「FOB」の意味とは?”FCA・CIF”との違いや”Origin”との関係も

「FOB」は、貿易関係の仕事をしている方であれば日常的に接している言葉ですが、それ以外の方が見聞きする機会はまれでしょう。「FOB」のほか「FCA」や「CIF」など、いずれも国際貿易取引を行ううえで大切なものです。この記事では「FOB」の意味をはじめ、「FCA」「CIF」との違いなどについても解説しています。

「FOB」とは?

「FOB」の意味は”本船渡し条件”のこと

「FOB」の意味は、“本船渡し条件”のことです。「Free on Board」の頭文字から取った用語です。船積み貨物を引き渡すときの取引における、「インコタームズ(Incoterms・国際貿易取引条件)」のなかのひとつです。

「インコタームズ」は、国際商業会議所(ICC)が取り決めた国際貿易における契約用語と定義で、売り手(輸出業者)と買い手(輸入業者) 間での法的な責任と費用の負担が決められてます。しかし「インコタームズ」は法律ではないため、強制力がないことに注意が必要です。

「Free on Board」の”Free”は無料

「Free On Board」の「free」は、買い手にとって無料という意味です。「on board」は、船や飛行機に積載していることを表していることから、「FOB」とは荷物を船に積む費用までを売り手が負担し、離岸以降の輸送と保険の手配・費用は買い手が負担するという意味になります。

つまり、荷物を船に積むときに事故などが起きた場合の責任は売り手にあるのですが、売り手が荷物を船に乗せた時点で責任は買い手に移転するのです。

「FOB」は”Freight On Board”の略語

「FOB」は、アメリカ国内の配送に関して使用される「Freight On Board」 の略語であるケースもみられます。商品(Freights)を荷台に載せる(On Board)という意味で、インコタームズでの「FOB(Free on Board)」とは別物です。

なおインコタームズの「FOB」は船舶だけでなく飛行機での輸送においても使われる用語で、商品を船などに積み込むことを指しても用いられます。

「FOB」と「FCA」との違いとは?

「FCA」とは”運送人渡し条件”のこと

「FCA」とは”Free carrier”の略で、「運送人渡し条件」とも呼ばれているものです。「FOB」と同様に「インコタームズ」のなかのひとつで、運送人に渡すまでの費用とリスクは売り手が負担し、それ以降については買い手が負担します。

具体的には輸出の通関手続きを売り手が行い、積み込みから先は買い手が行うというものです。

違いはリスク負担の移転時期

「FOB」と「FCA」の違いは、リスク負担の移転時期です。「FOB」では、コンテナが船に積み込まれた段階でリスクが売り手から買い手に移ります。

一方「FCA」の場合には買い手が指定した運送人にコンテナを引き渡した段階で、売り手から買い手へリスクが移ります。

つまり、コンテナが港に置かれているときに何らかの事故が発生すると、「FOB」の場合だと売り手が責任を負うことになり、「FCA」の場合なら買い手が責任を負うことになるのです。

「FOB」と「CIF」との違いとは?

「CIF」は「FOB」に運賃・保険料を追加したもの

CIFは「Cost, Insurance and Freight」の略で、「運賃保険料込条件」とも呼ばれています。「FOB」と同様に「インコタームズ」のなかのひとつで、輸出港から輸入港までの運賃と保険は売り手が負担し、輸入通関から先の費用は買い手が負担するというものです。

したがって「CIF」は、「FOB」に運賃と保険料を追加したものと考えると、理解しやすくなります。

「CIF」では運賃と保険料を売り手が負担

「CIF」における輸送中の運賃と保険の手配・支払いについての負担は売り手にありますが、貨物の破損や紛失などの危険負担については、船に荷物を積み込んだ時点で買い手に移ります。

売り手は運賃と保険料を抑えることでコスト削減を行うため、「CIF」での輸入においては、保険内容と船のグレードを売主に指示しておく必要があるのです。

「FOB」と「Origin」の関係とは?

「FOB」には2種類ある

「FOB」には、「FOB Origin(FOB shipping point)」と「FOB Destination」の2種類があります。「FOB Origin」は、商品が売り手から離れた時点で商品に対する法的責任は買い手に移ることです。

一方の「FOB Destination」は、商品が買い手または契約書に指定された場所に届くまで売り手が法的責任を負うことを指すものです。

「FOB Destination」はインコタームズのDグループに近いもの

「FOB Destination」は名称に「FBO」とありますが、実際にはインコタームズのDグループ(DAP・DPU・DDP)に近いものです。

「DAP」は”仕向地持込渡し条件”とも呼ばれているもので、売り手の負担は指定先までの輸送費用とリスク、買い手の負担は通関・関税・消費税と積み下ろし作業です。

「DPU」は”荷卸込持込渡し条件”とも呼ばれ、売り手の負担は指定先までの輸送費用とリスクに加え積み下ろし作業、買い手の負担は通関・関税・消費税のみとなります。

「DDP」は”仕向地持ち込み渡し関税込み条件”ともいわれるもので、指定先までの輸送費用とリスク、通関・関税・消費税を売り手が負担し、買い手は積み下ろし作業だけを負担するものです。

つまり「FOB Origin」は本来の「FBO」と同じ意味となりますが、「Destination」が付いた場合には意味が逆になってしまうので、注意する必要があります。

まとめ

「FOB」の意味のほか、「FCA」や「CIF」などとの違いを紹介しました。語句の頭文字となるアルファベット3文字を並べた言葉は覚えにくいものですが、元の語句を押さえておくことで理解と記憶が進みます。

インコタームズそのものには法的拘束力がないので、契約書が大変重要となります。書類の作成や確認を念入りに行い、トラブルの発生を未然に防ぎたいものです。