「疚しい」の意味と使い方とは?「疾しい」との違いや類語も紹介

「疚しい」には、「気が咎める・後ろめたい」という意味があります。表外漢字であるため、日常生活で見掛ける機会は少ないかもしれませんが、耳にすることは多いでしょう。この記事は「疚しい」の意味と使い方について、「疾しい」との違いや類語も交えながら紹介しており、語句の用法がよく理解できる内容となっています。

「疚しい」の意味とは?

「疚しい」の意味は”気が咎めること”

「疚しい(やましい)」の意味は、“良心がとがめることや後ろめたいこと”です。「疚」という文字には「気が咎める・良心に恥じる」という意味があり、訓読みの「やましい」がそのまま語句の意味となっています。

ほかにも「疚しい」には以下で紹介するような意味もありますが、現代ではここであげた「気が咎める」といういみで使われることが一般的です。

なお、「疚」は表外漢字(常用漢字ではない文字)であるため、通常は「やましい」と平仮名で書かれます。

「疚しい」には気分が悪いという意味も

「疚しい」には、気分が悪いことや長患いという意味もあります。「疚」という文字には、「病気になる」という意味もあるためです。

「疚」は、”疒(やまいだれ)”と”久”で構成されています。「疒」は人が寝台で寝ているさまからできたもので、「病・疫」など病気に関係する文字に使われています。

「久」は”永久・耐久”などの熟語からもわかるように、長い時間を指す文字です。なお、これらのほかにも「疚しい」には、不安や焦りを感じてもどかしいという意味もあります。

「疚しい」と「疾しい」との違いとは?

「疾しい」の意味は”疚しい”と同じ

「疾しい(やましい)」の意味は、”疚しい”と同じです。「疾」という漢字には、”疾患”や”疾病”という熟語にみられる「病(やまい)」と、「疾風・疾走」という熟語からうかがえる「速い」という二つの意味合いがあります。

これは「疾」という文字が「疒(やまいだれ)」と「矢」で構成されていることによるものです。

「疾しい」は体調に関する意味合いが強い

「疚しい」と「疾しい」はいずれも”やましい”を漢字で表記したものですが、用法にはやや違いがあります。

「疚しい」は”後ろめたい”という気持ちの痛みを表す意味合いが強いことに対し、「疾しい」は体調が悪いことや病気であるというニュアンスが強いためです。

「疾しい」の読みは表外読み

「疾」は常用漢字ですが、「やましい」という読みは表外読みに分類されるものです。そのため、一般的に「やましい」と平仮名で書かれています。

なお、「疾」の訓読みには「やましい」のほかにも「はやい・とし・やまい」などがありますが、いずれも表外読みです。したがって「やましい」は、漢字ではなく平仮名で書くことが望ましいといえます。

「やましい」の使い方と例文とは?

「やましい」は良心が咎めることを指して使う言葉

「疚しい」と「疾しい」には3つの意味がありますが、”良心が咎める”つまり「罪悪感がある」という意味合いで使うことが一般的です。

また、「疚しい」が表外漢字であることや「疾しい」が表外読みであることもあり、漢字ではなくひらがなで書いたほうがわかりやすい言葉といえます。

そのため例文では「やましい」と表記しましたが、もし漢字で書くのであれば「疚しい」のほうが一般的です。

「やましい」を使った例文

「やましい」を使った例文をご紹介しましょう。

  • こんなやましいことはしたくないが、背に腹は代えられない。
  • やましいところは何一つないにもかかわらず、私は皆から疑いの目で見られている。
  • 何かやましいことでもあるのかと勘繰りたくなるほど、彼は動転した様子だった。

「疚しい」の類語とは?

「良心の呵責」の意味は罪悪感に苦しむこと

「良心の呵責(かしゃく)」とは、罪悪感に苦しむことを指した言葉です。「呵責」は”責め苦しめること・厳しくとがめること”という意味の言葉ですが、「良心の呵責」という慣用句としてよく使われています。

「良心の呵責を覚える・良心の呵責に苛まれる・良心の呵責に堪えない」などが、多くみられる用法です。

「面目ない」は恥ずかしくて合わせる顔がないこと

「面目ない」は、”めんぼくない・めんもくない”と読みます。「面目」には

  • 顔つき・表情
  • 世間からの評判・世間体
  • ものの様子・ありさま

という意味があり、「面目」に否定を表す「ない」を続けて「世間に顔向けができない」、「恥ずかしくて合わせる顔がない」ことをいい表しています。

「自責の念」とは自分を責める気持ちのこと

「自責の念(じせきのねん)」とは、自分に責任があると思って過ちを咎めることを表した言葉です。

「自責」には、自分の失敗や過ちに責任を感じて責め苛むという意味があり、ここに”気持ち”や”思い”を表す「念」が続いてできた慣用句です。

「自責の念」には”自責の念を抱く”のほか、「~にとらわれる・~に堪えない」という言い回しがよくみられます。

まとめ

「疚しい」の意味と使い方のほか、「疾しい」との違いや類語を紹介しました。「疚しい」ことをせずに人生を全うすることは難しいようで、誰もが一度や二度は「疚しさ」に心を痛める経験をするようです。

「疚しさ」の原因が不可抗力や不運な巡り合わせによることもあります。反省は必要ですが、あまり自分を責め過ぎないほうがよいかもしれません。