「得心」の意味と使い方とは?「納得」との違いや類語も紹介

「得心」は、よくわかって腑に落ちることを表しています。「とくしん」と読み、ときおり耳にする「えしん」は誤りです。ところで似ている言葉に「納得」がありますが、意味や使い方に違いはあるのでしょうか?この記事では、「得心」の意味と使い方を詳しく解説し、「納得」との違いや類語についても紹介しています。

「得心」の意味と読み方とは?

「得心」の意味は”心から承知すること”

「得心(とくしん)」の意味は、“よくわかって承知すること”です。「得」という文字には、”手に入れる”のほかに”理解する”という意味があり、よくわかって腑に落ちることを表しています。

またその道に関すること全てを理解していることから、極意をつかむという意味でも用いられます。

「得心」の読み方は”とくしん”、「えしん」と読むのは誤り

「得心」の読み方は“とくしん”です。「得」は訓読みで”える”と読み、得意不得意という意味の「得手不得手(えてふえて)」では、使われている漢字はすべて訓読みです。

そのためか、「得心」を”えしん”と読んでいるケースが時おりみられますが、これは誤りです。

多くの熟語が「音読み+音読み」であることを覚えておけば、「得心」を”えしん”と読み誤ることは少なくなるでしょう。

「得心」の使い方と例文とは?

「得心」は”する”を付ける用法も多い

「得心」は、「する」を付けて動詞として活用する用法もよくみられる使い方です。そしてこの「する」を「できる」に変えた事例や、それらの否定形「しない・できない」という用法も多くみられます。

例文
  • 担当者から得心するまでじっくりと説明を受けたので、安心して契約できた。
  • 学生たちは講義を最後まで聞いていたが、幾人かは得心できていない様子だった。
  • 最終目的を得心の上で立てた計画だったが、最後まで実行することは難しかった。

「得心がいく」は充分承知すること

「得心がいく」とは、充分承知して気持ちがおさまることを表した言い回しです。ここでの「いく(行く)」は得心した状態に到達するということで、否定形の「得心が行かない」は承知できないということを表します。

例文
  • スタッフから丁寧な説明を受けたことで、祖父は得心が行ったようだった。
  • どうしても得心が行かないので、今回のお誘いは見送ることにした。

「得心」と「納得」との違いとは?

「納得」の意味は理解して受け入れること

「納得(なっとく)」とは、他人の意見や行動などを理解して受け入れることを指したもので、もともとは仏教用語でした。

僧侶になるために行う出家の儀式のことを「得度(とくど)」といい、「納得」はこの「得度」を納めることを表しています。ここから一般に広まって、よく理解して受け入れることを「納得」というようになりました。

「納得」は「得心」より一般的な言葉

意味と使い方がほぼ同じである「得心」と「納得」ですが、「納得」の方が一般的に使われているという違いがあります。

「得心」は「納得」に比べると、日常生活であまり見聞きすることはありません。通常は書き言葉として、あるいはより改まった場面で使うことが多みられます。

また「納得」よりも深く心の中で理解したときに、「得心」を用いるという点も違っています。

「納得」の使い方と例文

「納得」の意味は、先に紹介した「得心」とほぼ同じです。用法も「納得する・納得がいく・納得できる」というように使うことが多く、同義語として「得心」の言い換えに使うことが可能です。

例文
  • 日頃のふるまいを見ていると、とても彼の言うことに納得することはできない。
  • 心からの謝罪を受けたことで、彼らも納得がいったようだった。

「得心」の類語・類義語とは?

類語①「理解」とは物事の意味や内容がわかること

「理解(りかい)」とは、物事の意味や内容がわかることを表した言葉です。「理解が早い」という用法では、心情面より理性的・合理的な面が重視されています。

一方、他人の気持ち・立場などを察することも指す用法もあり、「理解がある」という言い回しがよくみられるものです。

例文
  • 彼の理解力をもってしても、この難解すぎる論文には歯が立たなかったようだ。

類語②「了解」とは理解して受け入れること

「了解(りょうかい)」とは、物事の内容や事情などを理解して受け入れることです。「意味が分かる・事情をのみこんでいる」という意味で使われていますが、「理解」より認めるという意味合いが強い場合に用いられています。

またビジネスの場では、「わかりました」という意味で「了解しました」というように用います。

例文
  • 我が社には、役職に関係なく「さん付け」で呼ぶという暗黙の了解がある。

類語③「同意」とは他人の意見に賛成すること

「同意(どうい)」とは、他人の意見などに賛成することという意味があります。「同意」は先にほかの人の意見などがあることを前提としており、それに賛成するという意味合いで使われるものです。

また「同意」には”同じ意味”という意味もあり、意味が同じ単語のことを「同意語」と呼びます。

例文
  • 全員の同意を得られないのであれば、この話はなかったことにしよう。

まとめ

「得心」の意味と使い方について、「納得」との違いや類語も交えて紹介しました。

「得心」と「納得」はほぼ同じ意味合いを持っていますが、「得心」は硬い表現であるため、一般的には「納得」が用いられています。しかし、心の奥深くから理解し腑に落ちたことを強調したいときには、「得心」が適切といえる言葉です。