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「伝播」の意味とは?「伝搬」や「伝染」との違いと類語も紹介

「伝播」は「伝わり広まること」を表した言葉ですが、正しい読み方ができるでしょうか。また語感がよく似ている「伝搬」や、意味が似ている「伝染」との使い分けも気になります。この記事は、「伝播」の意味と使い方のほか「伝搬」や「伝染」との違い、類語などを例文もふくめて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

「伝播」の意味とは?

「伝播」の意味は”伝わり広まること”

「伝播」の意味は、“ものごとが伝わり広まること”です。

熟語に用いられている「播」という文字には「(種を)まく」ということ以外に、広く行き渡らせることを表す「しく」という意味があります。

文化人類学においては、異なる文化が接触した際に文化要素が移行・受容されることを指しており、シルクロードによって仏教が日本に伝播したことがよく知られています。

「伝播」の読み方は”でんぱ”

「伝播」の読み方は“でんぱ”です。「でんぱん」と読むのは誤りです。

「伝播」とは波動が媒質の中に広がっていくこと

物理学においての「伝播」は、波動が媒質の中に広がっていくことを指しています。

具体的には、熱や音など(波動)が水や空気など(媒質)を伝わって全体に広がっていくことですが、熟語「伝播」の持っている”伝わり広まること”という意味合いがそのまま使われています。

「伝播性」とは伝わり広まっていく性質・傾向のこと

「伝播」に接尾辞「性」がついた「伝播性」は、伝播する性質・傾向のことを表す言葉です。接尾辞「-性」には、名詞の後についてその名詞が持つ性質や傾向を表す言葉に変える働きがあります。

したがって「伝播性が高い・強い」は、伝わり広まっている性質や傾向の度合いが大きいことを指しています。

「伝播」の使い方と例文とは?

「伝播」の多くみられる用法は”伝播する”

「伝播」は、「する」を付けて動詞として活用した「伝播する」という形で用いられることが多い言葉です。

日常会話で使われることは少なく、一般的にビジネスシーンでの会話や文書で用いられています。ほかにも受動形の「伝播される」や、使役系の「伝播させる」という用法もよくみられるものです。

「伝播」を使った例文

「伝播」を使った例文をご紹介しましょう。

  • デマの伝播によって、各地で暴動が発生する事態になってしまった。
  • 自社製品のファンの声を伝播させることができれば、売上がアップするはずだ。
  • 仏教の伝播に伴って、様々な工芸品や美術品が日本にもたらされた。

「伝播」と「伝搬」との違いとは?

「伝搬」とは運び伝えること

「伝播」とよく似ていて、同じような意味合いで使われている言葉に「伝搬(でんぱん)」があります。

熟語に使われている「搬」は、”手・渡し舟・木の杖”の象形から成り立っている文字で、「運んで動かす・移動させる」という意味を表すものです。

したがって「伝搬」には、運んで動かすことで広まっていくというニュアンスがあるのです。

「伝搬」は”伝播”の誤用が広まったもの

「伝搬」は、「伝播」の誤った読み方である「でんぱん」に「伝搬」の文字をあてた誤用であるともいわれています。

なお、電波法では「電波伝搬路」や「電波の伝搬障害」と記述されており、電波の伝播については「伝搬」を用いることが一般的です。

「伝播」と「伝染」との違いとは?

「伝染」とは病原菌による病気がうつること

「伝染(でんせん)」とは、病原体が他の生物体に入って増殖して病気になることや、病原菌による病気がうつることを指した言葉です。

「伝染」に似た言葉の「感染」は、病原体が身体の中に入ることを表しており、伝染病は感染症のなかで一定期間発生が続く疾病のことを表しています。

なお伝染病という用語は、家畜など獣医事領域以外で使用されることが少なくなっています。

「伝染」とは他にうつる・うつすこと

「伝染(でんせん)」とは、他にうつることやうつすことを表した言葉です。「染」には、布などに色をしみこませることのほかに”感化される”という意味もあり、影響を受けて性質などが変わることを指して使われています。

「伝染」は、病気などの良くないものに限定されるものではなく、あくびのようなの気分や動作にも用いることができるものです。

「伝播」は伝わるというニュアンスが強い言葉

「伝播」は、ものごとが伝わり広まることを表しています。一方、「伝染」は影響を受けて変化する(うつる)ことを表したものです。

「伝播」は”伝わる”という点にウエイトが置かれ、「伝染」は”うつる”ということにウエイトが置かれています。

たとえば感染経路に注目している場合には「はしかが伝播する」、感染することに注目している場合には「はしかが伝染する」というように使います。

「伝播」の類語とは?

類語①「拡散」とは散らばり広がること

「拡散(かくさん)」の意味は、散らばり広がることです。均等でない濃度分布で、均一な濃度分布になるように溶質が移動することや、SNSで投稿されたメッセージが多くの人に引用されることも指して用いられます。

例文
  • 噴火による火山灰が拡散しており、農作物への被害が心配される

類語②「蔓延」とは広まり充満すること

「蔓延(まんえん)」の意味は、盛んに広まって充満することで、病気や悪習などのようなネガティブな物事に対して使われます。

「蔓」はつる草のことで、つる草が伸びていくようにあっという間に広がっていく様子を表しているものです。なお「蔓」は常用漢字ではないため、新聞やニュースでは「まん延」と記載されます。

例文
  • 暗い世相を反映してか、なんとなく厭世的な気分が蔓延しているようだ。

まとめ

「伝播」の意味と使い方について、「伝搬」や「伝染」との違いや類語も交えながら紹介しました。

意味が似ている熟語は、シンプルな大和言葉に置き換えると理解しやすくなります。「伝播」は伝わること、「伝搬」は運ぶこと、「伝染」はうつることと覚えておくと、使い分けがスムーズにできるでしょう。