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「むべなるかな」の意味と使い方とは?語源や漢字表記・類語も解説

「むべなるかな」とは、「本当にその通りだなあ」という気持ちを表した言葉です。天智天皇が食べたといわれる果物とつながりがあるほど歴史があり、現代でも使われています。この記事では「むべなるかな」の意味と使い方・例文のほか語源や類語も紹介します。

「むべなるかな」の意味と語源とは

「むべなるかな」の意味は「もっともなことだなあ」

「むべなるかな」とは、「いかにもその通りだなあ」「もっともなことだなあ」という意味の言葉です。

本来「むべなるかな」は「うべなるかな」と表記されていましたが、発音が「う」から「む」に変化するとともに表記も「むべなるかな」に移行していきました。

「むべなるかな」は漢字で「宜べなるかな」

「むべなるかな」を漢字で書くと「宜べなるかな」です。納得したり、なるほどと感じるときのようすを表す「宜(うべ)」という古語がもとになっています。

なお、「うべなるかな」という読み・表記とも誤りではなく現在でも使うことができますが、「むべ・うべ」が「宜」の表外読みにあたるため、公文書や新聞などではひらがなで表記されています。

「むべなるかな」は漢文では「宜乎」と表す

漢文の「宜乎」は「むべなるかな」と読み下します。「乎」とは、詠嘆や感情の移入を表すときに用いられる漢字です。

なお、再読文字として用いられる場合の「宜」は、一文字で「~するのが良いでしょう」という意味の「よろしく~べし(すべし)」と読み下します。

「むべなるかな」の語源に関する言葉と果物

「むべなるかな」は、天智天皇の言葉が語源・由来となったものです。天智天皇が近江国蒲生野(おうみこくがもうの・現在の滋賀県東近江市)で猟をされた際、子だくさんで達者な老夫婦に出会いました。

天智天皇が彼らに長寿の秘訣を尋ねたところ、「地元で採れる無病長寿の霊果を毎年食べています」と答えたのです。その果実を一口食べた天智天皇が、「むべなるかな(もっともなことだなあ)」と語ったため、この果実は郁子(むべ)と呼ばれるようになりました。

「むべなるかな」の使い方と例文

「むべなるかな」は現代でも使われる表現

「むべなるかな」は、先に紹介した語源・由来からもわかるように万葉時代から存在する古い言葉です。しかし、現代でも通常の手紙やメールなどの文章だけでなく会話の中でも使われています。

なお、「むべなるかな」は感嘆の意味を持っているため、ビジネス文書など公的な書面ではあまり使われていません。

「むべなる」とは「本当にそうだ」という意味

「むべなる」は、「むべ」に断定の助動詞「なり」がついた「むべなり」の連体形で、「本当にそうだ」「もっともだ」ということを表しています。

なお連体形である「むべなる」は、言い切りの形で使うことができないものです。「むべなるかな」の場合は、「むべなる」のあとに感動や詠嘆を表す終助詞「かな」が続いて構成されています。

「むべなし」とは「案の定」という意味

「むべなし」は「むべ」の反対語ではなく、「案の定」「やはり」という意味の言葉です。

「むべなし」は形容詞ですが、連用形の「うべなく」という形で副詞的に使われることが多く、予想していたとおりであることを表します。

なお一字違いの「にべなし・にべなく」は、「そっけない」「愛想がない」という意味の言葉です。

「むべなるかな」を使った例文

  • 社会情勢が不安定になってくれば、犯罪が増えるのもむべなるかなといえる。
  • 毎日欠かさずトレーニングを続けている彼が若々しいのは、まさしくむべなるかなだ。
  • これほどの仕事をひとりで負担していれば、愚痴を言いたくなるのもむべなるかなだろう。

「むべなるかな」の類語・類義語

類語「さもありなん」とは「もっともであること」

「もっともである」という意味の「さもありなん」は、源氏物語にも見られるように古くから用いられている言葉です。漢字で書くと「然もありなん」で、「然も」には「そのように」という意味があります。

ここに「あるだろう」という意味の「ありなん」が続いて構成された言葉が、「さもありなん」で、「むべなるかな」の言い換えに使うことができる類語です。

「合点がいく」も「むべなるかな」の類語の一つ

「合点(がてん)がいく」は、物事の事情がよく分かり納得できることを表した言葉です。

感動や詠嘆の意味は含まれていないことと、「合点がいかない」というように打消しをともなう用法があることの2点が、「むべなるかな」とは異なっています。

「腑に落ちる」は「納得がいく」ことを表す類語

「腑(ふ)に落ちる」は、納得がいくという意味の言葉です。「腑」は「内臓」「考え・心」のことを表し、胸のあたりでつかえていたものがストンと落ちる様子を指しています。

「腑に落ちない」という否定形が本来の形であるとされることや、「腑」という文字が常用漢字でないことから、公式文書では他の言葉に言い換えた方がよいでしょう。

まとめ

「むべなるかな」の意味と使い方のほか、語源と類語・例文も紹介しました。「むべなるかな」は古くから用いられているにもかかわらず、現代の会話文でも違和感なく使われている不思議な言葉です。

天智天皇が「郁子(むべ)」を食べた蒲生野は、額田王と大海人皇子の贈答歌がうたわれた場所でもあります。万葉人たちに思いを馳せながら、「むべなるかな」を使ってみるのも一興でしょう。