「媒体」の意味とは?「媒介」との違いや類語もわかりやすく紹介

「媒体」はマーケティングやITの分野だけでなく、物理化学や医学の分野においても用いられている言葉です。しかし、似た言葉の「媒介」と混同されている事例も見受けられます。この記事では「媒体」の意味をわかりやすく解説するとともに、「媒介」との違いや類語・例文なども紹介しているので、ぜひご活用ください。

「媒体」の意味や英語とは?

「媒体」の意味は”伝達の手段となるもの”

「媒体(ばいたい)」の意味は、“伝達の手段となるもの”です。大掴みな意味合いは、「仲立ちするもの」です。一方から他方へと伝達するときの仲介となるものを指します。

「媒」という文字は”仲立ち・仲介”という意味を持ち、頼まれ仲人のことを指す媒酌人という言葉からも、関係を取り持つことがイメージされます。

「媒体」の英語表現は”medium”

「媒体」を英語で表現すると、語源が”中間”という意味を持つ「medium」となります。中間に立って両者を取り持つ様子をイメージすると、理解しやすいでしょう。

「medium」の複数形である「media」は、日本でよく見聞きするカタカナ語の「メディア」として知られている言葉で、「マスメディア」の短縮形としても用いられています。

「媒体」の種類とは?

情報の伝達手段としての古典的「媒体」は紙

手紙や書籍など紙を利用した「媒体」は、伝達手段として昔から使われているものです。スマホや電子書籍などの電子媒体に押されてはいるものの、現在でも雑誌・新聞のほかチラシやカタログ、ダイレクトメールなどの紙媒体は活用され続けています。

なお、電子機器に関わる記憶媒体や記録媒体としてはCD-RやDVD-Rのほか、ハードディスクやUSBメモリなど、通信媒体としては光ファイバーや電波などがあげられます。

「媒質」とは物理的変化を伝える仲介物のこと

「媒質(ばいしつ)」とは、力や波動などの物理的変化を伝える際に「媒体」となる物資を指す言葉です。

たとえば音の場合、物質から発生した振動が空気や水、金属などを介して連続した波のように伝わっていきます。このときの空気や水、金属などのことを「媒質」と呼ぶのです。

「溶媒」とは他の物質を溶かす物質のこと

「溶媒(ようばい)」とは、他の物質を溶かす物質のことを指すものです。工業の分野では通常「溶剤(ようざい)」と呼ばれ、水のほかアルコールやアセトンなどの有機溶媒が用いられます。洗剤や塗料は、目的の物質が溶媒に溶けることを利用して作られたものです。

生物も「媒体」になり得る

マラリアやデング熱などの感染拡大は、蚊が媒体となって起こるものです。ウイルスや原虫などの病原体を持った蚊に刺されることで感染します。ワクチンや治療法がないものもあるため、「たかが蚊に刺されたくらい」などと甘くみていると危険です。

「媒体」の例文とは?

「媒体」を使った例文

「媒体」を使った例文をご紹介しましょう。

  • 社員による手作りチラシは、地域密着で事業を展開する我が社の広告媒体として最強のものだ。
  • SNSを媒体としたマーケティングを検討したが、運用経費が掛かり過ぎるため見送った。
  • 電子媒体の書類は手軽だが、一覧性に勝る紙媒体の魅力は捨てがたいように思える。
  • 記録媒体の大容量化には驚くばかりで、フロッピーを使っていた頃が嘘のようだ。

「媒体」の類語とは?

類語①「手段」とは目的を実現させるための行為・方策

「手段(しゅだん)」とは、目的を実現させるための具体的な行為や方策のことです。「媒体」と「手段」の違いをみるために、「コミュニケーションの『媒体』としてスマホを利用する」と「コミュニケーションの『手段』としてスマホを利用する」を比較してみましょう。

いずれも同じ意味合いを表した文ですが、「媒体」は物を指すことに対し「手段」は物に限らず用いることができるという点が違います。つまりさまざまな「手段」のなかのひとつとして「媒体」があるということです。

類語②「肝煎」とは人の間に立って世話すること・人

「肝煎(きもいり)」とは、人の間に立って世話をすることや人のことをいいます。落語に登場する長屋の御隠居が、もめごとの仲裁などに骨を折る様子をイメージすると理解しやすいでしょう。

「肝煎」の由来となる「肝が煎られるように心をいらだたせる」ことが変化して、神経を使って世話を焼くという意味合いになりました。なお、物質や情報などを伝達する「媒体」とは異なり、「肝煎」は人が人を仲介することに限定されます。

類語③「斡旋」とは交渉や商売の仲立ちをすること

「斡旋(あっせん)」とは、交渉や商売などの間に入ってまとまるように取り計らうことを指した言葉です。労働紛争を解決するために労働委員会の「斡旋」を求めたり、工務店を「斡旋」する会社に依頼して良心的なリフォーム業者を探したりします。

このように「斡旋」は人や団体が仲介するものであり、「媒体」が行う行為より狭い範囲で用いられるものです。

「媒体」と「媒介」との違いとは?

「媒介」とは”媒体”の働きのこと

「媒介(ばいかい)」は「媒体」と大変よく似ている言葉であるためか、混同して用いられている事例も見受けられるようです。

使い分けのポイントは、「媒体」が「媒介」の主体であり、「媒介」は「媒体」が行う働きという点にあります。つまり、「媒体」が関係を取り持ったり仲立ちしたりすることを「媒介」というのです。

「媒介」は不動産の法律用語としても使われる

不動産用語の「媒介」は、不動産業者が大家から直接依頼されて入居者を募集することを指します。不動産取引で一般的によく聞かれる言葉として「仲介」がありますが、「仲介」は媒介業者から依頼を受けて入居者を募集することです。

つまり「仲介」では入居者を募集している不動産会社と大家さんに、直接のつながりはありません。しかし、借り手にとってはどちらを選んでも大きな違いはないものです。

まとめ

「媒体」の意味のほか、「媒介」との違いや類語・例文なども紹介しました。伝える内容が大切であることは当然ですが、何を「媒体」にするかによって効果が左右されます。

また、データを保存する「媒体」の選択を誤ると、大切なデータが消失してしまうリスクもあるので、注意が必要です。