待されるものについて用いられます。

「履行」と「遂行」の違い

「遂行」とはものごとを成し遂げること

「遂行(すいこう)」とは、ものごとを最後まで成し遂げることを表した言葉です。「遂」という文字には「なしとげる・やりおえる」という意味があり、行うことを指す「行」をともなって「遂行」という熟語を構成しています。

なお「遂行」は、「かんつい」と誤った読みをされているケースが見受けられます。「遂(つい)に」と混同されてのことかもしれませんが、「完遂(かんすい)」「未遂(みすい)」の読みと同様であると覚えておくと、失敗を防ぐことができるでしょう。

「遂行」は義務ではなく意思によるもの

「遂行」には「履行」と同様に「実行する」という意味合いを持っています。しかし、「履行」が契約や約束を実行するという義務に重点を置いたものであることに対し、「遂行」は目的を達成するために最後までやり抜くといった意志に重点を置いたものです。

「履行」を怠った場合、何らかのペナルティを「履行」する必要が発生することが多くみられますが、「遂行」にそのような縛りはありません。

まとめ

「履行」の意味と使い方について、「遂行」との違いや他の類語なども交えながら紹介しました。契約は法的に保護される約束で、法的権利や義務が発生するものです。したがって「履行」を怠った場合、さまざまなペナルティを科せられることになります。

契約の書類は読みづらい体裁であることが一般的ですが、内容をしっかり確認したうえで契約し、「履行」することが大切です。