「不可抗力」の意味は、人の力で抗いきれない力や事態のことです。日常生活でもよく見聞きされる言葉ですが、法律用語としても使われています。この記事では、「不可抗力」の意味を一般的用法と法律用語としての用法の両面から紹介しています。使い方や例文のほか類語もあげているので、語句への理解が深まる内容です。
「不可抗力」とは?
「不可抗力」の意味は”人間が抗えない力や事態のこと”
「不可抗力(ふかこうりょく)」の意味は、“人間の力で抗うことができない力や事態のこと”です。
自然災害や偶発的な事故などのような、予想したり制御したりできないものを指して用いられることが一般的で、人間の無力さに直面せざるを得ない場面でよく見聞きされます。
「不可抗力」の成り立ちは”不可抗”+”力”
「不可抗力」という四字熟語の成り立ちは、”不可抗”+”力”です。「不可抗」とは防ぐことや抗うことができないことや様子を指した言葉で、”ふせぐ・あらがう・こばむ”ことを表す「抗」に、”実行できない”という意味を加える接頭辞の「不可」がついて構成されています。
「不可」は行為の実行者ではなく行為の対象・結果、つまり目的語サイドからの視点で用いる言葉であるため、「不可抗力」は人間側でコントロールできない力や事態のことを指して用いられるものです。
「不可抗力」を使った例文
「不可抗力」を使った例文をご紹介しましょう。
- 停電でプリンターが使えなくなったことは、不可抗力のトラブルというしかない。
- 天災による被災は不可抗力によるものだが、被害を最小限とどめることはできるはずだ。
- 不可抗力を逃げ口上に使っていては、いつまでたっても事態は改善しない。
「不可抗力」の法律での使い方とは?
法律では通常の対策で損害を防止できないこと
法律における「不可抗力」とは、必要とされる手立てを講じても損害を防止できないことやそのもののことを指します。
契約書でよくみられる「天災その他不可抗力」とは、人間の力では防ぐことのできない災害や、可能な限りの防止措置を講じても抗いきれない事故など、債権者・債務者のいずれの責任にも帰すことができないもののことです。
法律では「不可抗力」で免責されることも
通常債権者は、債務者の債務不履行に対して契約の解除や損害賠償請求などを行うことができます。
しかし契約書に「不可抗力免責条項」がある場合には、不可抗力に該当するとされる事由と債務不履行との間に因果関係が認められた場合、債務不履行責任を免責されることもあります。
契約書に不可抗力免責条項がない場合、個々の取引について過失の有無や不可抗力に該当するかなどを具体的に解釈することとなり、解決に時間が掛かるケースがみられます。
法律で「不可抗力」を使った例文
法律で「不可抗力」を使った例文をご紹介しましょう。
- 過失責任主義を採用している民法では不可抗力による場合、過失責任が否定されている。
- 不可抗力の立証は難しいため、債務不履行責任の免責が認められないケースも多いようだ。
「不可抗力」の類語とは?
類語①「不可避」の意味はどうしても逃れられないこと
「不可避(ふかひ)」とは、どうしても逃れることができないことや様子のことを指した言葉です。
「のがれる・さける」ということを表す「避」に、”実行できない”という意味を加える接頭辞の「不可」がついて構成されています。
「不可避」は”不可抗力”と似た意味合いを持つため言い換えに使うことができますが、法律用語として使うことはできません。
類語②「必然」とはほかになりようがないこと
「必然(ひつぜん)」とは、”しかり・そのとおり”という意味の「然」に、”間違いなく・かならず”ということを示す「必」がついて構成されたものです。
そのようになる他はないこと、必ずそうなることや様子を表した言葉で、「必然の道理・論理的必然」というように使います。
類語③「必至」とは必ずそれがやってくるということ
「必至(ひっし)」とは必ずそこに行き着く、つまり必ずそれがやってくること、そうなることが避けられないことや様子を指した言葉です。
「必至」を音読する場合、「必」にアクセントがあって「至」のピッチが下がります。同音異義語である「必死」とは逆になっていますが、口頭で用いる場合には混同されないように注意が必要でしょう。
類語④「必定」とはそうなることに決まっていること
「必定(ひつじょう)」とは、必ずそうなると決まっていることやその様子のことです。「このままだと失敗は必定だ」というように使います。
なお「必定」は仏教用語としても使われ、必ず成仏すると定まることを表したものです。また、「きっと」という意味の副詞としても使われます。
まとめ
「不可抗力」の意味を、法律での使い方や類語・例文もふくめて紹介しました。本来「不可抗力」は、人知を超えた力や事態を指しているものです。そのことを理解せずに安易に使いすぎると、責任転嫁や言い訳のように受け取られかねないので、注意が必要でしょう。
債務や債権が発生する場合には、「不可抗力免責条項」を明記しておくことでリスクの軽減が期待できます。